第43話 時間が0になる
俺は試練に挑み、第30ノ試練までクリアすること出来た。
試練の内容は変わらず、塔の試練に参加していない者達を強制参加させての殺し合いだ。
第27ノ試練の時のようなボーナスステージ・・・と言っていいのかわからないが、そういった内容は起こらず、第26ノ試練で起こったバトルロワイヤル形式の試練ばかりだった。
ついでに言えば参加人数も一つ試練が上がるたびに増えていき、おかげで残りの1日で何人も殺す羽目になった・・・・・・・・マジで最悪な気分だ。
「あと・・・少しか・・・」
ステータス画面に表示される時間がゼロに近づくのを見ながら呟く。
この数字がゼロになったとき、彩菜を包んでいる淡い光が無くなると俺は考えているが、何が起こるのかはわからない。
もしかしたら何事も無く彩菜がこの腕の中に戻ってくる・・・なんてこともあるかもしれないが、それはただの希望でしかないだろう。
「変なことが起こらないといいが・・」
そんな事を思いながら、数字がゼロになる前にポイントの割り振りを終えられているか、再度確認する。
第28~第30ノ試練をクリアしたおかげで、合計6ポイント得ることができた。
その得たポイントを使い、服(上)・寝袋(上)・家(上)を習得した。
服(上) 中古の夏服&冬服6着
寝袋(上) 新品の寝袋&中古の布団
家(上) 木箱型の小さなコンテナハウス
できる事なら他の水や食料、トイレも習得したかったが、彩菜には悪いが、そこは我慢して貰おう。
取り急ぎ整えなければいけないのは、寒さや暑さへの対策なのだから。
「やれることはやった・・・・後はどうなるかだ・・・」
第30ノ試練をクリアして、何とか彩菜が生きられる環境を整えた。
だから大丈夫だと己に言い聞かせながら、俺はピッ、ピッ、と減っていく数字を眺めた。
そして年末のカウントダウンを眺めるように、静かに眺めていると、表示された秒数がゼロになった。
『汝ラニ与エシ時間ハ終了シタ』
ゼロになると同時に頭の中に声が響いた。
汝らと言っている所からするに、多分世界中の人間に思念を飛ばしているのだろう。
『コレヨリ汝ラノ大切ナモノ達ニカケタ保護ヲ解除スル』
やはり数字がゼロになると、あの身体を覆っていた光の幕を消すつもりだったようだ。
もしも俺が塔の試練に挑まず放置していたら、全裸の彩菜を雪の積もる極寒の地に放り捨てることになっただろう。
マジで試練に望んでよかったと思うぜ。
そして、未だに試練を望んでない奴等は・・・ご愁傷さまとしか言いようがない。
せめて人が囚われている人達だけは、試練に挑んでいてくれと願う。
『更ニ世界ノ融合ヲ始メル 愛スベキモノ 大切ナモノニマタ出会ウ為ニ必要ナコトデアル 受ケ入レヨ ソシテ 愛スベキモノ 大切ナモノヲ見捨テシモノ達ヨ 我ガ試練ヲ軽ンジルモノ達ヨ 貴様等ノ言動ト行動ハ目ニ余ル 故ニ 貴様等ガ見捨テシモノ達ト同ジ世界デ 一時苦シムガ良イ』
そう言うと、立っていられないほどの地震が起こり、家に亀裂が入り始めた。
地震大国である日本。
そんな国であるため、地震対策が施された建造物はかなり頑丈なはずなのだが、そんな家にあっさりヒビが入り、壁がボロボロと崩れ始めた。
そして壁が崩れ屋根さえも崩れかかってきた時、世界が真っ白に光り輝いた。
目を開けていられず、思わず目を閉じる。
そうしている間に、徐々に光が弱まっていき、目を開けられることができた。
そして目を開けると、俺は見知らぬ部屋の中にいた。
イヤ厳密に言えば、見知らぬではなく、どこかで見たことのある部屋の中にいた。
いったい何処で見たのか・・・・。
「うおっ!?」
不意に身体がゆっくりと宙に浮かびあがった。
まるで真上に吸い込まれるかのように。
「なんだってんだ!? うがっ!?」
五秒とかからぬうちに、天井に頭を打ち付けた俺は、頭を擦りながら天井にへばり付く。
「いてて、くそ。なんだよこの状況は・・・おいテレビとかがねぇぞ。つかこの部屋はどこだ?「うわぁぁぁぁっ! オゲェェェェ!?」「きゃぁぁっ! あ? あげ? がげぇ?」・・・なんだ?」
部屋が丸々違う部屋と入れ替わった状態に、俺は驚いていると、外から多くの人々の悲鳴や変な音が聞こえて来た。
俺は天井にへばりつきながらズリズリと進み、小さな窓から外を見る。
すると外は俺が知っている世界ではなくなっていた。
まず俺の知っている建物が何もなくなっていた。
いや、建造物が何もかも無くなっていたと言った方が適切だろう。
見慣れた住宅やスーパーが無いのは勿論の事、車や道路などと言ったモノも無くなっており、変わりに雑草が生えているだけの酷い荒れ地が広がっていた。
そんな建造物が無くなった外には、多くの人々が空に吸い込まれていき、多くの人々が空に吸い込まれながら喉を抑えたり、血を吐き出している。
悲鳴の音と血の雨が世界を満たしていた。
そして、その光景はふと消え失せる。
先程まで空に飲み込まれていた人達はいつの間にか地面に降ろされ、血を吐き出していた人達も、真っ赤に染まっているが、今は何事も無くその場に立っていた。
そして俺も先程まで天井にへばりついていたというのに、いつの間にか普通に床に立ち、外を眺めていた。
『一時ノ苦シミヲ味ワイ 己ガ立場ヲ理解シタダロウ ナラバ挑メ 己ガ生キル為ニモ我ガ選別ヲ受ケヨ 特別ニ貴様等愚カナルモノ達ニ 十時間ヨブンニ時間ヲクレテヤロウゾ』
そう言葉を残すと同時に声は聞こえなくなっていた。
そしてあり得ない体験をした人々は塔の試練に殺到したのは言うまでもない。
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