第7話『未来の犯罪』

 人類の右脳間に存在する相互通信のネットワーク、ワンネスOブレインBネットワークNが発見され、松果体Pineal glandに接続する侵襲式ブレインBマシンMインターフェースIPPineal gland-BMIが普及してからというもの、以前の社会で起きていた“犯罪”と呼ばれるものを今の時代で起こすことは不可能となった。P-BMIに入力された個々の人間の視覚情報や聴覚情報はリアルタイムでガイアによって処理されている。つまり、個々人が監視カメラや盗聴マイクとして機能しているのである。まさに理想の相互監視社会と言えるだろう。


 ガイアが画像認識や音声認識によって犯罪の兆候を察知した瞬間、犯人の脳にはP-BMIを通して電気信号が流れ、犯人は体が麻痺し、気絶する。警察はガイアからの情報に従って犯行現場に行き、気絶した犯人を逮捕する。たったこれだけのことである。


 「奥さん、大丈夫ですか?」

 「はい、急に主人が包丁を持って襲いかかって来たのでビックリしました」

 「で、こうやって気絶したと」

 「はい。ガイアに助けられました」

 「分かりました、ではご主人は連れていきますね。しかし、何だってご主人はこんな馬鹿なことを?」

 「実は主人の他に好きな人が出来まして、離婚を提案していたんです」

 「そりゃあご主人にとってはショックでしょうなぁ」

 「でも、聞いたら主人だって他の女と私の知らないところで会ってたんですよ!お互い様です」

 「そうですな、それはお互い様だ」

 「とにかく、連れてってしっかり更生させて下さいね」

 「それは私達の仕事ではないですがね。更生官に伝えておきますよ」


 現代ではガイアによって全人類が守られているので、日本だけでなく世界中で一般人が銃を持つ必要が無くなり、全世界で続々と銃刀法が制定された。よって、犯罪を起こそうとすると手近な包丁や鈍器などが凶器になることが多い。


 また、今までの話を聞いていれば分かる通り、現代では自殺も不可能となった。自殺を図ろうとした瞬間に気絶するからである。以前の社会で起きていた電車への飛び込み自殺なども未然に防がれる。他殺と同様に自殺も命を軽視するという意味では重大な犯罪であり、犯人は更生施設に送られ刑期を過ごすこととなる。

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