結構頑張りますわね!

「やったー!!」




「並木君、さすが!!」




「今のプレー、凄かったですね!新井さん!」




ビーチボールのように大きいポニテちゃんの胸元が揺れる。メデューサのようなみのりんの目が光る。



「ああ、1歩目が抜群によかったよね!よく集中していた証拠だよ! 並木君って最近はずっとショートのレギュラー?」



「はい!去年の今頃くらいから、赤月選手がサードに回って、並木選手がショートでスタメンに入ることが増えましたね!」





なるほど。赤ちゃんも33歳になりますから、年齢的にもずっとショートをやり続けるというのは難しいだろうしね。





肩の強さはまだまだ健在みたいだから、サードでも十分やれると思われる。







同点のまま試合は進み、6回裏。ビクトリーズの攻撃。バッターボックスには4番赤ちゃん。



5年前とはまたちょっと違ったバッティングフォーム。構えたバットの位置を少し落とし、体は少しオープン気味に開いている。




足の上げ方も、若干摺り足な感じにしており、確実性を求めたバッティングを意識しているのが伺えた。




そしてそのバッティングフォームで、真ん中高めのストレートを叩く。






カシィンッ!!




響きのいい音がして、打球は左中間へ。





センター、レフトが追っていく向こう側。左中間スタンドに楽勝で打球が入っていった。




高め、ストレート、逆方向、軽々。




赤ちゃんの今シーズン第12号のホームランが力投する連城君を強力に援護する。





平柳君の1発とは違うベクトルのホームランで見事なやり返し。




横で一緒になってチェアに座って観戦するかえでのテンションもぶち上がる。




「おとう!ホームラン!ホームラン打ったよ」



「ああ。打ったのは高めのストレート。しっかり右肩で壁を作りながら、左手で押し込んでいきましたね。この打ち方が出来れば、逆方向にも大きい打球が飛ばせますよ」



「なるほど!おとう、かいせつもできるね!」




「ああ、そうかもな」




赤ちゃんのホームランで、テラスから見下ろせる位置にいるビクトリーズファンの皆様方が、大いに喜んでいる。




ガッツポーズをする人、両腕を上げて絶叫する人。立ち上がって拍手する人。




映像やモニター越しとは比べ物にならない生の雰囲気と迫力。その熱い眼差し。





今はこの場所からですが、ビクトリーズスタジアムに帰ってきたなあという感じがするし、やはりその歓声が1番響く場所に返りたいなと、そう考えてしまいますよね。











カキィ!





「低め、打ち返した!いい当たりだ!!平柳の打球ー!………右中間を………抜けましたー!!」





ひらやなぎぃ………。





8回表、2アウトランナー1塁。カウント1ボールからの2球目を平柳君が強振。



打球がグイーンと右中間に伸びていく。あらかじめ深く守っていた柴ちゃんと露摩野君の間を破る打球がワンバウンドでフェンスに到達。



代走で入った1塁ランナーが快速を飛ばす。





打球を拾った柴ちゃんから中継に入ったセカンドの祭へ。1塁ランナーが3塁を回る。祭からバックホーム。ワンバウンドのボールを受けたノッチがタッチ。




ランナーがそれを掻い潜りながらヘッドスライディングで飛び込んできた。






「セーフ、セーフ!!」




球審おじさんの腕が広がり、ランナーはガッツポーズしながらベンチへ。3塁に到達した平柳君は、ナイスランとホームインした若手に拍手を送りながら、ベンチに向かって拳を突き上げた。





ホームベースの後ろでカバーに入っていた連城君は膝を手を着きながら悔しがる。





しかし、勝ち越しのランナーを3塁に置きながらも、連城君は続投。4番をセンターフライに打ち取って、なんとか同点で踏みとどまった。






「8回裏、ビクトリーズの攻撃は、5番ファースト、マテル」






バキッ!!




色黒な助っ人マンのバットの破片が豪快に散る。




しかし打球はほんわかライト方向に飛び、ジャンプしたセカンドの頭の上を越えた。







「マテルの打球が落ちます、ライト前ヒットになりました!先頭打者が出塁します、ビクトリーズ」




「チェンジアップでバットの先でしたが、飛んだコースが良かったですねえ」




「そして、折れたバットが片付けられる中、マテルには代走が送られます。石塚が出て来ました。打席には露摩野が入ります。昨日と似た形にはなって来ました」




「そうですねえ。点差はある場面でしたけど、昨日もマテルと露摩野で唯一の得点を挙げましたからねえ。スカイスターズとしては、バントと決めつけるのは危険な場面ではありますねえ」






8回裏、同点のノーアウトランナー1塁なんて、1番面白いやっつやん!というのをかえでに力説しながら、グラウンドに目を凝らす。





分かったのは代走の石塚という選手がギンギンだということ。






「スタートした!露摩野はバットを引いた!! キャッチャーから2塁へ!タッチは…………セーフ!セーフ!です!石塚!なんと単独スチールでした!」




「警戒されていましたが、いいスタート切りましたねえ。素晴らしい盗塁。ノーアウト2塁に出来たのは大きいですよ」





「ええ!勝ち越しのランナーが得点圏に進みました。バッターは露摩野。1ボールから2球目。………打ちました!詰まりましたが、ショートの後方落ちました!落ちたのを見てから石塚はスタートで、3塁ストップ!露摩野も今日初となるヒット繋ぎました」




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