実況！４割打者の新井さん！７

取り返せばよい話ですわよね？

打球がふらふら系だったから、ギリギリ届くかな！？と思ってダイビングいた瞬間に、あ！これ、無理なやつだ！と気づいてしまった。

そういう感覚がキチッと出来ていないところが、久しぶりに守備に就いたカンの無さということなんでしょうね。

出来るだけ後ろに反らさないように配慮したつもりだっが、俺のお腹に当たったボールが思いの外遠くへ転がってしまった。

慌ててそれを拾いにいき、３塁へピッタシのノーバウンド送球をかましてやったが、ランナーを刺すことが出来ずに１、３塁という形になってしまった。

さらに…………。

カンッ！

「これもいい当たりだ！！レフトの左に飛びました！！新井が追っていって、追っていって…………抜かれましたー！！」

レフト線ギリギリのさらにフェンスギリギリ。ずーっと追いかけていって、これまた飛び込んでいったが、まだ微妙にギリギリのところで追い付けず。

フェンスに跳ね返ったボールが俺のおケツに当たる。

３塁ランナーに続いて１塁ランナーも生還してしまい、さらに藤並君にもタイムリーが飛び出して４点差になってしまった。

さらに７回。１アウトで２、３塁というピンチになり、マウンドには酒屋君が上がっていた。

１ボール２ストライクから変化球を上手く拾われ、またレフト前に。正面ワンバウンドで捕球出来たが、俺がボールを捕ってからのタイミングで２塁ランナーが３塁を回ったのが見えた。

「打球はレフトの前に落ちました！１人返って、２人目も回ってくる！！新井からのバックホームだ！！ワンバウンドで、これはいいボールが返ってきました！！アウトだ！これは好返球でした！ランナーを刺しました！！フライヤーズのリードは５点です！」

「これはちょっと無謀な走塁になりましたねえ。新井を舐めたわけではないでしょうが、ちょっと簡単に突っ込ませてしまいましたよねえ」

「今日は再三新井のところに打球が飛んでそれがヒットになっていましたが、そういったところの流れがあったのでしょうか」

「それはあるかも分かりませんねえ。レフト方向に飛んだ打球で全部点になっているわけですから、しかし、４点リードでやる走塁ではないですねえ。フライヤーズがこれが後々響かなければいいんですが………」

「フライヤーズのリードは５点と広がりました。マウンド上は変わらず酒屋です。変化球、打ちました。引っかけてショートの正面！並木が警戒なステップ。１塁へ送球して３アウトチェンジ。しかし、７回表フライヤーズが１点を追加しまして、リードを５点に広げています！！」

なんでこう、６年ぶりに守備に就いた時に限って難しい打球が飛んでくるんですかねえ。昨日まで、ロマーノが守っていた時は全然そんなことなかったのに。

ロマーノか朝日奈っちだったら、こんなに点入ってなかったのになぁ。という雰囲気が多少感じてしまうので、辛いところではある。

「いやいや、本当に簡単な打球じゃなかったのばかりですから、仕方ないっすよ」

「そーそー。まだまだ巻き返せますから」

「新井さんがそんな風に気にすることないっすよ！俺の配球も良くなかったんですから！」

柴ちゃんと桃ちゃん。そして緑川君はそう言ってくれたが、彼らトリオによる、３者連続三振でラッキーセブンの攻撃はあっという間に終わってしまったのだった。

「ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、酒屋に代わりまして、山田。ピッチャーは、山田ブライアン！」

久しぶりにれっきとしたビハインドだから、ファームから上がってきたばかりで登板機会の少なかった酒屋君とブライアンに出番が回ってきていた。

酒屋君はちょっと不運な当たりと、ダブルプレーを取ってもらえなかったことで失点はしてしまったが、ブライアン君はストライクをどんどん投げ込む気持ちのいいテンポを披露。

外野に２本。いい当たりをされてしまったが、柴桃コンビの好守備に助けられて事なきを得た。

ビクトリーズは５点を追う、８回裏の攻撃である。

「ボール！！」

先頭の並木君がフォアボールで出塁した。

「さあ、２番の新井です。今日は、三振とセカンドゴロ、センターフライでヒットありません。しかし、交流戦でものすごい数字を残したこともあり、打率は４割７分１厘という今の打率です」

「今日はちょっとフライヤーズ先発の紫塚にタイミングが合っていませんでしたが、ここは１本繋いでいきたいですねえ」

並木君に対してはストレートが高めに浮いてしまってのフォアボールという結果。そのストレートがインローいっぱいにきて、１ストライク。外に１球外れた後に、スライダーが低めいっぱいに入ってしまい、追い込まれた。

次もスライダー。その前よりさらに低い。ボールのコースにバット出してしまった。

引っ掛けて跳ねた打球がインフィールドに飛んでしまった。

「打ちました！高く弾んだ内野ゴロ！サードの………あーっと！弾いた！！拾い直して、１塁へ！………セーフになりました！！あー………これは………エラーです。サード安斉のエラーになりました！」

ラッキー！

打った瞬間は、ヤバい！！ゲッツーだけは阻止しないと！

という頭で一生懸命走るだけでしたが、サードがポロった。そのポロリ具合を見て、マジか！？なんてリアクション。

わりかしドヤ顔で１塁に立つと、コーチャーおじさんからおケツに蹴りをもらった。