第13話『共通点』

 山岸究は穴が開くまで犯人の視界映像を見続けた。何か共通点があるはずだ。そして、あることに気付いた。


 「犯人がみんな同じ指輪をしている…?」


 連続多発暴行事件の犯人の共通点は意外なところにあった。全員がブレインBシェアSリングRを身に付けていたのだ。早速BSRのメーカーであるアストラル社の日本法人を訪ねた。


 「いま代表取締役社長の堀江瑞樹が参りますのでこちらでお待ち下さい」


 通された応接室は斜陽産業の会社とは思えない豪華さで、さすが腐っても外資系の日本法人といった感じだ。


 「お待たせ致しました。山岸さん、でしたか?」

 「はい、山岸です。堀江さん、今回は突然の訪問失礼致しました」

 「いえいえ、何か急を要する事件の捜査なのでしょう?私が分かることなら最大限協力致しますよ」

 「それでは時間も惜しいので単刀直入にお聞きしますが、堀江さんは今回の連続多発暴力事件をご存知ですか?」

 「えぇ、ニュースは良く見る方ですから。その事件と弊社に何の関係が?弊社の従業員で事件の関係者は居ないはずですが」

 「もちろん知っています。今回お聞きしたいのは、犯人が全員あなたの会社のBSRを身に付けていたという点です」

 「たまたまでしょう。山岸さんは、BSRが事件を引き起こしたとお考えで?弊社の従業員でBSRを着けている者は多数居ますが、彼らは事件を起こしていませんよ」

 「そうなんです。BSRを着けた者全員が事件を起こす訳ではないところが悩ましいところでして。ただ、犯人の共通点がそこしか無かったものですから、BSRに幻覚や幻聴を引き起こす副作用があったりはしないかと思いまして」

 「BSRはご存知の通りペアリングです。着けた2人の右脳を常時接続することでお互いの潜在意識を統合する。それによって夫婦の結婚生活が長続きすると話題になり、当初は結婚指輪として大流行致しました。現在は方向性を転換し遠距離恋愛をサポートするツールとして愛用されています。それ以上でもそれ以下でもありません。幻覚や幻聴と言った副作用の報告を受けたこともありません。また、BSRには登録したペア以外の人間がアクセスする機能は付いていません。ハッカーが侵入するようなセキュリティホールも存在しません。

 そしてここが大事なのですが、BSRはビヨンドBブレインB社のPPineal gland-BMIと連動することで初めて作用します。ですから、まず疑うべきはBB社の方では無いですか?連続多発暴力事件の前に起きた連続多発自殺事件の時は、P-BMIに備えられた脳に電気信号を流す仕様に社会から大きな批判が寄せられ大炎上しました。現在はその使用を他殺防止に限定することで沈静化してはいますが、依然BB社への風当たりは強い。アメリカ政府の後ろ盾を得ているとは言え、今の社会で何か事件が起きたらまずBB社のP-BMIを疑う流れが出来ていると言えるでしょう」

 「そうですね。この後BB社の日本法人にも伺うつもりですが、あの会社は何か隠してると私も疑っています」

 「なら、私が言えることはもう何もありませんね」

 「そうですね。貴重なお話が聞けました。どうもありがとうございました」

 「いえいえ、社会が安定化するために警察の方には是非とも頑張って頂きたい。早期の事件解決を願っていますよ」


 アストラル社の社長が嘘を言っているようには思えなかった。山岸は次にBB社の日本法人へと向かった。

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