1番の問題は、舌をオーバーフェンスさせるかどうか。
それだけではなく、みのりんの懐から出てきたのは、わたくしのスマホ。何故か既にパスコードが割れているそれを受け取り、チームメイト全員が入っているグループアカウントで………。
みんな………………ただいま!
とメッセージを打ったら、5分間くらいの間に、スマホがぶっ壊れるんじゃないかという勢いで返信が飛んできた。
もう1個1個を確認出来ないくらいのものすごいスピード。
途中から、ピコリン!と新しくメッセージが飛んでくる度に、変顔をして双子ちゃんを笑かすという遊びをしていたら、10回目くらいで顔の筋肉が釣っちゃってもう大変!
5年も寝ていると、もう体の至るところが衰えまくっているんだなと、そんなことで実感する羽目になった。それでも、これだけ体が動くのはあり得ないですよと、お医者様は青ざめる。
しかし、1番最初の返信が柴ちゃんだったところが…………やっぱり柴ちゃんだなあという気持ちになった。
そんなことをしながらも、とりあえずはふうっと落ち着く。
俺のせいで、宇宙の話題などどこかに吹き飛んでしまったワイドショーの様子を引き続き眺めながら、ちょっと真剣にこれからのことについて話し合わなければと思った。
夕方前になり、帰りたくない!パパと一緒にいたい!とぐずるわけではなかった双子ちゃんはうちの両親に任せることに。
目覚めた瞬間から察知していたが、俺が泊まっている病室はそんじょそこらの個室とは違うみたいで。
ベッドやら機材やらから、備え付けの家具もあり、もちろんプライベートな浴室やトイレ、大きなテレビでは衛星放送も視聴出来る、この病院で1番特別なお部屋らしい。
ですから、お願いしたらベッドをもう1つ用意してくれて、みのりんもこの部屋で1泊出来ることになった。
そして、看護士さんが
「奥様、お食事は………」
と、言いかけたところで……。
「ラーメン食べてくるんで大丈夫です!」
食い気味に返していたので、この人も変わってないなあと、俺は点滴を打たれながら思っていた。
さては、双子ちゃんを俺の親に預けて1人でゆっくりラーメンを楽しむところまで計算していたな?と、勘ぐってしまう。
そのみのりんが塩チャーシュー麺を食べて帰って来たので、意味ありげにちょっと部屋を暗くして作戦会議タイムに移る。
「みのりん、俺が事故に会った時って大丈夫だった?すごく動揺したと思ったけど」
「それはもちろん。大阪に行ってくるって飛び出そうとしたら、お母さんに止められた。もう半分発狂してたね。しばらくは頭がおかしくなりそうだったよ」
「そうだよね。ごめん」
「とりあえず1回、私を抱き締めて頭を撫でなさい」
「ちゅーはいります?」
「当たり前じゃろがい!」
何せ5年ぶりなもんですから、歯がカチコチ当たりまして。思ったよりもみのりん前進守備を敷いてくるじゃないかと、そんな印象であった。
「事故から1ヶ月経つ頃には、時くんがこの病院に落ち着いて、私も9ヶ月目だったから、段々それどころじゃなくなってさ。ここの産婦人科病棟に入って、もう毎日必死でしたよ。双子だったから余計にね」
「タイミング悪かったよね。まさか、籍を入れた翌日とはって感じだっただろうし」
「でも逆に子供達が居てくれて助かったかな。この先目を覚ますのかどうなのか分からない時くんの側にいないとだったけど。
それ以上に、時くんとの子供をしっかりと育てていかなきゃって気持ちが大きかったから。だから、この5年間はそんなに辛くなかったかな。
もちろん、もしあなたが今まで通りだったら、もっと楽しいだろうなとは考えたけど」
本当にこの眼鏡さんはなんて出来ている人ですの。控えめで慎ましやかかと思えば、なかなかにメンタルが強くて、常に前向きな女性。
彼女のこういう姿勢に俺は何度救われてきたことか。
「何か5年で変わったことあった?」
「そうだね〜。かえでともみじが生まれて、次の年にナナコちゃんが生まれて………時くんのおばあちゃんは変わらず元気だし。………うちのおじいちゃんは亡くなったけど………また時くんは会ったことなかったね。……後はキャラメルちゃんがすごく大きくなったかな」
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