第48話 5章・一年生・長期休暇編_048_開戦
■■■■■■■■■■
5章・一年生・長期休暇編_048_開戦
■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■
5章・一年生・長期休暇編_048_開戦
■■■■■■■■■■
フウコにデューク様の書状を持たせ、アキロス砦の上空から落下させる。こちらは敵を各個撃破して救援するから、それまでこらえろという内容らしい。
アキロス砦に近づいた帝国兵は火竜剣の餌食になるから、積極的に攻撃されないだろう。だから数日くらいならなんとかなるはずだと思う。
こちらは朝早くから忙しい。
先ずは一番近くの部隊に襲いかかった。その部隊から伝令が出たけど、これはフウコの破壊音で潰した。
帝国部隊二百対リーバンス子爵軍二千。帝国部隊を殲滅するのに、二時間もかからなかった。
その足で次の部隊を潰しに行った。そこでも伝令が出たけど、一度に五人が別々の方向に出たから、全部潰すのは無理だった。
これで他の帝国部隊に、こちらが攻めかかっていることが分かってしまっただろう。
元々定時連絡をし合っていたから、伝令を全部倒したとしても異変が起きているくらいは伝わる。それを考えれば問題ない。
「ここからが本当の戦いだ。敵の動きはどうなっているのか」
デューク様も伝令を取り逃がしたことについては、大して気にしていないようだ。
デューク様はどっしり構えて、腕を組みながら目を閉じて報告を待つ。すぐそこでは殺し合いが行われているのに、落ちついたものだね。
「ランドー。落ちつきなさい」
オリビアちゃんが僕の手の上に手を置いた。
「お、落ちついているよ」
「そうは見えないわよ。ふふふ」
僕だって帝国軍との戦いを経験しているんだ。こんなことで……やっぱり落ちつかないや。戦争なんてしたくない。でも帝国が攻めて来る以上、僕たちは自身や家族を守るために戦いを避けて通ることはできない。
「はいはい。で、敵の動きはどうなの?」
「ちょっと待ってね……まだ大きな動きはないね」
現在戦闘している場所から近い場所だと、西と北の二方向に帝国の部隊が展開している。
「あ、ちょっと待って……西の部隊に動きが出たよ」
西側の部隊が慌ただしくなった。
「北側の部隊は?」
「今のところ動きは見えないね」
僕たちの予想に反して、西側の敵部隊が先に動き出した。
朝一で確認した時の西側の敵部隊の数はおよそ二百人。
こちらへと移動が始まった。
「ふっ。思ったよりも時間がかかったな」
伝令が逃げてからもう二十分ほどが経過している。森の中だから馬の機動力が多少削がれるとはいえ、僕も遅いと思った。
西側の部隊がどんなに急いでも救援までに一時間半はかかるだろう。距離にして六から七キロメートルくらいか。森の中の移動は慣れてないと、時間がかかるからね。
「ベリングス部隊に伝令! 敵が動いた。予定通りやり過ごして後背を突けとな」
「はっ」
騎士のベリングス様はすでに五百の兵を指揮して、西側の部隊を待ち伏せできる位置に潜んでいる。
ベリングス様は五十代で赤毛に白髪が混ざった騎士で、体はそれほど大きくない。大きくないといっても百八十センチメートル近くあって、僕よりもはるかに大きいんだけどね。あまり喋らない物静かな方で、それだけに怒った際は怖そうな人なんだ。
敵部隊は二百。そして味方は五百。しかも待ち伏せしているから、負けることはないと思う。
デューク様は地図上の敵部隊の石をベリングス部隊のほうへ移動させた。
西側の敵部隊が動き出してから十分も経たずに、今度は北側の敵部隊に動きが見えた。
「北側も動きました」
「うむ」
デューク様が頷かれ、新たな指令を出す。
「デリウエアの部隊へ伝令だ。敵をやり過ごして後背を突けとな」
伝令が出て行くのを見送る。
デリウエア様も騎士で、まだ三十くらいの人だ。でも五百人の部隊を任されていて、リーバンス子爵軍の中では出世頭の士族だね。
容姿は藍色の髪を短く刈り揃えていて、ザ・軍人といったゴツイ風貌かな。背も二メートル近いから、凄い威圧感がある人なんだ。
北側の敵部隊は三百人だから、西側から迫る敵部隊よりは多い。それでもデリウエア様のあの顔面圧力ならきっと大丈夫だ。顔面の威圧で勝てそうなんだよね、デリウエア様。
オリビアちゃんを見ると、うずうずしているようだ。彼女も脳筋だから、戦いたくて仕方がないんだろうね。でもダメだからね。僕と一緒にデューク様の目の届くところにいるって約束なんだからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます