第9話 怪談:村人軍曹
この国は戦争をしている。
俺は軍曹。
下っ端兵隊をまとめてゲリラと戦っている。
上の連中は会議で戦いを決めている。
俺たちのような下っ端は、
泥にまみれて戦っている。
くそったれ。
進軍の先、村があった。
ゲリラがいるかもしれない。
そして、食料などの物資があるかもしれない。
ならば、俺が出す命令は、
「皆殺しにして奪え」
兵隊は何の疑問も抱かず、殺しまくった。
誰もいなくなった村で、
俺たちは考えた。
この村を乗っ取り、村人の振りをしよう。
女がいないが、さらってくればいい。
ゲリラが急襲しないよう、
あくまで村人の振りをする。
そして、村を訪れるものから、
ゲリラの核心に迫れる情報を、
それとなく聞き出す。
こちらは善良な村人だ。
俺たちはボロボロになった村を再構築する。
軍曹の俺は村長になった。
戦火から逃げ回っている女をさらってきては、
村に迎えて嫁とした。
孤児を見つけては、カモフラージュに迎え入れた。
数か月して、
戦争がやむ気配はなく、
村が戦闘区域になることはなかったけれど、
不安が蔓延していた。
ゲリラの情報はなかなか入ってこない。
村は村として機能しているから、
怪しまれることはない。
すべて政府軍の兵士だと、誰がわかるだろう。
村長となっている俺は、
ある日、前の村人が使っていたものを、片づけていた。
そこで、俺は、俺たちが殺した前の村長の日記を見つけた。
そこには。
村長は政府軍の軍曹で、
ゲリラの情報を得るために村人を皆殺しにして……
俺は目を疑った。
そして、建物の外、
銃声が聞こえた。
「奪え!」
「殺せ!」
窓から見れば政府軍の兵隊。
違う!俺たちは違うんだ!
俺たちが直した建物は破壊され、
俺たちが集めた村人は殺され、
多分俺たちすべて殺される。
この戦争が終わるまで、
何人の村人軍曹が殺されるだろう。
この村が平和な村になるまで、
一体命がいくつ消えるだろう。
平和を知りたかった。
最後に俺はそう思って、
政府軍の銃で頭を打ち抜かれた。
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