小説『ワンネス oneness』

第6話『未来の預言者』

　人類の右脳間に存在する相互通信のネットワーク、ワンネス（O）・ブレイン（B）・ネットワーク（N）が発見され、他者と右脳を接続する行為はブレイン（B）・シェア（S）と呼ばれた。2051年現在、元々しがない占い師に過ぎなかった柳（リーウ）・天佑（チンヨウ）はあれよあれよとBS数を伸ばし今や1億BS、その圧倒的なフォロワーの潜在意識を読み取ることで現代の預言者としての地位を確立していた。

　「こんばんは皆さん、柳（リーウ）・天佑（チンヨウ）です。今日は皆さんに重大な警告がございます。これからそう遠くない未来、この世界を揺るがす大事件が起こるでしょう。それは現代の神、OBNが私に教えてくれた啓示です。

　まだ具体的なことは見えてきません。ただ、私達は今やOBNの奴隷、神の奴隷なのです。最早OBN無しに私達は生きていくことは不可能です。OBNに依存しきって生きているのです。さて、そんな私達にOBNが手のひらを返すことはあるのでしょうか？神が私達を見放すことはあるのでしょうか？

　それには私達ひとりひとりの心がけが大事なのです。ひとりひとりの思いが集まって90億の思いとなり、それが今の世界を動かしているのです。ひとりだって欠けてはならないのです。皆の思いを一つにすることで、『ワンネス』となることでこの世界は救われるのです。さぁ、皆さん祈りましょう。OBNに、神に平和の祈りを捧げるのです」

　「まーた警告かよ、これで何回目だ？(笑)」

　「うーん、200回目くらい？(笑)」

　「来る来る詐欺もここまで来ると伝統芸だな(笑)」

　「まぁそれでお金儲けてるんだから続けるしか無いんだよ、この人は(笑)」

　「OBNに依存してることに対する不安なんてみんなずっと抱えながら生きてるんだから、そんなもんを読み取ったってそりゃあそうでしょうね、で終わりだよ」

　「だな、間違いない」

　「しかし、これから起こる大事件って何なんだろうな？」

　「うーん、例えば集団自殺が起こるとか？」

　「そんなもんこの柳（リーウ）さんがフォロワーを洗脳すりゃ一発じゃね―か。それが起こせないってことはOBNの性能も所詮その程度、ってことだよ」

　「確かに、出来るならとっくにやってるわな」

　「だろ？」

　「じゃあやっぱり大事件なんて起きないんだな、心配して損したわ(笑)」

　「ほんと、現代の狼少年ここにあり、だな(笑)」