第12話 旅立ち

『これで結晶魔術クリスタルクラフトの使い方は以上だ。よく頑張ったね』


目を覚ますと左手は本から離れており、全身に生えてた水晶も綺麗になくなっていた。体にも傷はついていない。


気絶させら…眠らされた事で多少心と体が落ち着けられた私に、父さんは結晶魔術クリスタルクラフトの使い方と脅迫に近い注意点を説明してくれた。


『何度も言うけど、この力はみだりに他者の目に晒す事はなるべく避けて欲しい。人攫いくらいなら御の字、最悪監禁生活か実験動物の余生を過ごす事になるからね。ボクも…んんっ。ボクの事はいいか』


え、何したのさ父さん、説明を要求するよ!


『実はすでにこの家は土地ごと、事前に登録していた隣の大陸の交易都市の付近の森奥深くに移動している。これも結晶魔術クリスタルクラフトで存在と無の狭間に登録したポイント間を移動できるようにしてあったんだ。与えた力で最初にやるのが復讐なんて悲しくなるからね』


『この家には結晶魔術クリスタルクラフトで使った魔道具が多くある。これが下手に残っても後世にどんな影響があるか分からない。よって、悲しいけど全てを消さなくてはならない』


『キミと過ごした、裕福とはいえなかったけど幸せのたくさん詰まったこの家を無くす事。本当に悪く思っている。でも、この家のせいでキミに何か起きる可能性があるだけでもボクは気掛かりなんだよ。ごめんね』


『持っていきたい物は持っていくといい。家にある結晶魔術クリスタルクラフトに関係性が深い物は、家に出た瞬間に消える様にしてあるから問題ないよ。あぁ、戸棚を見て。旅立つキミに、新たな結晶魔術師クリスタルクラフターのために用意したローブと旅道具だ。ローブは術を隠しながら使うのに便利だと思うよ』


戸棚には折り畳まれた所謂ねこみみフード付き緑を基調としたローブとリュックが入っていた。ローブは着てみるとかなりダボついている気がしたが動くのに邪魔にはならなさそうだ。

ローブのポケットに父さんにあげた水晶を入れ、リュックを背負って玄関に向かう。私物は特に残っていなかったし旅に使う物も用意してくれていた。問題はない。


玄関に着くと父さんの声が再び聞こえてくる。


『ボクのお姫様。家を出たらそこは未知なる世界だ。大変な事、辛い事、泣きたくなる事もあるだろう。でもボクは、誰もがキミを嫌ったとしても、ボクだけはキミを愛しているという事を忘れないで欲しい。…これ以上言う事はないよ。さぁ、頑張っておいで。可愛い可愛いボクのユーリ』

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