第23話 3章・学校入学編_023_急展開

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 3章・学校入学編_023_急展開

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 領主様の庇護の件は、保留中。まだ十一歳だし、そんな若年の僕があの皇龍火炎剣を創ったと思われることはないだろう。多分……希望的観測として……。

 魔法学校のほうは、入学すると決めた。今は受験勉強をしているところなんだけど、魔法の歴史や王国史で少し苦戦している。

 領主様の推薦をもらえるから入試で酷い成績を取らない限り入学はできるらしいけど、僕にもプライドというものがある。裏口入学のようなことはしたくない。入学するなら実力でしたいわけですね。


 今日のオリビアちゃんは刀を振っておらず、僕と一緒に勉強している。彼女は騎士学校に入学するため、入試を受ける。僕と同じように計算は問題ないけど、王国史や戦術に関する知識はゼロからのスタートだからね。今まで毎日刀を振り回していただけあって、時々ショートを起こして頭から煙を出している(笑)


「お嬢様。休憩にしましょう」

 シャナン姉さんがお茶を三人分淹れてくれる。

 僕、オリビアちゃん、そしてジーモン兄さんの分だ。ジーモン兄さんの加護は書物神の加護だから、王国史もしっかり頭に入っている。もしかしたらジーモン兄さんは知識チートじゃないのかな……。


「ジーモン。オリビア様の勉強はどうかしら?」

「……正直に言うと、酷いね。僕なら不合格にすると思う」

 ジーモン兄さんの正直な評価に、オリビアちゃんはショックを受けて白目になっている。なんか燃え尽きた感を出しているけど、日頃刀ばかり振り回しているからだよ。


「ランドーのほうはどう?」

「まあまあかな。魔法史と王国史がやや弱いけど、十分に合格圏内だと思うよ」

 内心でガッツポーズ! オリビアちゃんは裏口入学で入れるから大丈夫だよ。


「ちょっと、ランドー! なんで肩をポンポンするわけ?」

「慰めていただけだよ」

「ぐぬぬぬ……私、歴史は苦手なのよ!」

 だからってジーモン兄さんが作った小テストで零点はないよね。


 僕も前世で歴史は苦手な部類だった。とはいえ、丸憶えすればいいのだから、何とかなる。問題は丸憶えするだけの時間があるかだけど、今は十月で入試は十一月だから微妙なんだよね。


「ところでランドー」

「ん、何? ジーモン兄さん」

「お前はオリビア様の従者になるのか? それとも婚約者か?」

「え……」

 それを今聞く? しかも当事者のオリビアちゃんがいる場所で?


「従者になるつもりはないよ」

「じゃあ、婚約者か?」

「それはオリビアちゃんの気持ちもあるから、僕がどうこう言っても始まらないでしょう」

「あら、私はいいわよ」

「え?」

 何を言っているの? 領主様に好きか聞かれて、どうかなーって言っていたじゃない!


「ランドーの万能性を考えると、相手として申し分ないわ。あとは地位があれば、言うことないのよねー」

「えぇぇぇ……」

 僕の存在意義は万能性!? それに地位って……。元CAさんは玉の輿を狙っているんだね!


「でも地位は私が成り上がってみせるから、大して重要じゃないわね。ランドーなら家を守っていてくれそうだし、うん、全然いいよ」

 上昇志向というよりは、好き勝手やろうとしているんだよね? 下手にオリビアちゃんを縛ろうとするような人より、僕のほうが自由にできる。そういう意味だよね!


「それなら決まりだね。姉さん。領主様にそう報告しておいて」

「分かったわ、ジーモン」

「え、何が決まりなの?」

「オリビア様がランドーでいいと言っているんだ。それを断るなんてことはできないぞ。それにランドーは責任を取らないといけないだろ」

「うっ……」

 僕の家に入り浸ったという風聞に対して責任を取らないといけないと、ジーモン兄さんは冷めた目で圧力をかけてくる。シャナン姉さんも鋭い視線だ。二人とも怖いよ!


「オリビア様をお嫁さんにできるんだから、喜びなさい。ランドー」

「ね、姉さんまで……」

 二人して堀を埋めいく……。この二人、凄く真面目な顔をして言うから、拒否しづらいんだよ。

 僕も別にオリビアちゃんが嫌と思っているわけでもない。貴族のオリビアちゃんの婚約者になるということに、腰が引けているだけなんだ。


 この話はすぐに領主様に伝わり、僕は呼び出された。

「いやー、よかったよ。これでオリビアがいかず後家にならずに済んだ」

 貴族の婚約者は、早いと赤ん坊の時に決まる。そこまで早いのは稀だけど、十歳にもなると決まっているらしい。オリビアちゃんは僕との噂があったせいか、婚約者が決まってなかった。領主様もそれが気がかりだったみたい。

 婚約者が決まらなかったのは、オリビアちゃんの粗暴な性格もあるような……。


「オリビア様の相手として、誠心誠意努力します」

「そう肩肘はらず、気楽に今まで通りでいいんだよ」

「ありがとうございます」

「でも、当家の家臣に名を連ねてもらうからね」

 それはしょうがない。ただの農民の息子に、子爵令嬢であるオリビアちゃんはやれないよね。


「そうだな……私の相談役。しばらくはそれでいこうか」

「相談役ですか?」

「なんの仕事も権限もないが、私へ面会を求めた際は優先して会えるくらいのものだ」

 それでも僕が子爵家の家臣か。そうすると……士族ってことになるのかな。


 士族というのは貴族の家臣の中でも重臣の部類で、平民より上で貴族未満という地位になる。騎士の称号を持っている人も士族になるんだ。


「君が正式に魔法士の称号を得たら、当家の魔法士として仕えてもらいたい」

 そうなるよね。オリビアちゃんと結婚するのなら、子爵家のために働くことになるよね。


「もちろん、これは強制ではない。君が他に仕えたいと思った人物がいたら、それを優先してくれて構わないよ。それに誰にも仕えないという判断もできる。その場合は我が領地に住んでもらわないと、庇護を与えるのができないけどね」

 それでいいのですか? 選択肢があることは嬉しいです。



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