第32話 第26ノ試練での後悔
開始の合図がされた。
何が何だかわからないままに、開始の合図がされたのだが、皆が動けるわけもなかった。
行き成り殺し合いをしろと言われたのだ。
人を殺せと言われたのだ。
できるわけがない。
そうできる訳もないと思っていたの・・・。
「おぎゃー! おぎゃー! お「うぅるせぇな。黙れよクソガキ」ゲッ・・・・・・・・・・・・・」
開始の合図と同時に赤ん坊の傍にいた男が、泣く赤ん坊の切り蹴飛ばした。
加減などせず、思い切り頭を蹴り飛ばされた赤ん坊。
その結果赤ん坊の首がどうなったかは・・・・語るまでもない。
「な、何してんだ!」
「いやぁぁぁぁっ!? 人殺しぃぃぃぃっ!?」
「ななななんで、お前、なんで!?」
「コイツ。ヤバイだろ」
「お、おえぇぇぇぇぇぇぇっ」
怒りに叫ぶ者、赤ん坊が殺されたことで叫ぶ者、恐れる者、死体を見て吐く者と三者三様の反応を見せていた。
カチャ
そして俺は、そんな男の奇行を見た瞬間、腰に下げていた拳銃を男に向けていた。
俺も試練をクリアする為に赤ん坊を殺してきたクズだが、流石に虫を殺すように殺したクズを見逃せるわけもない。
人を一人殺せという試練内容であるならば、お前みたいなクズが真っ先に死ぬべきだからな。
「うおっ!?」
「ひぃ!?」
聞きなれない発砲音。
その音に周りの者達は驚き腰を抜かしたかのように床に倒れ込む。
そして撃たれた男も床に倒れ込む。
そう思っていたのだが、
「おとと、あんだ? こりゃあ?」
男の身体はまるでホログラムの様になっており、風穴を開けることはできなかった。
『富田 静樹(とみた しずき)様。第26ノ試練を突破しました。第27ノ試練の参加資格及び2ポイントお渡し致しますが、未だに静樹様は第1ノ試練すらも越えられていないご様子。ですので、塔に入り第1ノ試練から第25ノ試練を突破してください。でなければ第27ノ試練を受けることも、只今差し上げたポイントの使用もできません』
「ほほぅ、ここは塔の中か。興味なんざなかったが、殺し合いができるなら願ってもねぇわな。ただよぉ。俺は塔に行きたくてもいけねぇんだよなぁ。おいお前、どうにかしろよ。そしたら参加してやる」
『願い、求めなさい。さすれば塔は貴方を受け入れるでしょう』
「願い? 求め? 意味わかんねぇが、言えば連れてきてくれるってことか?」
『それでは赤子の血を代償に一旦元いた場所へとお返し致します。どうぞ、第1ノ試練から第25ノ試練をクリアし、第27ノ試練にご参加ください』
アヤではない女の声が、男の質問に答えることなく、赤子を殺した男はその場から消し、残ったのは物言わぬ死体となっていた赤ん坊だけであった。
「な、なんだそりゃ! なんだよそりゃぁぁぁぁぁっ!!」
あまりにもあんまりな光景に周りの者達が叫び出す。
初めて人の死を目の当たりにし、初めて人を殺す瞬間を見せられたのだ。
騒ぐなというのは無理もないだろう。
「本格的に殺し合えってか・・・・・・・クソッタレめ」
どうやらこの塔は俺達人間を殺し合わせたいようだ。
それに何の意味があるのかわからないが、ただ俺はまた誰かを殺さなければならないことを知り、気分が沈むのを感じた。
赤ん坊が殺される前に、あのクズを殺せればよかったのにと少しの後悔を感じながら。
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