そら、もらっていきますわよ。
「いやー、若干差し込まれましたけどね。まあ、パワーだけはあるんで、強引に持っていきましたよ!」
「どこがやねん!!ギリギリだったでしょ!!」
棚橋君が真っ黒なバットをにぎにぎしながら秒で突っ込んできた。
コントロールビタビタのストレートに、魔球と言われるチェンジアップに平柳君と浦野君が連続三振するも、棚橋がストレートを強引に弾き返して出塁した。
そしてわたくしの2打席目。
ビシュッ!!
ズバアアァンッ!!
「ストライーク!!」
ストレート。
アウトコース低めいっぱいのストレート。これには手を出さない。
2球目の真っ直ぐだった。初球より若干高めのコース。2球連続の見逃しは芸がないなということで振ってみると、バックネットに打球が当たるファウルボールになった。
追い込まれた。
向こうチームが。
「3球目。………チェンジアップだ!!」
カシィ!
「流した!!ライト線へいい当たり! フェアです!打球が転がる!その先には3塁打ゾーンがある! 入っていきました! これが新井です!6年のブランクなど、この男には関係ないのか!タイムリースリーベースヒットになりました!!」
狙い通り。チェンジアップをしっかり引き付けて右方向へ運び、この野球盤の真骨頂とも言える場所に打球が弾んでいった。
初回2アウトとなったが、平柳君、浦野君もきっちり修正した連続タイムリーヒットでプロ野球オールスターチームがいきなり4点を先制した。
その後も、平柳君が技ありのヒットを連発したり、浦野君のフェンス直撃打が真っ黒なダブルプレーゾーンに当たってしまったり、棚橋君の豪快弾が飛び出したりと、終始オールスターチームが優位に試合を進めたのだった。
「今年のお正月、スーパー野球盤のMVPは、10打数9安打、5打点!!見事な初回先頭打者ホームランもありました、新井時人選手です!!」
イエス!!
またしてもお車ゲッツ!!
「「お疲れした〜!!カンパーイ!!」」
収録後、予約していた焼き肉屋さんに移動して4人で打ち上げ。キンキンに冷やされたグラスに黄金色のおビール。
それを乾いた喉に流し込むと、スーパー野球盤で感じた手応えがひしひしと甦ってくる感覚だ。
「今日は完璧でしたね、新井さん」
「確かに。やっぱり棚橋君が最後に打ったあの3ランが大きかったよね。あれで決まったから」
「いやいやいや、1番に入った新井さんがずっといい流れを作ったおかげですよ」
「プロ野球チームが勝つの5年ぶりだったらしいですよ。前にこのメンバーでやった時以来ですよね」
「確かにやったね!!俺はおねんねしてたけど、あの時のことはよく覚えてるよ」
「あの時も新井さんが車持っていったんですよね! 結婚式前に、いい思い出が出来ましたね!みのりんも大喜びですよ!」
平柳君がビールを飲み干しながらそう言って思い出した。
もうすぐ結婚式だ。
12月初旬。なかなかの晴天具合に恵まれまして、今日ようやくとしてみのりんとの結婚式を執り行うことが出来ました。
宇都宮ミレニアムブライダルという、栃木で1番大きな式場を今日は丸1日貸し切りまして。ちょっとしたマンションを購入出きるような金額ですよ。
大安の土曜日目掛けて、半年前から予約しまして、野球のトレーニングを行い、鶴石さんと一緒に2軍で汗を流す合間を縫って準備を進めてきました。
招待客に新幹線やら飛行機のチケットを手配して、宇都宮駅からシャトルバスを走らせて、近くのおしゃれなお店を何軒も予約して、希望者にはそこそこのホテルを取ってあげて、帰りの無料お帰りタクシーも呼び寄せて。
出来る限りのおもてなしとサービスでご満足頂けるように努力して参りました。
子供達ををみのりんのお母様にお預けして、朝早くからブライダルに移動して、最終確認とみのりんのウエディングドレスの準備。
もちろん、俺のタキシードも。
2人だけの記念撮影をして、お客様達にご来場頂いたところで、パパパパーン!パパパパーン!という塩梅である。
まるで総合体育館のような広さのメインホールに、人がぎっしり入っていて、テレビカメラも回っていて、ものすごい拍手の中をみのりんと仲人をお願いした萩やんが緊張した面持ちで歩いてくる。
ば、爆笑ですわ!
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