親愛ですか?恋ですか?

椨莱 麻

第1話 初恋は実らない

むかし初恋はつこいみのらないんだよって、われた。

それって、本当ほんとうだったんだなぁ……。



中学校ちゅうがっこうの、入学式にゅうがくしきあさ

わたしがきって気持きもちをつたえると、もうわけなさそうにわらいながら、春翔はるとくんは言った。


星羅せいらのことはぼくきだよ」

「でも、ぼくのこの気持きもちはこいじゃないんだ」

家族かぞくみたいに大切たいせつで、しあわせになってほしいっていう親愛しんあいなんだよ」

「だから星羅せいらとはえない。ごめんね」


わたしと春翔はるとくんのいえはおとなりさんで、わたしがころんでいたときは、いつも春翔はるとくんがたすけてくれた。

小学校しょうがっこうへも一緒いっしょかよってくれた。

たくさんやさしくしてくれた。


わたしはそんな春翔はるとくんが大好だいすきで、春翔はるとくんもわたしのことがきみたい。

でもわたし気持きもちはこいだけど、春翔はるとくんの気持きもちは親愛しんあいらしい。

わたしには、そのちがいがわからない。


「……わかった。春翔はるとくん、きゅうへんなことって、こまらせてごめんね」

わたしは、あやまることしかできなかった。

あやまらなくていいよ。気持きもちはうれしかったから」

ぼくほうこそ、こたえてあげられなくてごめんね」


春翔はるとくんは、意地悪いじわるだ。

そんなにやさしい言葉ことばわれたら、またきになっちゃうじゃん。

春翔はるとくんのびた前髪まえがみ隙間すきまから、やさしい春翔はるとくんのひとみえた。

春翔はるとくんは、さわやかで、カッコよくて、やさしいひと

でもそのやさしさは、いまのわたしにとってはすごく意地悪いじわるおもえたんだ。



いえかえって、まくらかおけて、たくさんいた。

とうさんはすごく心配しんぱいしてくれたけど、

幼馴染おさななじみ春翔はるとくんに告白こくはくしてられた、なんてずかしくてえなかった。


れちゃったね」

つぎあさ、おかあさんはわたしがいていた理由りゆうかずに、

ぎゅっときしめてくれた。


わたしは、あなたの味方みかたよ」

「だって星羅せいらあいしているから」


あいしてるってことは、わたしのことがきってことだよね。

「おかあさんのその気持きもちはこい? それとも親愛しんあい?」

「まぁ、親愛しんあいなんて言葉ことばよくってるわね」

わたしがだれかにられたってことにいたのか、おかあさんはどこか安心あんしんしたように、クスっとわらった。


「そうね……わたしこいしてるのは、おとうさんだから、星羅せいらへの気持きもちは親愛しんあいかな」



キンコンカンコーン。

学校がっこうくと、教室きょうしつがざわついた。

仕方しかたないよね、入学式にゅうがくしきから早々そうそういているなんておかしいよね。

わたしは私立しりつ中学校ちゅうがっこう進学しんがくした。

この学校がっこういはいない。

このままクラスでいちゃって、ともだちができないのかな。

そんな不安ふあんあたまをよぎった。



おれかゆくなってきた。花粉かふんやばっ」

クラスの中心ちゅうしんにいたおとこが、をこすりながら、そうった。

「あぁ、花粉かふん時期じきか!」

蒼太そうたって花粉症かふんしょうなの?」


「そうなんだよ、ほんとこまるよなー」

なかわらかれは、蒼太そうたくんってうらしい。

まぶしい笑顔えがおわら蒼太そうたくんとった。

すこずかしい。


「はい、せきについて―」

担任たんにん先生せんせいがやってきた。

出席しゅっせきっていて、蒼太そうたくんは朝日あさひ蒼太そうたくんというかれ笑顔えがおのようにまぶしい名字みょうじをしていることがわかった。


蒼太そうたくんは、やさしいひとなんだとおもう。

そうおもうと、無意識むいしきかれってしまう。

失恋しつれんしたばかりなのに、すこやさしくされたくらいでになっちゃうなんて……単純たんじゅんだな、わたし。


大丈夫だいじょうぶ?」

となりせきおんなこえをかけてくれた。

たしか、のぞみ月乃つきのちゃん……だったかな。

「うん、もう平気へいきだよ。ありがとう」

となりせきだし、仲良なかよくしてね! 星羅せいらちゃん」

「うん、えっと、こちらこそよろしくね。月乃つきのちゃん」


そのは、途中とちゅうまで月乃つきのちゃんと一緒いっしょかえった。

月乃つきのちゃんは、ショートヘアが似合にあ美人びじんおんな

カッコよくて大人おとなっぽくて、正直しょうじき高値たかねはなってイメージだったけど……

おもってたより、はなしやすいだったなぁ。


あたらしいともだちができて、わたしは、すこ気持きもちがあかるくなった。



「えへへ、ふふ」

そのよる、わたしはリビングで月乃つきのちゃんとゲームで通信つうしんをしていた。

のんびりとした箱庭はこにわゲーム。


「ごきげんだな」

とうさんはそういながら、ビールを1かんだけんで、部屋へやもどった。

ごめんね、おとうさん。

いつもテレビながらビールんでるのに、今日きょうはわたしがテレビでゲームをしてるから……。

今度こんど、おとうさんがきなオムライス、おかあさんと一緒いっしょつくるからね。


「まったく、おとうさんは星羅せいらあまいんだから」

かあさんはそういながら、毛布もうふってきてくれた。

今日きょうえるから、あたたかくしなきゃね」

「ありがとう、おかあさん」

「あんまりながくゲームしちゃダメよ」

「はーい」


かあさんは洗濯物せんたくものしにく。


ゲーム画面がめんでは、月乃つきのちゃんが「へんなこといてもいい?」とチャットをっていた。


なに? どうしたの?」

あさ、どうしていてたのかなーってになっちゃって」


花粉症かふんしょうってうよりは、大泣おおなきしたあとみたいなかたしてたし……」


わたしはすぐに返事へんじかえせなかった。


「あ、いにくいことだったら、わなくていいの! ごめんね」

月乃つきのちゃんのアバターはごめん!とあやまるジェスチャーをする。


星羅せいらちゃんはやさしくて、いいなんだとおもう。

でも今日きょう、はじめてともだちになったひとに、

失恋しつれんして大泣おおなきしながら登校とうこうしたられた、とはけられなかった。

おかしなだって、おもわれたくないから。

「ちょっとかなしいことがあったんだ」

詳細しょうさいげず、わたしは月乃つきのちゃんにそう説明せつめいした。

「そっか」

月乃つきのちゃんの返答へんとうはシンプルだった。

ノリがわるいっておもわれたかな、そんな不安ふあんかんじた。

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