第28話 彼は強くない
第25ノ試練を終えた俺は家に帰ると、まず傷の治療に取り掛かった。
肩と頬の傷口を洗い、消毒液をぶっかけて化膿止めの薬をありったけ塗ったくり、大量のガーゼを当てて包帯やテープで固定する。
傷を縫ったり、焼いたりするべきかとも思ったが、医療のいの字も知らぬ素人が、安易に手を出すべきではないと思い断念した。
できれば病院に行って適切な治療を受けるべきなんだが、変なバリアっぽいモノに囲まれ、家から出られないこんな状況ではどうにもならない。
汚れた服も武器も防具も何もかも脱ぎ捨てて、俺は失った血を得る為に飯を食い、水を飲む。
できるだけカロリーの高い物を摂取し、後は安静にした。
本当にそんなので治るのか? という不安はあれども、大丈夫だと己を鼓舞し、俺は寝た。
怪我のせいで身体が熱く、ズキズキと痛む苦痛の中で、どうかちゃんと目覚められますようにと願いながら。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!
夢を見た
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
俺は黒くて赤い夢を見た。
真っ暗で、真っ赤で、全身が何かに掴まれる夢を見た。
その夢の中で俺は怒りなのか、悲しみなのか、恐怖なのかわからず、ただ叫んでいた。
俺の叫びはその黒くて赤い世界に響き渡る。
うるさいほどに、耳を塞ぎたいほどに。
けれど俺は叫ぶことを止めない。止めることができない。
叫ぶことを止めてしまったら、叫び苦しいと、助けてくれと叫ばなければ俺を掴む何かに引きずり込まれそうだからやめることができなかった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
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