第1章『世界観構築編』

第2話『ブレイン・シェア』

 「本日は第64期竜王戦七番勝負の第4局が札幌の奥座敷、定山渓ホテルクラシックの鹿の間にて行われております。解説は吉田裕哉八段と森有希女流二段でお送りしています。吉田さん、ここまで片山将太八冠が3連勝です。圧倒的ですね」


 「そうですね、森さん。やはり片山八冠の人気は凄まじいですからね。本日の対局も片山八冠が7,200万ブレインBシェアSなのに対して挑戦者の重松康彦九段が1,900万BSですから、重松九段にはかなり不利な状況ですね。ちなみに、私は挑戦者の重松九段に是非とも頑張って頂きたいので重松九段にBSしてますが、森さんはどうですか?」


 「私は片山八冠の大ファンなので勿論片山八冠にBSしています!(笑)。まぁ、それは置いておいて、現在73手目。AIの形勢判断によると片山八冠が63%に対して重松九段が37%ですから、重松九段少し追い込まれていますね。AIの最善手は同銀ですが、重松九段は現在1時間の長考に入っています」


 人類の右脳間に存在する相互通信のネットワーク、ワンネスOブレインBネットワークNが発見され、他者と右脳を接続する行為はブレインBシェアSと呼ばれた。何個の右脳と接続しているかの単位もBSで表され、2051年の将棋界は如何に多くの観客にBSしてもらうかが最重要事項となっている。最早将棋の対局は一対一ではなく、7,200万人対1,900万人の団体戦と化しているのである。

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