ノッチには家族にもメシをご馳走してもらいくらいはしてもらわないと。

「ちょっと今のままじゃあかんなって思ったら、しばらく練習を休んでチームから離れることを視野に入れてもいいと思いますよ。もちろん勝手に居なくなっちゃたらダメだけど。監督とか部長さんとか、キャプテンやチームメイト達に説明と報告をしてからにしないと。


もちろんただ練習を休むんじゃなくて、ちゃんとテーマを持ってね。普段やらない勉強をやるとか、家の手伝いをするとかね。ともかく、自分が野球を上手くなる。チームに貢献するために出来ることを考えて行動するのが大切です。そういう癖や考えの持ち方は社会に出てからも役立ちますからね。そんなところです。


この足利市の子。もし、進捗があったり、どうも改善が見受けられないなんてことがあったら、またメッセージを下さい。新井さんのアドバイスで甲子園に出場することが出来ました!というのを待っていますんで。


この子に限らずにね。もしこの配信を見ている学生さんとかがいらっしゃったら、夏の大会は思い切り楽しんで青春を全うして下さい。では、次のメッセージに参りましょう。


この方も栃木県栃木市の主婦の方。来年3年生になる長男が………」





などという生配信をやっていまして。翌朝になってびっくり。朝起きたら、タブレットを持ったみのりんが目を見開いていて………。





「時くん、時くん!ヤホーニュースの1位に時くんの生配信の大記録だって!!」



「なに、どういうこと?」



「アスリートのユアチューブ生配信で、最高同時視聴2万人越えは、日本で初めての快挙だって!時くん、すごいよ!!」



「えー、なにー!?」



「パパ、ユアチューバーになるのー?」



ユアチューブとは聞いて子供達がソファーによじ登るようにして、一緒になってタブレットを覗き込む。



そんなことになってたなんて、全然知りませんでしたわ!生配信の後は、ノッチのチャンネルであねりん達とのチームタコヤキのゲームタイムが控えていましたから。



そっちの方の宣伝もしましたら、登録者数が増えたとノッチが大喜びでしたわ!



しかし、とにかくメシですわ!





ところでビクトリーズさんの方は、現在貯金を3つ作っての3位。首位は爆発的な攻撃力で開幕ダッシュに成功した埼玉さんを東北さんが僅差で追いかける形。



ビクトリーズか2、5ゲーム差でその下にいて、北海道と東京さんの競り合いに、交流戦で巻き返した横浜さんもなんとか最下位を脱出しようと目論む。そんな展開。



1ヶ月前と比べると、だいぶ上と下がぎゅっと詰まってきてようやくペナントレースとして面白くなってきたという印象だ。



やっぱり最後までどこが優勝するかわからない展開のが面白いですしね。




ビクトリーズとしては、計算出来る先発が揃ってきて、野手陣のバッティングも過去にないくらいの充実ぶり。



後は最低でもこの貯金を3つ4つ持って、いつでも上位進出が狙える位置で後半戦まで持っていきたいところである。





そんなタイミングで………。




クラブハウスに入ると、珍しく阿久津監督に出くわしまして、こんなことを言われた。




「そろそろレフトやファーストを守ってもらえるかい。DHも飽きただろ?」



もちろん、嫌です!と言えるはずもなく、分かりましたー。グラブ磨いときまーす!と答えて終わったわけだが。



チーム状態もいいし、俺のDH起用はまだまだ続くだろうと考えていたのはどうやら見込み違いだったみたい。




どうやら助っ人のマテルと赤ちゃんを両方同時にスタメン起用するのを目論んでいるようなのだ。



つまりは、どちらかをDHにして俺をレフトに入れるということ。




普段からちょびちょびノックは受けていたけれど、守備でのやらかしはまずいですから、血眼になってノックを懇願した昼になったのは言うまでもない。







「いい当たりだ!!レフトに飛んでいる!!新井が追いかけてジャンプしますが、捕れません!!北海道フライヤーズ、1番の木田がツーベースヒットを放っていきましたっ!!」





いきなりですよ。初回先頭打者の打球が牙を剥きながら俺のところへとやってくる。



ビクトリーズの外野陣は、俊足の柴崎と強肩の桃白と安定感のあるロマーノで、固い守りだと定評のある中で今日は俺がレフトでスタメン。



そのいわゆる守りを代えたところに、なんとも捕れそうで捕れない打球というのが襲いかかってくる。



悪い守備をしたわけではない。しっかり打球に反応し、落下点へ一直線に向かい、ドンピシャでグラブは出した。



ただ足の速さ的にちょっと無理だっただけの話だ。



後ろに抜けていき、ワンバウンドでフェンスに当たった打球を拾い上げて並木君に投げる。



サングラスのズレを直しながら、腰に手を当て、ピッチャーの千林君に対しては、ちょっと申し訳ないなという顔はしておいた。








試合は進み、中盤戦へ。




1ー2とリードを許した状態でビクトリーズは5回の守り。ノーアウトランナー1塁という状況になっていた。



「新井さん、長打警戒っすよ!深め、深め!!」



「オッケー!!」



柴ちゃんからの指示を受けて、フェンスまでの距離感を確かめながら下がる。



そうやった時に限って………。




ガキッ!!



「詰まった打球になった!!レフトの前だ!新井が突っ込むー!!飛び込んだ!!落ちた!落ちました!!これを見て1塁ランナーは3塁に向かう!」










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