第4話 1章・転生編_004_出会い

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 1章・転生編_004_出会い

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 ドナドナドーナードーナー♪

 ランドーをつーれーてー♪


 水汲みと薪拾い朝のルーティンワークを終えた僕は、母さんに手を引かれて名主さんのところに向かっているところだよ。

 創造神の加護というのはあまり聞かないから、念のために名主さんに連絡しておく感じらしい。


 名主さんの家だけある立派な門をくぐって、玄関で名主さんを呼ぶ。

 出て来たのは六十くらいのお爺ちゃん。この白髪の人が名主のアストンさんだ。


「この子が加護を授かったんだけどね、レベル一なんだけど創造神の加護というものなんだよ。あまり聞かない加護だから、一応ね」

「ほう、創造神とな? たしかに聞いたことのない加護じゃな。どれ、ステータスボードを見せてくれるかの」

 名主さんにステータスボードを見せると、なるほどのーとのんびりした口調が出た。


「この子の加護は領主様に報告しておくよ。まあレベル一だから、なんと言ったかの……お前さんの他の息子……えーと」

 お爺ちゃんは物忘れが酷いようです。


「アベルですか」

「おお、そうじゃアベルじゃ」

 ぽんと手を打つお爺ちゃんの所作が面白い。


「あの子のようにレベル二の加護ではないからのう、報告だけで終わるじゃろうて」

 どこかに軟禁されるかと思っていたから、そう聞いて僕はホッと胸を撫で下ろした。

 考えたらうちには斧神の加護レベル二を持っているアベル兄さんがいたんだ。その兄さんが自由なのに、レベル一の僕がどうにかされるわけがないよね。


 よし、元気出て来た!

 レベル一の加護の多くは努力すれば一人前や一流になれるみたいだから、がんばって努力しようかな。




「さー、やるぞ! この生活から抜け出すために、僕はやるんだ!」

 都会にはちゃんとしたトイレがあるだろうか? 風呂も入りたい。あっても貴族や金持ちの家だけかもしれないけど、それなら金持ちになればいいんだ。


 資本も何もない僕が金儲けをするためには手に職をつけるか、腕一本で成り上がるしかない。

 そのどちらもと思わないわけではないが、二兎を追う者は一兎をも得ずというからね。とりあえずは生産をがんばってみようと思う。


 問題はどの加護を伸ばすかだよね。

 なにせ三百五十種類もの加護があるのだ。ちゃんと数えたわけじゃないけど、生産系だけでも百くらいの加護がある。

 鍛冶師は憧れるけど、金儲けができるかと聞かれると返答に困る。レベル一では一流になれるかどうかのギリギリだから、鍛冶師では微妙だ。

 そう考えると大工も石工も何もかもが微妙だよね。


「う~ん……何がいいんだ……?」

 ちょっと待てよ。僕には珍しい創造神の加護があるじゃないか。それなら創造神の加護でできることを突き詰めてみればいいんじゃないだろうか。

 創造神というからには、神の中でもかなり上位の存在のはずだ。その創造神の加護を突き詰めれば、他の神の加護と差別化できる気がする!


「よし、決まった!」

「何が決まったの?」

「うわっ!?」

 急に話しかけられて、僕は座っていた丸太からずり落ちそうになった。

 振り返ると、見慣れぬ少女が立っていた。

 桜色の髪に黄金の瞳の可愛らしい少女だ。年齢は僕とあまり変わらないかな?

 初めて見る顔だ。といっても僕が一人歩きを許されたのは最近のことだから、小さな村の中でも顔見知りはいない。


「あの……誰?」

「私はオリビアよ。よろしくね」

 オリビアっていうんだ。可愛い名前だね。


「僕はランドー。こちらこそよろしくね」

 手を差し出すと、彼女はその手を取った。柔らか……くない手だ。これはマメ? こんな可愛い女の子なのに手にマメができてゴツゴツしてるんですけど!?


「それで、ランドーは何をしているの?」

「あ、うん。今日加護をもらったから、どうしようか迷っていたんだ」

 僕がマメのことを考えているのを気づいているっぽいけど、マイペースに話を進めるね、この子。


「ランドーも加護をもらったのね! 私もちょっと前にもらったの!」

「そうなの? それじゃあオリビアちゃんも五歳なんだ」

「お、オリビアちゃん!?」

「え? 名前、間違っちゃった?」

 おかしいな、オリビアって聞こえたんだけど。


「ううん。オリビアで合っているわ。今までオリビアちゃんと呼ばれたことないからちょっとドキッとしただけ」

 五歳の女の子ならちゃんづけしても不思議はないと思うんだけど……。ああ、彼女も僕と同じで今まで外に出してもらえなかったんだ。家族なら呼び捨てだものね。


「ちゃんづけじゃダメかな?」

「いいよ! うん、オリビアちゃんでいいわ!」

 頬を染めてなんか嬉しそう。

 そうか、女の子はちゃんづけで呼ばれると嬉しいのか。これは脳内メモリにメモっておかなければ!


「ねえ、ランドーの加護は何?」

「加護は簡単に教えたらいけないと母さんが言っていたから、教えてあげられないよ」

 さっき別れたばかりの母さんにそう言われたんだ。さすがにまだ一時間も経ってないのに忘れるなんてありえないものね。


「えー、いいじゃない。私の加護も教えてあげるからさ」

 グイグイくるね。田舎の女の子は積極的? そういえば、女の子のほうが成長が早くておしゃまな子が多いって、前世で聞いたことある。こっちの世界でもそういう感じなのかな。


「うーん……どうしようかな……母さんに怒られるし……」

「お母さんが怖くて子供なんてやってられないわよ! だから教えてよ」

 母さんは普通に怖いんだよ。


「じゃあ、私が先に言うね。そしたら教えてくれるでしょ」

「母さんに聞いてからじゃ……」

「ダメ!」

「えぇぇ……」

 まさかの選択肢なし!?


「それじゃあ、言うわね! 私は剣神の加護レベル三よ!」

 は? レベル三? マジ?


「えへへへ。どう、すごいでしょ?」

 あー、この子、レベル三の加護を自慢したかったんだね。うん、悟った。

 しかし剣神の加護レベル三とは、凄いね。僕なんか全部レベル一だもんな~。


「私は言ったんだから、ランドーも言いなさいよ」

「う、うん。分かったよ……」

 無理やりとはいえ、聞いてしまったから僕が教えないのは不公平だよね。


「僕の加護はね……」

「加護は?」

「内緒にしてくれる? 誰かに教えたら母さんに怒られるんだ」

 僕が加護を言うと思っていたらしく、拍子抜けした感じでオリビアがずっこけた。


「ランドーの加護を言いふらさないわよ。まったく、煮え切らないわねー。早く言いなさい」

「は、はい」

 凄い迫力だよ、この子。

 本当に同じ五歳なの?


「僕の加護はね。創造神の加護レベル一だよ」

「はい? 創造神? マジで?」

「レベル一だけどね」

「凄いじゃない! 創造神っていえば、神々の頂点だよ。その加護を持っているなんて、ランドー凄すぎよ!」

「だからレベル一なんだって」

「レベル一でも凄いことなんだからね!」

 自分のことのように喜んでいる? 面白い子だね。



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