第18話 撃墜
身体強化を発動。割合を全身に3、眼球に3。残りの4割を目の奥のさらに奥に集中させる。すると、草原の音が聴こえなくなり、視覚の強化で得た鮮やかな視界がモノトーンになる。
変化はそれだけに止まらない。足元に生えている雑草の風での揺らぎが止まって見える。強襲を仕掛けている
時間操作をしている訳ではない。目の奥深く、脳へ魔力集中をする事によって意識を高速回転させたのだ。
誰もが一度は聞いたり、体験した事のある人もいるだろう。怪我や事故に遭った際、視界が緩やかになったり、一瞬の出来事の筈なのに普段かそれ以上に考え事が出来たという人がいるという。私も幼少の頃に戸棚の物が足先に落ちてくる際に、落ちたら痛いから避けないとと認識した事がある。実際は認識していただけで落下物は親指へと直撃して大泣きするだけだったが。
先日の墜落事故の際、全身に強力に身体強化を重ねた時だ。落下しているのに風景がゆっくり移動しているように見えたのだ。高速の意識下だからこそ、落下の衝撃に耐えられるように順序立てて身体を動かす事が出来たのだ。一瞬という世界の中で。
移動中の練習のおかげで、どこにどの程度の魔力を集中すればいいかは把握出来てきていた。それの実践をぶっつけ本番でするだけだ。
問題点が無いわけではない。自分の身体能力では低速になった世界ではまともに動く事が出来なかった。身体強化を併用して低速の壁を破らないと、ただゆっくり見えるだけなのだ。それでも使い道はいくらでもありそうだが。
さておき、再び子どもに襲い掛かろうとしている鷹に対して礫を投げる。もちろん身体強化込みの大威力で。ゆっくり流れるモノトーンな世界でも礫は高速と言える速さで飛んでいき、鷹に当たる…かと思われたが、かなり離れた位置を通り過ぎてしまった。飛来物に慌てたのか鷹は上空に戻っていく。
うーむ…いくら身体強化してもコントロールまでは上手くならないかと、残念に思っていると、おや?旋回位置が先程よりも圧倒的に私に近い。どうやら獲物を切り替えたようだ。それならこちらもノーコンの心配をしなくて済む。儲け物だ。
遠く、子どもが頭を上げて私に何か言っているようだが意識強化のスロー世界では何言ってるかさっぱりわからん。気にしない。襲ってきた鷹を抑えるほうが先だ。
来襲する鷹。目と鼻の先、鎌の狙いが肩に。その直前、当たるか当たらないかのギリギリを私は余裕を持って真横にスライドし、鷹の広げる翼の片側を万力のような力を込めた右手で掴む。そして鷹の高速落下するエネルギーを無視するように片腕で受け止め、振り上げて即座に思いきり地面に叩きつけてやった。
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