第40話 正解のある試練6
毒薬だと聞かされてから、地味女はぽつぽつと自分の事を語り出した。
自分は看護婦ではなく、普通の会社に勤めている女なのだと。
二年前に、結婚する人が交通事故で死んだのだと。
悲しみに暮れながらも必死に前を向いて生きていたら・・・ひと月前に見知らぬ男に、遊び半分で強姦されたとのことだ。
そんな事があってから家に引きこもりがちになり、塔が現れても外に出る気になどなれず、ただ生きている意味を見出せなくなっていたとのこと。
そして呼び出される数時間前に、自殺用の道具類を色々購入したり、用意していたとのことだ。
毒薬が二粒ポケットに入れていたのは、もしも私を襲った強姦間を見つけた時に捕まえて飲ませるようと、捕まえようとして捕まえられず、また強姦されそうになったら飲むようだと言っていた。
もともと私はそこまで生きる気など無かったと、そう俺に言って来た。
「お前・・・なにが生きる気が無いだ。ふざけんな! だったらなんで命乞いなんざしやがった! だったらなんで逃げたんだよ!」
「怖く、なっちゃいました・・・男の人、っておも、あるゲホゲホッ!・・あるん、ですけど・・ホントに死ぬって、事がわかって。殺される、ってわかって。怖くなちゃ・・・って」
「それは生きたかったってことだろうがよ! だったらそのまま怖がったままでいやがれ!」
なのに何故自殺なんかしやがる。
生きたいって思ったんだったら、そのまま生きろよ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめゲホゲホゲホッ!!」
生きろと言っても地味女はただ謝るだけだ。
そして血を吐くだけ・・・・・
「・・・・・・おい、大丈夫なのかよ・・・おい・・・」
大丈夫かと問いかけているが、恐らく助からないだろう。
自殺するつもりで持っていた毒だ。
腹の傷と合わさって助かる見込みはかなり薄いだろう。
「アヤ! 試練は終わっただろ! だったらさっさとコイツを元の場所に戻しやがれ!」
『それはできません』
「何でだよ!」
『試練はクリアしましたが、第27ノ試練は24時間フルに使っていただくようになっております。
開始時にそうお伝えしましたが?』
「はぁ!? そんなの聞いてねぇぞ!」
『いいえ、確かにお伝えしました。24時間フルに使い選別してくださいと。ですから残りの時間この場に居続けて頂きます』
「テメェ! そんなことになったらコイツが助からないだろうが!」
『ルールですので、何を申されましてもどうにもなりません』
それ以降何度問いかけてもアヤは答えることはなく、
「ごめん、はぁはぁ、ゲホッ! ゲェェッ!! ごめんな・・・さい・・・ゆるして」
ただ地味女が苦しみながら謝罪の言葉だけが俺の耳に聞こえていた。
「ごめんな、さいい。ごめ、ごめ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
弱弱しい声で必死に許しを請う地味女。
医者でもないが、もうコイツは駄目なんだろうということはわかった。
この状態で23時間も持つわけもねぇ。
なら俺が地味女に・・彼女にしてやれることは
「ごめん、なさい、やだ、ゆる、してこわい、ゆるして、ゆるし、て」
「ああ、許す。お前は何も悪くねぇよ。だから・・・・・・・・・眠りな」
一つだけしかなかった。
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