第5話 1章・転生編_005_領主の娘
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1章・転生編_005_領主の娘
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桜色の髪をした活発で自己主張の強い子―――オリビアちゃんと知り合った僕は、創造神の加護レベル一でできることを試そうとしてる。
その横では木刀を振り回すオリビアちゃんの姿。彼女、なぜか僕の家の庭で剣の稽古を始めた。
もしかして寂しいのかな? 友達いないっぽいから、僕が友達になってあげよう。
「はーっていっ! せいっ! やぁぁぁっ!」
集中して考えられないんですけど……。
「やーっ! はっ! なんとーっ!」
……騒々しい子だね、まったく。
「ほっ! とーっ! うりゃーっ!」
集中、集中。
丸太に座って、創造神の加護を発動させてみる。
努力次第で物質を創造できる加護だから、僕は金を創造しようと思った。
お金持ちになるなら金や銀を創造するのが一番だよね!
「………」
うんともすんとも言いませんねぇ。
レベル一の加護では金を創造することができないのかな? それとも熟練度が足りなくて反応しないのかな。
何度も試したけど、まったく反応する気配がない。
こういうのはイメージが大事だと
キンキラに輝く金の延べ棒。九九九・九と数字で記載された一キロの金の延べ棒! 僕の求めに応じ、ここに具現化しろ!
「………」
はい。何も起こりませんでした。
一日目から簡単に金が出せたら誰も苦労しないよね。こういうのは地道に続けるしかないんだ。
あと、最初から金はハードルを上げ過ぎたと思う。最初は鉄くらいで試してみよう。
「さっきからうーんうーんと唸って何をしているの? ウンコならしてきなよ」
「女の子がウンコなんて言ってはいけません!」
オリビアちゃんは美少女なんだからね!
「そんなの気にしたらダメだよ。ほら、してきなさい」
「そういうのじゃないんだ。どうやったら加護を使い熟せるか考えていたんだよ」
「なーんだ、そうなんだ。そんなのとにかくやってみるしかないんじゃないの? 剣だって地道な稽古の積み重ねなんだからさ」
分かっていたことを改めて理解させられた気分だ。
彼女はレベル三の加護に胡坐をかかず、こうやって努力している。レベル一の僕はもっと努力しなければ、加護を使い熟すことなんてできないよね!
「オリビアちゃん。ありがとう。僕がんばるよ」
「うん。努力は裏切らないって言うし、がんばれー!」
彼女の元気が僕に入ってくる感じがする。こういう子のそばにいるだけで、前に進めそうだと思える。
「あらあら騒々しいと思ったら、もう彼女を作ったの?」
母さんが家から出て来て、下世話な笑みを浮かべている。
「母さん、この子はオリビアちゃんだよ。今日友達になったんだ」
「オリビアです! ランドーの友達になりました!」
元気よく挨拶するオリビアちゃんに、母さんは元気がいいのはいいことだよと言う。
「ランドーはボーっとしたところがあるから、面倒をかけると思うけどよろしくね」
「はい! しっかり面倒をみます!」
僕は面倒をかけたり、面倒をみられたりする子供じゃないと思うんですが……。
「今日はもうすぐ日が暮れるから、お家にお帰りなさい」
もうそんな時間か。集中していたら時間の流れを忘れていたよ。
「ランドー。オリビアちゃんを送っていってあげなさい」
「はーい」
「あら、送ってくれるの?」
「うん。行こうか」
歩き出すけど、オリビアちゃんは動かない。どうしたの?
すーっと手を出してくる。
え、これって手を繋ぐってこと? マジかー。こんな美少女と手を繋ぐなんて、ハードル高いよー。
僕は恐る恐る彼女の手をとった。
やっぱりマメのあるゴツゴツした手だ。あれだけ木刀を振っていたら、こうなるのも仕方ないか。
彼女は剣神の加護レベル三を授かっているのだから、木刀を振るなとは言えないよね。それにがんばる人ってのは、男でも女でも応援したくなる。
「ついたわ。ここが私の家よ」
「……ここって領主様の屋敷だよね?」
「うん。パパが領主をしているよ」
「えぇぇ……」
ヤバい。不敬罪だと切り捨てられる!
「あ、あの。オリビア様……」
「はぁ? なんで『様』なのよ」
「だって、貴族様の」
「いいのいいの。偉いのはパパであって、私じゃないんだから」
「本当にいいの?」
「モチのロンよ!」
オリビアちゃんはいい笑みを返してくれる。嫌みのない笑みだ。見惚れてしまうよ。
「それじゃあ、また明日ね!」
「あ、うん。またね」
手を振り彼女が門の中に駆けて入っていくのを見送る。元気な子だ。
二人の門番が微笑ましいものを見る目をしている。恥ずかしい。
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