第8話『未来の精神病院』

 「藤村さん、お母さんが面会に見えているので一緒に来てもらっても良いですか?」

 「はい、分かりました」


 「大輔、調子はどう?ご飯しっかり食べて眠れてる?」

 「うん、お陰様で。ごめんね、迷惑かけて」

 「良いのよ、しっかり治して出てきてくれれば良いの」

 「治るのかな?」

 「先生は何て言ってるのよ?」

 「うーん、やっぱり統合失調症の症状で幻覚、幻聴の症状が出たんじゃないかって」

 「私も大輔に対して何か変なこと言ってたんでしょ?」

 「とてもお母さんが言いそうもない事を言ってたよ」

 「ちなみに、何て言ってたか思い出せる?」

 「そうだね、『この世界の真実を知りたくないか?』って言ってた。確実にお母さんの口調じゃなかったよ。明らかに男の喋り方だった」

 「でも、私はそんな事言った覚え無いわよ」

 「そりゃそうだよ、だから俺が勝手に見た幻覚、幻聴なんだと思う」

 「治療は効果出てる?」

 「うん、どうもドーパミンっていう脳内の神経伝達物質が人より出過ぎてると幻覚、幻聴なんかの陽性症状っていうのが出ちゃうらしくてね。先生が俺のPPineal gland-BMIを操作してドーパミンの伝達を調整してくれたから、かなり落ち着いた感じがするよ」

 「そう、なら良かった。その処置は退院してからも続けるものなの?」

 「うん、しばらく続けて症状が落ち着いたら外すかもしれないって」

 「まぁその辺は先生が一番詳しいんだから先生にお任せね」

 「うん」


 人類の右脳間に存在する相互通信のネットワーク、ワンネスOブレインBネットワークNが発見され、松果体Pineal glandに接続する侵襲式ブレインBマシンMインターフェースIPPineal gland-BMIが普及し、2051年の精神疾患の治療に薬は不要となった。精神疾患の原因は全て脳内の神経伝達物質が原因であることが既に分かっていたので、P-BMIによって直接脳内の神経伝達物質の量を調整することでうつ病や双極性障害(躁うつ病)、統合失調症と呼ばれる諸々の精神疾患は完治が可能になっている。

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