第3話『ブレイン・シェア・リング』

 「 新郎 淳平さん、あなたは加代さんを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 「はい、誓います!」

 「 新婦 加代さん、あなたは淳平さんを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 「はい、誓います」

 「それでは、これよりブレインBシェアSリングRの交換を行います」


 人類の右脳間に存在する相互通信のネットワーク、ワンネスOブレインBネットワークNが発見され、他者と右脳を接続する行為はブレインBシェアSと呼ばれた。そして、結婚指輪はBSRと呼ばれるものが大流行した。このBSRを指にはめると夫婦の右脳は常時接続されるようになり、2人の潜在意識が統合されることで夫婦の結婚生活が長続きする…と言われていた。


 「淳平。もうとっくにみんな外してるし、流石に私達もBSR外して良い頃だと思うの」

 「そうだな。惰性でずっと着けて来たけど、もう外しても良いのかもな」


 高橋淳平と加代は2028年に結婚し、2051年の現在まで23年間BSRを着け続けてきた。現在、淳平は48才、加代は45才。子供2人は成人し、長男は大学に進学し一人暮らし、長女は結婚し家庭を持っている。長女夫婦がBSRを着けていないことからもBSRがすっかり廃れてしまったことが良く分かる。


 ではなぜ廃れたのか。良く言われている説が、夫婦の潜在意識が統合されることで夫婦の価値観が全く同じものになってしまい、お互いに対する興味が無くなってしまうからではないか、というもの。結婚生活をいつまでも新鮮なものにするためには、お互いのことをもっとよく知りたいという好奇心、これを維持することが大事なのではないかということだ。淳平と加代はBSRを外してまた新鮮な結婚生活を送ることが出来るのであろうか。

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