第13話 人でありたいなら留まれ
第11ノ試練は、敵意もなければ無力な存在の命を奪う事であった。
この世に生を得て間もない赤子という存在を殺す試練であった。
「悪いな」
俺は両手を合わせたのちに、ネズミの赤ん坊の命を奪った。
できるだけ苦しませないように持っていた剣で首を落した。
言っておくが俺だって敵意を持たない相手の命を奪う事には抵抗はある。
あるが、こんなところで足踏みしている暇など無い。
故に最悪な気持ちになりながらも、無抵抗な者の命を奪った。
『おめでとうございます。第11ノ試練クリアです。ポイントが2ポイントが贈呈されます』
アヤの声に変ってからどこか人間味が増した。
それがどうにも腹正しく思える。
人の大事な女の声を真似しているだけでは飽き足らず、人の大事な女の声で命を奪ったことを称賛されるのはあまりにも腹正しい。
『続きまして、第12ノ試練を始めます』
そう言うと、殺したネズミの死体の横に、新しい生まれたてのネズミが現れた。
『劣る者を2匹殺し、次の試練へと進んでください』
「・・・・・てめぇ」
『選別を始めてください』
俺のイラついた声にアヤは反応することはなく、ただ合図を口にするだけだった。
俺はイラつきながらも、ネズミとヒヨコを殺す。
そして第12ノ試練をクリアし、第13ノ試練に臨むと
『劣る者を3匹殺し、次の試練へと進んでください』
またも殺す対象が1匹増えていた。
俺はここで嫌でも気付かされた。
この試練が続く限り、試練に臨む限り、この場にいるもっとも殺したくない無力な存在を手に掛けなくてはならなくなると・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます