第4話 好きという気持ち

「あのさ……」

蒼太そうたくんがちいさなこえった。


「どうしたの?」

「なんか、おこので、その

元気げんきがなくなってたようながして……」


理由りゆういてもいいか?」

蒼太そうたくんには、はなしても大丈夫だいじょうぶかな。

そうおもってわたしはった。

「……わたしね、入学式にゅうがくしき春翔はるとくんに告白こくはくしたの」


「でもられちゃった」

「わたしのことはきだけど、それは親愛しんあいっていう気持きもちで、

こいじゃないんだって」

「わたしは、ずっと春翔はるとくんにこいしてたけど、

春翔はるとくんはわたしのことをいもうとのようにしかおもっていなかったの」


はなすぎたかな。


となりると、蒼太そうたくんはすごくつらそうなかおをしてた。

「どうして蒼太そうたくんが、そんなかおするの?」

「だって、つらかったんだろ?

入学式にゅうがくしきもずっといて……」


ずっといていた、といかけて、蒼太そうたくんはあわててくちふさぐ。


やっぱりづいてたんだね。

わたしのなみだ花粉かふんなんかじゃないってこと。

それで、あんなふうにかばってくれたんだね。


「あのときはありがとう。

話題わだい、そらしてくれて」

「それは、おれがそうしたかったから」

見返みかえりをもとめずにひとやさしくできる蒼太そうたくんは、

本当ほんとうにすごい。

尊敬そんけいする。


でも、そんな蒼太そうたくんがになってしまうのは、

おなじように見返みかえりをもとめずにひとやさしくすることができる、

春翔はるとくんをきになったからだとおもう。



まって蒼太そうたくんがった。


おれさ」


夜宮よるみやのことがきだよ」


じっとぐわたしを蒼太そうたくん。

なにわなきゃ、そうおもうけど言葉ことばてこない。


おれじゃダメか?」


おれじゃ、あのひとわりにはなれないか?」


なんてったらいいのかわからなくて、

なんだかきゅうこわくなって

わたしはそのからげだした。



翌日よくじつ蒼太そうたくんとどうはなしたらいいのかわからなくて、

やす時間じかんたび教室きょうしつからした。

でも放課後ほうかご月乃つきのちゃんと一緒いっしょかえろうとすると

蒼太そうたくんにつかまってしまう。



のぞみ、ちょっと夜宮よるみやようがあるんだけど……」

「あぁ~、わかった。

うち、さきかえるわ」

「いや、って。すぐわるから。

かさかえすだけだから!」

そうって蒼太そうたくんは、

わたしのたたがさかえしてくれた。


かさのことわすれてた。


風邪かぜいてないか?」

かさをわたしに手渡てわたしながら蒼太そうたくんが心配しんぱいしてくれた。

「うん、平気へいき

蒼太そうたくんのぐなるのがこわくて、

視線しせんをそらさないと会話かいわができなかった。

「じゃ、おれかえるから」

早足はやあしかえ蒼太そうたくんの背中せなかは、

すこちいさくえた。


「ねぇ、星羅せいら

ちょっとみちしよっか」


月乃つきのちゃんはブランコとベンチしかないちいさな公園こうえん

わたしをれててくれた。

「ここ穴場あなばなんだよねー。

ひとがいなくて」

そういながら月乃つきのちゃんは、れた様子ようすでブランコをいでいる。

わたしはあしをつけたまま、ゆらゆらとれてみる。


なつかしいな。


むかし春翔はるとくんと……


そうおもしかけて、かんがえるのをめた。

むかしおもたび春翔はるとくんをきな記憶きおくがよみがえるから。



「ねぇ、朝日あさひ喧嘩けんかでもした?」

「……わたしがわるいの。

だまって、いえかえっちゃったから」

なにいやなことわれた?」

「……いやなことじゃないとおもう。

でもなんったらいいのか、わからなくて」


月乃つきのちゃんはブランコからりて、

わたしのまえにかがんだ。

「ねぇ、星羅せいら

もし、星羅せいら朝日あさひのこときらいになったんだったら、

うちが全力ぜんりょくであいつから星羅せいらまもってあげる」

「でもさ、きらいになったんじゃないなら、

ちゃんとはなさなきゃだめだよ」


「そろそろかえろっか」

月乃つきのちゃんはわたしのにぎる。

ともだちとつないでかえるのなんて、いつぶりだろう。

ちょっぴりずかしいけど、こころあたたかくなる。




いえかえって、シミュレーションした。

学校がっこう蒼太そうたくんにはなしかける。

してごめんね、ってあやまる。

それから……

それから、なんてえばいいんだろう?




蒼太そうたくんとはなせなくなって半年はんとし

どうすればいいかわかりません。

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