さらばギルティ:急①

 ◇



 帰宅ラッシュの満員電車にて、弁当箱に詰められるおかずの気持ちを体感したことで、一応頭は冷静さを取り戻した模様。が、しかし今何時かなとスマホに目をやると、彼女からのメッセージが。


「どうしよ。これ。」


 またしても頭の中はまっしろしろすけ。身体も心も警報が鳴り響いてやまない。でもメッセージの内容が気になる。……既読にならないようにアカウント長押しして見るか。


ハルノ「北島春乃です。よろしくお願いします。さっそくなんですけど、佐田さんの空いてる日にち分かったら教えてほしいです」


ハルノ「あと場……」


 嗚呼、やばい。無理難題なのきちゃったよ。……ここまできちまったんだから、もうどうにでもなれ。


ラインを開き、メッセージを確認する。


ハルノ「あと場所、どこ集合にしますか?」


さた「自分、基本いつでも空いているので北島さんの都合のいい日で大丈夫ですよ。それと集合場所はいつもの本屋の最寄り駅はどうでしょうか」


 メッセージ打つだけで心臓の鼓動が激しくなっていく。あと100文字打ったら死ぬシステムなのか?


 って既読がお早い……喜べばいいのか、また緊張してきたから困るなあと思うべきなのか、なんというか複雑な気分。


ハルノ「じゃあ集合場所はその駅前で。そしたらあと、会う日にちは今週の日曜とかどうでしょうか。急すぎでしょうか。」


 ……え、まじ。心の準備がまだなのだが。でも断る理由はない。


さた「日曜でお願いします。あと時間どうしますか」

ハルノ「午前か午後かどうしましょう」


 一緒にお昼食べるのはまだ彼女いない歴=年齢の俺には酷である。しゃあない、


さた「午後からでどうでしょう、13時とか」

ハルノ「分かりました、ではまた、日曜に」


 もう俺のライフは0。さよなら平穏。







 5月末の日曜日。12時30分。おコメブックスに行く際に降りる駅前にて。彼女に早く会いたい気持ちと、自分が何か間違ったことをしないだろうかと考え込み、不安に苛まれる気持ちがごちゃまぜ状態。……やばい、少し吐きそう。紛らわすために、親友たちに助けを求めるとしよう。


さた「女子と散歩とかするときどんな話ふればいいん」

雅「裏切者に助言はできん、自分で考えたらどですーーー」

さた「応援してくれるんじゃなかったんかい」

雅「まさか告白成功するのは想定外。リア充め。」


 本性あらわしたな、この人。


8「あれ、今日だっけ?美人な店員さんと会う日。それはさておき、いつ焼肉行きます?」


 なんか緊張している自分が馬鹿らしく思えてきた。というか今度の焼肉、俺の奢りよね。金不安やな。


「佐田くん?」


「あ、はい。っっっっってえええ」


 目の前に超絶美少女、間隔センチメートル。思考停止。


「……」


「あ、えっと。驚かせてごめんなさい。」


「あ、いや、その。見惚れてました。」


 もう、細かいことは知らん。正直になって攻めるしかない。


「え。あ、ありがと。」


「……」


「と、とりあえずどっか話せるとこ行きませんか?カフェとか。」


「う、うす。んじゃ行きますか。」


 気まずい……。







「そういれば佐田くんの住んでるところってどこらへんなの?」


「ここから2時間くらいかかる感じすね」


「え。そんなにかかるの。なら集合場所変えるべきだったね。……ごめんなさい。」


「いやいやそんな気にする必要ないすよ。特典配布の際にこの街に来るんだけど、少しの時間しか見れてないので、むしろ街並みとか、お店何あるかとか気になってたんで。」


「……」


「北島さん?どうかしました?」


「あ、いえ何でもな……あ、着きました。ここです。」


 そう言われ、顔を見上げると、そこには見覚えのあるお店。って、ここは前に色紙を見て発狂してしまったときのカフェだった。ああ、店員さんに申し訳ない気持ちが再発する。というか北島さん、さっきから黙り込んでるなあ。俺なんかしちまったんか……。


 ひとまず、中に入り、店員さんに案内された席に座る。さて何を話すべきかと深く悩んでいると、目の前にも同じようにお悩みのご尊顔が。


「可愛っ…」


 あ、やべ。


「え?」


「あ、ええとここから見える’川’の景色綺麗だなあと。都心でも’川’とかあるんだねえ、いや綺麗だなあ、’川’。」


「あっちの川は隅田川っていう川で、遠くから見れば綺麗ですけど、川の近くに行くとゴミが捨てられていて、匂いも生臭いから良いイメージはないです。あ、でも様々な商業船に乗ってみるとスカイツリーが見えるのでその点は良いですね。」


「船に乗りながら、東京の景色見るのはとても風流ですね。でも川汚いのか。そっかー。」


「世の中、そんな感じですよね。良いイメージだと思ってたことは深く知ると、実は忌避すべきものだったみたいな。……えと、話し込んでしまって注文するの忘れてましたね、何か頼みませんか?」


「そうだね。メニュー見ていいよー。」


「あ、ありがとうございます。先、決めちゃいますね。」















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