愛されていますわ!

福岡での試合セカンドラウンド。



初回、1アウトランナーなし。



真ん中低めのストレート、150キロを打ち返す。



打球は地を這うような低いものになり1塁線へ。新井シフトでライン際を締めるファーストが構える。





ボゴッ!!




その数メートル手前で打球がファーストベースに当たった。



打球はファウルグラウンドに向かって大きく跳ね、慌ててファーストの選手が追いかけていく間に、俺は悠々と1塁ベースを駆け抜けた。




交流戦13打数13安打。





2打席目もランナーなし。



2球で追い込まれ、そこからなんとか決め球をカットして凌ぐような展開。



6球目の落ちるボールを仕留められずに内野に打球が転がってしまった。ピッチャーの上。



2塁ベースの後ろにいたショートが捌く。




ボゴッ!



その手前で今度は2塁ベースに当たった。



打球の方向が変わったボールを反応よくショートの選手が素手で掴む。そこからノーステップスロー。



俺は頭から1塁に滑り込んだ。




「セーフ!!」



またしてもHのランプが赤く灯った。




ざわめくハードバンクスドーム。



俺はそんな中、その場にしゃがみ込み、子犬をあやすように、よしよしよしと1塁ベースを撫で回す。


祭りちゃんのフォアボールで2塁に進むと、同じようにそのベースちゃんもナデナデベロベロ。


ハードバンクスのセカンドショートの選手の冷たい視線を感じながら、これでもかと愛でるのであった。




3打席目。



今日は9番に入った緑川君がライトにヒットを放ち、並木君もセンターへクリーンヒットを飛ばして、ノーアウト1、2塁というチャンスで回ってきた。



しっかりサインを確認して、俺は打席に入る。



そしてバントの構えをした。



ヒットしか打っていない人間がバントすんの?


セットポジションに入ったピッチャーがちょっと取り止めるようなそんな事態になる。



キャッチャーがもう1度内野陣にサインを出し直す。俺は変わらずバントの構え。



インコース低め。ちょっと沈み加減で来たから俺はバットを引いた。



「ストライーク!!」



なに!?厳しいですわ!




2球目。サインが変わった。バスターでもええで、少年。と、阿久津監督は若干の采配変更。



バントの構えから引いて打つ。




ピピーッ!!




「ファウルボールの行方には十分ご注意下さいませ」



ストレートに振り遅れる形となり、打球は1塁側のスタンドに飛び込むファウルボール。これで追い込まれてしまった。




もうバントはないだろうと、ファースト、サードはベースの後ろへ。定位置に戻る。なんとか低めの厳しいボールを引っかけさせて内野ゴロダブルプレーにしようというハードバンクスの守り。



そんなことはさせるかいと、俺はライト線へポロリとなる打球を目論む。



3球目は外のストレート。ストライクいっぱいだ。振らなきゃ、そう思った時にはもうチェンジアップだった。




バッテリーの目論み通り、思いっきし引っ掛けてしまった。芯の近くでは叩いたが、体は突っ込み、いっぱいに腕を伸ばしてやっと届いたバット。



ボールの上っ面を叩いた打球はサードの左へ。そのボールに対してグラブを伸ばす!



あかん!上手く捕られたらトリプルもある!



そう思いながらも……。









またやん。今度はサン・ルイコさんにご挨拶いかなあかんやん。





そうも思った。





バコンッ!!




「ああっ!?新井の打球がまたベースに当たりました!!サード、諸岡の頭上を超えてレフト線へ!!ヒットになります!2塁ランナーの緑川が3塁を蹴る!!」



もうこんなんビクトリーズサイドからすればお祭りよ。



打ち取られた打球が3本ヒットになり、しかもここは勝ち越しの1打となるんだから。



2ー1とリードを奪うことに成功し、さらにお祭りちゃんが左中間へしぶとく打ち返して4ー1。2アウト後。柴ちゃんにもタイムリーが飛び出して4点リードを奪うことに成功した。





しかし、先発の千林君が結構いっぱいいっぱいの投球になってしまい、満塁からライト前タイムリー。桃ちゃんのスーパーバックホームで1点返されるだけに済んだものの、さらには助っ人マンに3ランホームランをテラス席に打ち込まれ、再び同点なってしまった。







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