第33話 残された人達は
赤子を殺した男が消え、俺達8人が残されることとなった。
そして俺達は
「「「「・・・・・・・・・・・」」」」
互いに殺し合うことはできず、互いに距離を取り合う事しかできなかった。
一応はコミュニケーションをとったさ。
一応は自己紹介なんかもしたさ。
けれどそれだけだった。
それだけしかできず、互いが互いを警戒し時間だけが過ぎて行った。
「「「「・・・・・・・・・・・」」」」
誰かを殺さなければここから出られないと皆が悲観的になっている。
殺したくはない。
人殺しなんてしたくない。
怖い。
このまま助けが来るまで待っていたい。
いや、そうしよう。
そう皆が考えていたのだろうが、その考えも
『『『『『何の進展もないまま1時間が経ちました。ですので時間制限を設けます。1分以内に選別が完了してください。完了しなかった者は劣る者と判断し、死んで頂きます』』』』』
強制的に改めさせられることとなった。
誰かを殺さなければ死ぬ。
先程の赤子の様に物言わぬ死体となる。
その恐怖からか、それとも1分という短い時間からか、それとも頭上に行き成り現れ、刻一刻と刻まれるタイマーのせいか、皆が恐怖に囚われ、動き出した。
「や、やめとくれ!!」
「いやあああぁぁぁぁぁっ!?」
一番初めに狙われたのは赤子の次に弱いであろう老人や女だ。
すぐ隣に男がいても、皆が皆力の弱い者達に群がる。
1分以内に殺せる相手。
自分でも殺せる相手。
そう考えた瞬間どうしても性別的に弱い人種を選ばざるを得なかったのだろう。
「しね! 頼む! 死んでくれ!」
そこら辺に転がっている石を武器に男達は老人や女をぶん殴る。
何度も何度も殴り、最後にはグチャグチャという音が響き渡る。
誰もが必死であるため、もう死んでいるというのに、必要以上に相手が攻撃していく。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなゴポッ」
そして次に狙われたのはそんな老人や女を殺そうとしていた者達だ。
別に彼等は弱い者達を助けるために、老人達に襲い掛かる男達に襲い掛かった訳ではない。
ただ出遅れたために、次に隙のある者を襲い殺しただけだ。
この試練を達成する条件は人間を1人殺すこと。
老人や女に二人の男が群がったとしてもどちらかしか試練をクリアすることができない。
要するに一人余るのだ。
ならば老人や女を襲い掛かって、自分に集中していない者の不意をつけばいいと、そう考えたのであろう。
不意さえつけば、同じ男であっても勝てる。
最初の一撃で、思いっきり石で頭をぶっ叩けば勝てると思ったのだろう。
二分の一の確率でも、当たりを引けば無防備な相手の頭を石で殴れる。
先に石でぶん殴れれば、勝機は先手を取った方に傾くのだから。
『『『第26ノ試練突破しました。第27ノ試練の参加資格及び2ポイントお渡しいたしますが、未だに第1ノ試練すらも越えられていないご様子。ですので、塔に入り第1ノ試練から第25ノ試練を突破してください。でなければ第27ノ試練を受けることも、只今差し上げたポイントの使用もできません』』』
「やった! 俺がやった! 俺は帰れる! 帰れる! 帰れ・・・る・・・・」
「あはははは、あはははは、あはははははは」
「俺は悪くない。悪くない、悪くない、悪くない、わるくないわるくないわるくないわるくない」
三人の男達がそれぞれ人を殺した。
その結果、無機質な声が響き渡る。
先程と似たような内容を吐く無機質な声。
決められた文言を話し終えると、男達は強制的に元いた場所へ転送されていった。
そして残されたのは俺と・・・
「ひ、ひぃ!?」
運悪く、老人を殺せなかった男だけが残された。
彼等が老人や女性を襲っている時、俺は何もしていなかった。
助けることも、逆に襲い掛かることもしなかった。
ただ見ていただけ。
事の成り行きをただ見ていただけだ。
「ま、待ってくれ。やめてくれ! こ、こんなことしなくても、何か助かる手段が!」
「・・・怨んでいいぞ」
銃を構え、そして撃つ。
今度はクズ男を撃ったときのような謎現象が起こることはなく、男の腹に穴が空いた。
「あ、ああ、げほ、げぇ!」
彼には悪いと思うが、銃を撃ったのは逃がさないためだ。
時間制限がある時点で、逃げられてこのままゲームオーバーは流石に不味いからな。
「今楽にしてやるよ」
銃を腰に差し直した俺は、左手に持っていた剣を両手で握り。
もはや慣れてしまったと言っていい首切りを行った。
俺に殺される寸前まで、男は血を吐きながら助けを求めていたが、俺はその声に従うことはなかった。
『第26ノ試練突破しました。第27ノ試練の参加資格及び2ポイントお渡し致します。次の試練にお望みの場合はあちらの階段を登ってください』
「・・・・・・・・」
こんな風に胸糞悪くなる試練がまた続くのだろうと思いながら、俺は俺が殺した人の懐を漁り、身分証明書になりそうな物やスマホを見つけると、それを持って階段を登っていった。
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