第2話 わたしに声をかけてくれる人

昨日きのう、わたしは月乃つきのちゃんからの質問しつもん曖昧あいまい返答へんとうをしちゃった。

ノリがわるいとおもわれたかな。

せっかくわたしのことをにかけてくれたのに、月乃つきのちゃんにわるいことをしたかな。

不安ふあんでいっぱいだった。


「おっはよー、星羅せいらちゃん」

月乃つきのちゃんは、昨日きのうおなじニコニコ笑顔えがおでわたしにはなしかけてくれた。

「おはよう、月乃つきのちゃん」

一見いっけんクールにえる月乃つきのちゃんだけど、

くしゃっとわらう姿すがたはとってもキュート。


こういう可愛かわいさがあったら、春翔はるとくんにきになってもらえたのかな。


失恋しつれん2

わたしは、まだ春翔はるとくんのことをわすれられない。


「おはよー」

人一倍ひといちばいおおきいこえで、クラスのみんなに挨拶あいさつをするする

「おっす、蒼太そうた

蒼太そうたおはよー」

入学にゅうがくにしてクラスの中心ちゅうしんにいる、朝日あさひ蒼太そうたくん。

わたしには、こういう社交性しゃこうせいりないから、

春翔はるとくんにられたのかな。

またまた色々いろいろかんがえてしまう。


「おはよ、夜宮よるみや

蒼太そうたくんはわたしのせきまでて、挨拶あいさつをしてくれた。

「おはよう、朝日あさひくん」

蒼太そうたでいいよ」

「……蒼太そうた、くん?」

「うん! なに?」

名前なまえばれてしろせてわら蒼太そうたくんは、すこおさなえた。


人懐ひとなつっこい可愛かわい笑顔えがお


むかし、わたしのいえ近所きんじょにいたワンちゃんにてるかも。


たしか、ポメラニアンの茶々ちゃちゃくん。

春翔はるとくんと一緒いっしょ茶々ちゃちゃくんの散歩さんぽをさせてもらったこともあったっけ。

なつかしいな。

たのしいおもがよみがえって、すこみがこぼれた。


蒼太そうたくんと月乃つきのちゃんは、かお見合みあわせてぽかんとしている。


「あ、わすれてた。おはよ。のぞみ

「おはよ、朝日あさひ。てっきり星羅せいらしかえてないんだとおもってたけど、

やっと、うちの存在そんざいにもづいてたんだねぇ」

ニヤニヤしながら、月乃つきのちゃんは蒼太そうたくんのうでをつつく。

「おまえなぁ~……」

蒼太そうたくんはかおにしてたけど、

どこかたのしそうな表情ひょうじょうかべていた。



失恋しつれんして1げつころには、

月乃つきのちゃんともすっかり仲良なかよくなっていた。


星羅せいら明日あした映画えいがかない?」

「いいね! なにる?」

いまやってるのは、アクションけいか、ホラーか、少女しょうじょ漫画まんが原作げんさく恋愛れんあい映画えいがかな。

どうしよう……」

「わたし、ホラー映画えいが苦手にがてだからそれ以外いがいがいいな」

「おっけ、じゃあアクション映画えいが恋愛れんあい映画えいがね。

うーん、うちはアクションがいいかなー。星羅せいらはどう?」

「それにしよっか」

「んじゃ、まり! 明日あしたの10駅前えきまえ集合しゅうごうね」


休日きゅうじつ月乃つきのちゃんとかけるのも、これで2

りのふくて、

すこ背伸せのびをしたくついてかける。


星羅せいら、もうかけるの?」

「うん。すこはやいけど、ゆっくりあるいてくよ」

「そう、いってらっしゃい。

あーそうそう、今日きょう午後ごごからあめるから、かさってってね」

「わかった。いってきます。おかあさん」



月乃つきのちゃんは、今日きょうどんなふくているのかな。

流行はやりのファッショ雑誌ざっしむようになったせいか、

すこしおしゃれに敏感びんかんになってきた。


このあいだは、七分袖しちぶそでのシャツワンピースをてたよね。

駅前えきまえいて、系統けいとうふくている人をさがすけど、

月乃つきのちゃんはつからない。

腕時計うでると、まだ945ふん

すこはやきすぎたかな……。


れないヒールのなかで、あしをモゾモゾさせながら、

月乃つきのちゃんをつ。


10ぷん

「おまたせ」

ボーイッシュながわたしにちかづいてきた。

帽子ぼうしかおかくれているけど、こえにはおぼえがある。


「つ、月乃つきのちゃん?」

月乃つきのちゃんは、以前いぜんていた清楚せいそ服装ふくそうとはってわり、

ボーイッシュでスポーティーな格好かっこうをしていた。

印象いんしょうちがっておどろいたけど、

月乃つきのちゃんには、こういうふくもすごくよく似合にあっている。


「おはよ、星羅せいら星羅せいら今日きょう可愛かわいいのてるね」

「あ、ありがと。

月乃つきのちゃんはボーイッシュで、なんかカッコいいね」

「えへ、まぁね。今日きょう映画えいがわせてコーデんでみたんだ」

そうって、月乃つきのちゃんはぐるっと1回転かいてんした。

たしかに映画えいがのポスターで主人公しゅじんこうている、ヒーロースーツのいろ配色はいしょくてる。


こういうコーディネートのたのしみかたもあるんだね。

ひとつ勉強べんきょうになったぁ。


「じゃ、こっか」

月乃つきのちゃんにわれて、わたしたちはあるす。

チケットをうと、月乃つきのちゃんが突然とつぜんちどままった。

「どうしたの?」

「んー? いや、ほら、あそこ」

そういながら、月乃つきのちゃんは、とある2ぐみゆびさす。

「あそこにいるの、うちのクラスのひとたちじゃない?」

たしかに、わたしたちとおなじクラスのおとこだ。

でもわたしは、名前なまえおぼえるのが苦手にがてで、1げつってもクラスのひと名前なまえおぼえきれていない。

「ほんとだね。でも、ごめん。

わたし名前なまえおぼえるの苦手にがてだからだれかわかんないや」

わせてごめん!というジェスチャーをる。

「あ、星羅せいらも!? うちもかおおぼえられても名前なまえ全然ぜんぜんで!」

どうやら月乃つきのちゃんもかれらの名前なまえがわからないみたい。

こえかけるのは、やめとこっか」

「そうだね」

そんなことをはなしていると、おとこたちがわたしたちにが付いた。

こちらにかって、っている。

名前なまえはわからないけど、なんとなくかえす。

そのなかのひとりが、こちらへかってる。


星羅せいら、あのひと名前なまえなんだっけ?」

名前なまえはわかんないけど、たしか自己紹介じこしょうかいねこを12ひきっているってってなかった?」

「そうそう! でもその印象いんしょうつよくて、名前なまえわすれたんだよね」

「わたしも……」


どうこのけようかなやんでいると、

「あれ、夜宮よるみや?」

あし蒼太そうたくんがやってきた。

蒼太そうた、くん? 蒼太そうたくんも映画えいがたの?」

「まぁな。のぞみ一緒いっしょなんだな」

星羅せいらとふたりで映画えいがたの。うらやましいでしょ?」

「それは、まぁ……否定ひていしないけどさ」



「あー、遅刻ちこくだぞ蒼太そうた

こちらへかってきたひとりが、蒼太そうたくんにこえをかける。

「わりぃ、まこと寝坊ねぼうした」


あー、まことくんか。

わたしと月乃つきのちゃんは、おもしたというかんじで、

わせてうなづいた。


「え、ふたりともなんでうなづいてんの?」

「いやいやいや、なんでもない! なんでもないから」

月乃つきのちゃんはそうったけど、

「もしかしておれ名前なまえわすれてたとかー?

ひどくね? ね、夜宮よるみやさん」

わたしたちがまことくんの名前なまえわすれていたことが、

バレてしまった。


「えぇっと……」

わたしもわすれてました、ごめんなさい。

でもそういうときずつけてしまうかもしれない。

わたしはモゴモゴとしてしまい、返事へんじができなかった。


「そううなって」

たすぶねしてくれたのは、蒼太そうたくんだった。

おれ最初さいしょまことのことねこ12ひきってるやつっておぼえてたから」

「まじかよ、ひでぇー。事実じじつだけどさー」

ひどい、といつつも、まことくんはケラケラとわらっていた。

こういうときは、ねこ印象いんしょうつよくて名前なまえわすれてたって、

フランクなかんじでえばよかったのかな。


なるほど。


1げつおなじクラスでごしてわかったこと。

蒼太そうたくんは、コミュニケーション能力のうりょくがものすごくたかい。

いつもみんなあかるるくはなしかけてて、いつも笑顔えがおだ。

すごいなぁ、とおもわず尊敬そんけいしてしまう。


だれかに尊敬そんけいされるようなだったら、

春翔はるとくんにこいしてもらえたのかな?


なんてかんがえがよぎってしまう。


「もうすぐ時間じかんじゃない?」

「そうだね」

月乃つきのちゃんにそうわれて、わたしたちは3ばんスクリーンへあるいてく。

蒼太そうたくんたちもおな映画えいがるみたいだけど、スクリーンがちがうらしい。


「またなー!」

笑顔えがお蒼太そうたくん。

かれ笑顔えがおていると、不思議ふしぎとわたしもわらってしまう。

なんだかすこれくさくて、わたしはかおよりひく位置いちちいさめにかえした。



「なんか、いい雰囲気ふんいきじゃん?」

「え、なんのこと?」


朝日あさひ星羅せいらだよ。

似合にあいカップルの誕生たんじょうちかいかなー?」


何気なにげなくった月乃つきのちゃんの言葉ことばが、

グサっとこころさる。

春翔はるとくん以外いがいひといたいと、わたしはおもったことがない。


「そ、そんなことないよ!」

ついこえあらげてしまう。

「ごめん、いやだった?」

いやっていうか……」

どう説明していいのかわからない。

「もうわないよ、ごめんね」

「わたしこそ、びっくりして、おおきいこえだしてごめんね」



映画えいがているあいだ、ずっとかんがえていた。


蒼太そうたくんは、わたしのことがきなの?

きだからわたしに毎日まいにちはなしかけてくれるの?


いやいや、かんがえすぎだよね。

うん。そうだよ。

告白こくはくされたわけじゃなし。


そんなことばかりかんがえていて、

映画えいが内容ないようはちっともあたまはいってこなかった。


蒼太そうたくんはわたしをどうおもっているんだろう?

わたしは蒼太そうたくんをどうおもっているんだろう?


恋愛れんあい感情かんじょう? それとも親愛しんあいてき感情かんじょう



ふと、春翔はるとくんをおもす。



星羅せいらのことはぼくきだよ」

「でも、ぼくのこの気持きもちはこいじゃないんだ」


家族かぞくみたいに大切たいせつで、しあわせになってほしいっていう親愛しんあいなんだよ」

「だから星羅せいらとはえない。ごめんね」


ちょっとられたくらいで、どうしてこんなにきずってしまうんだろう。


失恋しつれんして1げつと6

まだれません。

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