第13話 跳躍
家を出るとそこは鬱蒼と木が茂る森の中。そんなところに突然に我が家が出現したような状況に違和感がすごい。
旅立った後に家を消すと言っていたけれど、燃やしたら山火事必至だろうし爆発等で壊しても残骸は残る。どうやって消すんだろうか。
頭を傾げながらも家の敷地から出て振り向くと『キュワン』と音が家の内側からした瞬間、黒い球体が一気に外に広がり我が家を覆い尽くしてしまう。
「………」
あまりの出来事に固まっていると球体は発生した時とは逆に内側に収縮し消える。家と土地、カケラも残さずに、それはもう綺麗さっぱり。残ったのは球形に抉り取られた地面だけ。
「いやね…消滅…言ってたね、言ってたよ消すって…何よこれ!私、こんなとんでも術式施された家に住んでたの!?もしかしたら私も気付いたら跡形もなく消えてたかもしれないじゃない!!」
術式の凄さに驚く前に、凶悪過ぎる術が搭載された家に長年住まわされていた事に今日何度目かの怒りが噴火する。父さんが生きていた頃よりも怒っているのではないか、今日の私…。
「はぁ…まぁこれで文字通り、後腐れなく旅立てるってものね。よし、行きますか!」
先程までの怒りをため息で流し、声を出して歩み出すユーリ。父からはここから西にずっと行けば交易都市に辿り着くと言われていたので、とりあえず言われた通りに行ってみよう。
歩み出そうとしたが一旦立ち止まる。木の上から確かめてみようか。今の私なら身体強化を使えば苦にならずに楽々と登り切れるだろう。
「でもな〜 新品のローブに枝引っ掛けるかもしれないしな〜。…そうだ、跳べばいいんだ!」
リュックを降ろしてトントンとその場でジャンプをする。跳ぶ際に体が使う部位、着地の際に衝撃を受けそうな部位を確かめつつ何度か跳ねては大袈裟な着地のポーズをとる。ある程度のイメージをつけ、ジャンプ時に使う部位に強化を施すと、太ももやふくらはぎから結晶が生えてくる。
「なるほど、ローブのダボつきは結晶を隠すためって事か。おっし準備完了!じゃ、せーの…よっ!」
そんな掛け声と地面が砕かれる音を残して、ユーリは上空へと射出された。
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