やはり最後は幼女で締めるスタイル。

「今度は左中間だ!!まんまん中!まんまん中!綺麗に破っていきました!!また新井は長打になります!!1塁を蹴って2塁へ!………おおっ!なんと、2塁も回った、回った!」



センターの百瀬が右中間方向にいましたし、フェンス際でその百瀬と友っちが一瞬足元のボールを見合いましたから、これはっ!




そう思ったわけです。




「ボールは中継の榊原から3塁へ!!またいいボールが返ってきましたーっ!!新井は渾身のヘッドスライディング!!………アウトになりましたぁー!!今度は、3塁を狙ったところでタッチアウトです!」




ぐえーっ!!



としか言いようがない。ヘッドスライディングした瞬間はまだボールが来ていなかったんですわ。



それなのに、手を伸ばして飛んでいる間に、ここしかないというところに送球がきたみたいでございまして、サードの青竹ちゃんのブルーグラブにベース際で行く手を遮られた感じ。



3塁審判おじさんの無情なアウトコールの後に、おケツにそっとボールが乗っけられてしまった。




そして思い出す。広報の島娘、かすみちゃんに5回の攻撃が終わったら放送席との中継があるんで、ベンチ裏まで来て下さいと。



そう言われていたのを思い出し、全国ネットや!と、急いでダッシュして顔を洗って、ドーラン塗って、カメラの前に立った。




「それではここでプレイヤーズゲストです。オール東日本のベンチ裏から、北関東ビクトリーズの新井時人選手と中継が繋がっています!新井選手、お疲れ様です!」



渡されたワイヤレスのイヤホンに、乃木アナウンサーの声が聞こえてきた。



「ぜえぜぇ!!……どーも!お疲れ様でございます!」



「ここまで、第1打席のホームラン、そして2打席目、先ほどの3打席目も見事なバッティングでしたね!」



「ありがとうございます!今日のために全て準備してきたようなものですからね。いい結果になってくれてよかったです!」



「どーも、新井くん。大原です。もうMVPはいただきじゃないですか?」



「どうも、大原さん、お疲れ様です。MVPは確定だと思いますよ。もらった車を誰に譲ろうかとそんな心配をしてますよ」



「お疲れ様です。稲木ですが………」



「おお、稲木さん。お疲れ様でございます」



「オール西日本のピッチャーの印象はどうですか?」



「交流戦の時にも感じましたけど、どんどんいいボールから投げ込んでくるイメージですよね。球の力もあって、コントロールも良くて、本当にいいピッチャーが多いですよ」



「そろそろお時間ということですので、最後に一言お願いします!」



「あと1本ホームラン打ちます!月に向かって!」





6回。テレビ中継でのインタビューを終え、大急ぎで準備をして守備に向かう。



グラウンドキーパーの方々が下がって来ていて、交代したピッチャーが投球練習を行っているその後ろを通りながらレフトのポジションへ。



センターの藤並君とキャッチボールを軽く行ったところでもう試合再開。



というところで………。




ふわっふわっ、ふわっふわっ。



グラウンドの中を漂っているのは真っ白なビニール袋。スタンドのどこからか、風を煽られて迷い込んだ様子で3塁ベース付近からセンター方向に向かって、空中をさ迷う。



審判おじさんがジャンプして手を伸ばしたが、それを見越したかのようにふんわり浮き上がり、それを交わすビニール袋。



めんどくさいですわねえ。



俺はレフトの守備位置からシュバババと走っていき、そのビニール袋を捕まえた。そしてそのままおケツのポッケに丸めて押し込んだ。



スタンドからは素晴らしいと拍手が響き渡る中、試合は再開となった。





「打ちました!少し詰まったか、レフトの新井が少し前に出てきて、捕りました、1アウトです!」



フライを捕球し、平柳君にボールを返す。



それにしても、今日はお客さんでいっぱいだなあ。なんて思っていたら、審判が投球モーションに入ろうとしたピッチャーを止めた。




ふわり、ふわり。ふわり、ふわり。





今度はネコちゃんの風船がグラウンドの中に入ってきてしまったのだ。



オールスターだからと、チビッ子向けにスタジアムの外で配られているテカテカしたガス入りの風船。



それがさっきのビニール袋ではないが、ふわり、ふわり。



内野グラウンドからこちらに向かってゆっくり風に流されている。


まるで俺が捕まえなければいけない運命かのように。




めんどくさいですわね!




下手に浮き上がって照明やスクリーンに引っ掛かっては迷惑ですわ!


俺はまたしても走りだし、最後はマリオみたいにジャンプをして、そのネコちゃん風船を捕まえたのだった。



そしてまたしても響き渡る拍手。今度は笑い付き。ネコちゃんの風船はおケツポケットのボタンに紐を巻き付けるようにして固定し、試合は再開となった。







カキッ!!




「これはバットの先です。レフト線、切れていきますが、新井がずーっと追っていく!!

新井とネコちゃんの風船が打球を追っていく!!………フェンス際、スライディングキャッチ!!捕りました!ナイスプレー!!2アウトです。


そして……エキサイティングシートの女の子にネコちゃん風船をプレゼントします!!


おまけに笑顔で記念撮影です。これが新井です!最多得票、100万票の男です!スタンドからは、また新井に向かって拍手が響き渡ります!!」



我ながら素晴らしい流れ。打球なんてついでみたいなもんですよ、ついで。











どうやら、第8部に続くみたいですわ!

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実況!4割打者の新井さん!7 ぎん @gin5401

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