第3話 呪い?

 これは私の自宅の近くで昔あった話です。


 今から50年ほど前でしょうか。うちの近所に、大きな杉の木があったそうです。今は切り株も朽ち果て、そこには木があったんだなとしかわからないのですが。

 私の父は幼い頃から、その木の近くでよく遊んでいたそうです。


 ある日、父は違和感に気づきました。それは昨日までは無くて、今日あるもの。その杉の木に、釘が刺さっていたのです。

 それは所謂五寸釘。よく人を呪う際に使うアレです。まあ、大概の人は丑の刻に1本の五寸釘に怒りや憎しみの限りを込め、対象者の写真や名前を張り付けた藁人形に精一杯の呪いを向けることでしょう。

 この杉の木は違ったんです。何本も、何本も、何本も五寸釘が打たれていたんですよ。でも、そこに藁人形はないんです。釘は列をなし、規則的に並べられていました。

 父は不思議に思い、木から遠ざかってみたんです。そしてわかった。

 そこには、人の輪郭をなぞるように五寸釘が並べられていたんです。何本も何本も何本も…。

 恐ろしくなった父は特にそれには触れることはせず、すぐさま帰宅したそうです。


 そしてある日、そこ一帯には猛烈な雨が降りました。どんよりとした雨雲の中、時折雷が雲を照らし、不穏な雷鳴がまるで獲物を狙う獣のような唸りを上げていました。

 ピカッと光が瞬いた瞬間、轟音が響き渡りました。近くに雷が落ちたのです。父は慌てて外を確認しに行きました。そして見たのです、雨降りしきる中あの杉の木が火柱となり燃えているのを。

 木はあっという間に燃え上がり、そして力尽きるように倒れてしまったそうです。

 その後燃えた木はさっさと片付けられてしまいました。


 果たして、あの木の呪いか何かは成就したのでしょうか?今となっては知る由もありませんが。

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