第22話 3章・学校入学編_022_庇護

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 3章・学校入学編_022_庇護

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 僕がリューベニックに行くのは決定として、その目的だよね。

 今のところ第一候補は魔法学校、第二候補が……これは却下で、第三候補はハンターかな? 第四候補は生産職の見習いとして職人に弟子入り。こんなところかな。第二候補が却下なのに、後ろ髪を引かれて外せないんだよね。


 まあ、順当に第一候補かな。ただ魔法学校はレベル二の加護がある人が行くような場所で、僕のようなレベル一の加護の詰め合わせは微妙なんだよね。

 でも魔道具と言われる皇龍火炎剣のようなアイテムの研究をしたいと思っているから、魔法学校に入学するのはいいかもしれない。


 そんな僕は領主屋敷で、領主様と面会している。僕が進んで面会を求めたわけじゃないんだ、呼ばれたから仕方なくだよ。


「ランドー君のおかげで、当家は陞爵が叶った。感謝しているぞ」

「陞爵ですか……それはおめでとうございます。でも僕のおかげというのは……?」

 そんな心当たりがないんだけど?


「そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔しないの。ランドーが創った武器のおかげで、パパや騎士団が戦場で獅子奮迅の働きをしたんだよ」

 オリビアちゃんが教えてくれて納得した。皇龍火炎剣のことだね。


「皇龍火炎剣の炎が帝国兵共を飲み込む様は圧巻であった。我が騎士たちに配備した火竜剣も良かったぞ」

 火竜剣というのは皇龍火炎剣の劣化版のようなもので、火力を抑えた剣だね。その分消費魔力も抑えられて、連射が可能なものになっている。

 領主様はリーバンス男爵家の当主で、その下には騎士様が十五人いて兵士さんたちの陣頭指揮を執っている。


 僕が男爵家の内情である騎士様が十五人なのを知っているのは、領主様が十五本の火竜剣を注文してきたからだね。僕から火竜剣を買い取った領主様は、その十五人の騎士様に火竜剣を与えたというわけ。騎士様たちが試し撃ちした場に、僕も立ち会ったから間違いない。

 皇龍火炎剣程の火力はないけど、それでも三分の一くらいの火力はある。そんな剣を与えられた騎士様たちは、泣いて喜んだそうだよ。


 領主様や騎士様たちは戦場で炎祭りをしたそうで、その結果帝国軍は多大な被害を出して敗北したらしい。ヒャッハーしちゃったんだね、領主様たち。

 で、その戦功から男爵だった領主様は、子爵に陞爵になって領地が加増されたとオリビアちゃんが自慢げに教えてくれた。


「そこでランドー君にお礼をしたくてね」

「代金はもらっているのですから、これ以上はもらえません」

「そう言わず受け取ってもらいたい」

 皇龍火炎剣一本とラーベン子爵を捕縛した際の褒美でひと財産築き、さらに火竜剣十五本の代金まであるんだからお金には困ってないんだよね。


 帝国に思うところがある僕は、火竜剣を創った。シャナン姉さんの子供たち(僕にとっては甥と姪)を殺したことは、忘れたくても忘れないことだ。

 領主様が帝国軍と戦うために出征すると聞き、量産しておいて火竜剣を献上した。僕は帝国への意趣返しのために創ったものだから、代金のことは考えずに献上したんだ。でも領主様は多くの代金を払ってくれた。それは僕がもらうべき正当な報酬だとね。領主様は貴族の世界で騙されないか心配になるくらいいい人だよ。だから領民に慕われているんだろうけどね。


 僕がどれだけ断っても領主様はどうしても言うから、仕方なく受け取ることにした。

「褒美は当家の庇護だ」

「え?」

「君は自分がどれだけ稀有な人材か分かっているかね?」

「………」

 どういうこと?


「皇龍火炎剣はもちろんのこと、火竜剣でも戦場を支配できる程の威力がある。加護レベル一の者がレベル二の者を倒せるほどにな。つまり君を手に入れた者は、この国さえも手に入れられるかもしれぬ」

「つまりランドーは多くの貴族や組織に狙われるかもしれないのよ。それをパパが庇護をするというの。悪い話じゃないと思うわよ」

 話が大きすぎてついていけません。


「火竜剣をどこから手に入れたのかと、色々と探りを入れてきている者もすでにいる。私の庇護があれば、ある程度のことはなんとかなると思うよ」

 すでに面倒な話になっているんだね。でも庇護といっても、どういう感じになるの? まさか軟禁されないよね?


「あの……庇護というのは、具体的にどのようなものでしょうか?」

「我が家臣団に名を連ねてもらう。もちろん名目上だ。我が家臣に手を出すということは、それすなわち当家への敵対行為となる。ゆえに簡単には手が出せなくなるというわけだ。先の戦で名を大きく上げた当家と敵対しようとする家は、そうそういないだろう。王家でもそれなりに配慮するはずだ。それほど皇龍火炎剣や火竜剣の威力は素晴らしいものだったのだ」

 家臣になるってこと? でも家臣になっても、拉致されそうなんだけど?

 てかさ、僕が皇龍火炎剣や火竜剣を創ったのもいけないけど、それを戦場で使った領主様だっていけないわけで……。領主様は僕を無償で庇護する責任があるんじゃないかな? 無償は無理でも、優先事項として庇護してほしいんだけど……。それで家臣という話なんだよね。うーん、家臣か~、悪くはないけどさー……。

 しかし王家でも配慮するのか……。領主様たち、どれだけはっちゃけたの?


「家臣が嫌なら、このオリビアの婚約者ではどうかな?」

「え!?」

「パパッ!?」

「ははは。オリビアがランドー君のところに入り浸っているのは、我が領地の者であれば誰でも知っていることだ。ランドー君がオリビアに手を付けていないのは理解しているが、誰もがそう思っているとは限らん。そういった理由から今さらどこかの貴族に嫁に出すことは叶わんし、だからといってどこかの老人の後妻というのは不憫でならない。生涯独身というのも親として悲しい。そこでランドー君にオリビアを娶ってもらえば、親としては安心できるわけだ」

 貴族の世界は、そんなちょっとした風聞で縁談がなくなる世界なんだね……。そういうことはまったく考えてなかったけど、そんなことを言われると凄く責任を感じてしまうよ。でもさ、こっちが領主様の本命のように思うのは、僕だけなのかな?

 オリビアちゃんと結婚か……。嫌じゃない。むしろご褒美かな。性格がイケイケなのはマイナスだけど、それを含めても嫌いじゃない。


「ランドー君はオリビアが嫌いかね?」

「いえ、そういうことは……」

 もし嫌いと言ったらどうなるのかな? 死刑? それはないよね? 嫌いじゃないからいいけどさ。


「オリビアもランドー君のことが好きなんだろ?」

「うーん。どうかなー?」

 えー、そこは「はい」って頷くところじゃないの!

 その気になっていた僕がバカみたいじゃん!



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