第14話 街道と落下
視界を高速に木が通り過ぎていき、すぐに広大な景色が眼前に広がる。
「わぁ〜…すっごーい…」
今までの家と閉鎖的な村や森しか見た事のなかった私は感嘆の声を漏らす。ここは奥地だったと実感出来るほどに森が広がっているが、ある程度行くと木々は途切れ、地平線の境目手前辺りでは整備された道が微かに見える。
「ずっと奥に見えるのが街道」
かな?と独り言を続けようとした時、視界が止まる。当たり前の事だ。頂点にまで上がり切ったらあとは下へと落ちるだけ。下を見ると地面が遠くに見える。
落ち着いて跳躍した高さを考えている間にも、体は地面へと落ちている。まずいまずい!ここ数日、何度目かのまずい状況だ。
落ちながら高速で慌てつつ助かる方法を実行する。ここまで高いと着地練習の衝撃予測で考えていた部分強化では圧倒的に足りない。全身をこれでもかと強化しなければ耐えられない。強化を進めていくと全身の要所から次々と結晶も伸びてくる。
「いっっっっ!でも我慢だっ…!」
急激に大出力で術を発動した事で内側全身から刺されるような激痛が襲ってくるが、ここで気絶すれば待つのは良くて全身骨折に内臓破裂。悪くて死だ。いや、9割以上は後者だろう。
手足を広げ、風の抵抗を受けるようにしながら落ちる。もう地面ら目の前だとなった時、私はすぐに体を立たせて地面に立つようにする。足がついた。そう思った瞬間に頭を守りながら足首を曲げ、膝を曲げ、横に倒れるようにして転がる。ゴロゴロと転がり、最終的に木に激突する。
「わぁああああぁあああ!ぐえっ!!」
カエルが踏まれたような声を出して全身を地面へと投げ出す。どうにか着地をする事に成功したユーリ。その心には先程の景色による感動なんてカケラも残っていない。術の練習を真面目にしよう。心の底からそう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます