第10話 第十ノ試練までのポイント消費


「・・・・・・・・ふぅ、もう食えん」


 飲み水の確保やトイレに使う水の確保を終えた俺は、イラつきや悲しみを発散するように爆食いしていた。

 こんな食べ方を彩菜が見たら怒るだろうが、怒られたときは電気が止まったせいで冷蔵庫の中の物が悪くなるので、仕方なく食べたのだと言い訳をしよう。

 などと思いながら俺は食器を流し台に持っていき洗う。

 未だに水は止まっていないのはありがたいが、飯を食い終わったらこの流し台にも水を溜めておいた方がいいだろう。


「飯も食ったしもう休みたいところだが、そうも言ってられないな」


 飯を食う前に集めて置いたモノに俺は視線を向ける。

 そこには冷凍庫の食品を少しでも持たせるために入れておいたクーラーボックスや、非常食や薬類や懐中電灯などが一箇所に集められていた。

 一応防災バックは心配性の彩菜が二つ用意していたようだが、それでも一応他のバックにも食料を詰め込んで運べるようにしておくべきだろう。

 家の中にどれだけ物があるのかも確認しておくべきだしな。


「未開封の500mlの水が8本。1.5ℓのジュースが2本。6缶パックの発泡酒が1つ。後は隠して置いた日本酒やらウイスキーやらがちらほらとある感じか・・・我ながら良く見つからずに隠し通せたものだ」


 水やジュースよりも酒類が多いが、酒が好きなのでそこは仕方が無い。

 ただ彩菜は俺が酒を飲み過ぎるから、1日ビール1本と、1週間のうち必ず1日は禁酒する日を設けさせられた。

 1日禁酒することには慣れたが、流石に1日ビール1本は飲み足りないにもほどがあるので、彩菜が寝静まった頃に1人晩酌をしていた。


 まぁ、そんなことはいい。

 そんな事よりもだ。


「武器になる物があまりないな」


 今はこっちのほうが重要だ。

 この家には包丁くらいしか武器になる物が無い。

 工具用のハンマーや、ガーデニング用の小さなシャベルはあるが、これだけだ。


「様子を見てからになるが、ナタとか武器類を用意した方が良さそうだな」


 本当は今日中に購入しに出かけたいが、俺が塔で試練を受けている間に結構時間がたっている。

 今から店に駆け込んだ所で門前払いされるのが落ちだろう。

 それに一応は試練中に手に入れた剣やマネキンの一部で作ったこん棒モドキもある。

 心もとないが、それなりの武器はあるんだ。

 何とかなるだろ。


「そういえば、途中から先に進む事ばかりで、ポイントの割り振りをしていなかったな。今のうちに割り振って・・・いや、ここでできるのか?」


 あの変な透明な板。

 アレはあの塔の中で生み出せるモノなのかと考えたが、一応あの透明な板が出てくるように念じてみる。

 すると、何の事無しに普通に透明な板が目の前に現れた。


「謎仕様ここに極まれりだが、そんなこったぁどうでもいいか。それより彩菜の状態は・・・変わりなしか」


 それが良い事なのか悪い事なのか判断つかないので一旦考えるのをやめ、俺はまず得たポイントで攻略報酬リストを埋めていった。


 9日18時間18分40秒


 使用可能ポイント 14ポイント


 攻略報酬リスト


 映像(中)

 空気(中)

 重力(中)

 大地(下)

 気温(下)

 水(下)

 食料(下)

 服(下)

 トイレ(下)

 寝袋(下)

 家(下)

 空(下)…etc


 習得済み

 映像(下)

 空気(下)

 重力(下)




 9日18時間15分27秒


 使用可能ポイント 6ポイント


 攻略報酬リスト


 映像(中)

 空気(中)

 重力(中)

 大地(中)

 気温(中)

 水(中)

 食料(中)

 服(中)

 トイレ(中)

 寝袋(中)

 家(中)

 空(下)…etc


 習得済み

 映像(下)

 空気(下)

 重力(下)

 大地(下)

 気温(下)

 水(下)

 食料(下)

 服(下)

 トイレ(下)

 寝袋(下)

 家(下)



 まずは家までの項目を全て埋めた。

 とはいっても全て最低ランクの(下)が付いているので最低でも(中)を習得しなければならないだろう。

 なんて言ったって、空気(下)を習得していても、汚染された空気だからな。

 そんな世界で彩菜に待っていてもらう訳にもいかない。

 なので空気(中)を得たのだが、



 9日18時間13分34秒


 使用可能ポイント 4ポイント


 攻略報酬リスト


 映像(中)

 空気(上)

 重力(中)

 大地(中)

 気温(中)

 水(中)

 食料(中)

 服(中)

 トイレ(中)

 寝袋(中)

 家(中)

 空(下)…etc


 習得済み

 映像(下)

 空気(中)

 重力(下)

 大地(下)

 気温(下)

 水(下)

 食料(下)

 服(下)

 トイレ(下)

 寝袋(下)

 家(下)



 見てわかる通り、今まで1ポイントで購入可能だったのが2ポイント必要になりやがった。

 しかも


『世界ニ濁ッタ空気ガ蔓延サレタ 濁ッタ空気ハ生物ノ身体ニ害ヲ及ボシ 息スルコトガ苦痛ニナルダロウ』


 普通に呼吸できる新鮮な空気ではなかった。

 マジでふざけているとしか言いようがない。


 なので先程ポチポチと一気に購入した他の(下)の項目を調べてみれば、そよ風に飛ばされない程度の重力だったり、刃物が生えている大地だったり、1時間ごとに気温が-100~100度にランダムで変わったりするというクソ設定であった。

 ポイント1で習得できる(下)の項目は、はっきり言って健康な人間であっても、普通に生きられないクソ環境としか言いようがない。


 ただそんな(下)でもまだ使える項目があった。

 それは衣食住関係だ。


 水(下)は3ℓ分の水が1日に1度与えられる

 食料(下)はカロリーメイトらしきものが14本分

 服(下)は下着のみ

 トイレ(下)はおまる

 寝袋(下)は虫食いだらけの使い古された寝袋

 家(下)は雨風が辛うじて凌げる1人用のテント


 といった具合だ。

 決して良いとは言えないが、空気や重力関係に比べれば可愛い方だろう。

 ただ、そんな生活環境で彩菜を住まわせることなんてできないけどな。


「残ったポイントは後4ポイントか・・・場を整える猶予はあるが、それでも一応振り分けておくか」


 残ったポイントを使い、俺は大地(中)と気温(中)を購入した。


 大地(中) 尖った石や岩が転がっている大地

 気温(中) 1日に-50~50度、ランダムに気温が変わる


 まだまだ良い環境とはほぼ遠いが、ひとまず解放されて即死するような世界ではなくなっただろう。

 後は重力の項目をどうにかしなければ、風に飛ばされて死んでしまう可能性がある。

 まだまだ過酷な世界であることは変わりないな。


「・・・ホントクソだな」


 ぽちりと俺は映像をタッチする。

 裸のまま猫のように丸まって眠っている彩菜。

 こんな姿を見るなと言われるかもしれないし、俺自身見ていて申し訳なく思うが、彩菜がいないこの家はあまりにも広く感じてしまいどうすることもできなかった。


 悪いとは思いつつも俺はその寂しさを紛らわすように、彩菜の姿を眺め続けながら、眠りについた。











『第十ノ試練最速突破ヲ確認 コレヨリ最速突破者ヘノ報酬ヲ与エル 報酬ハ “リンク” 解放時間終了後 愛スル者ト同ジ環境ニテ過ゴス事ヲ許可 アップデートヲ開始――――――――』




 9日17時間44分44秒


 使用可能ポイント 0ポイント


 攻略報酬リスト


 映像(中)

 空気(上)

 重力(中)

 大地(上)

 気温(上)

 水(中)

 食料(中)

 服(中)

 トイレ(中)

 寝袋(中)

 家(中)

 空(下)…etc



 習得済み

 映像(下)

 空気(中)

 重力(下)

 大地(中)

 気温(中)

 水(下)

 食料(下)

 服(下)

 トイレ(下)

 寝袋(下)

 家(下)



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