王都分隊
―――――王都side
バグラス砦にプエリ達を送り届けてきた飛行船は、そのまま王都アンファングへと進路を向け、出発する事数日。
ライアの分身体達を乗せた飛行船は王都アンファングの外の平原へと着陸させ、王国騎士団と合流すべく、アーノルドの待つ王城へと分身体達を向かわせる。
(……流石に戦争が近い内に始まるからか、前来た時よりも商人や王都の住人達の活気がないな…)
王都の街並みを横目に観察しつつ、街の人達の表情にわずかながらに心配や焦燥と言った感情が感じ取れ、帝国との戦争が始まるという情報はきちんと出回っているのだと理解できる。
(……後で、ベルさんの所にも挨拶に行かなきゃな…)
こんな状況じゃ孤児院も色々と大変だろうし、リグの現状なども伝えたかったので、後で孤児院に訪問する事を決めるライアだった。
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王宮の中には、王国騎士団が在中する為の宿舎や訓練場、その他様々な施設が存在する。
その中の訓練場では、国の中で優秀な騎士達が己の武力を高める為に日夜鍛錬を勤しんでおり、今日も戦争に向けて己の力を向上させるべく、沢山の騎士達が訓練場に集まる。
―――ざわ……ざわ……
『…さか……ちゃんが…』
『……ひぃふぅみぃ……多すぎて目が…』
『可愛いが……増えた…!』
そんな訓練場で、一際視線を集めている場所があり、何を隠そう分身体を大勢連れてきたライア達の事なのである。
「はっはっは!壮観だねインクリース殿……前にお会いした時はこれほど沢山の分身体を動かせるとは思ってもみなかったよ」
「ドルトン騎士団長……お久しぶりです。えっと…以前は
ライアと同じ顔のした分身体が13人もいきなり訓練場に現れれば、いやにでも目を引くものだろう。
訓練場には、帝都潜入班でもあり、この王国騎士団の団長を務めるドルトン・アンデルセンがおり、ライアの下へ赴いてくれた。
「えっと…アーノルド様からは私の事って聞いてますか?」
「もちろんだとも……帝都にすでに分身体の何人かは潜入させているとも聞いているし、今回は頼りにさせてもらうつもりだよ」
ドルトンはおどける様にそう発言し、ライアに笑みを向ける。
潜入と言っても、帝都の市街地にちょっと詳しい程度だし、あまり過剰に期待されても困ってしまうライアだったが、社交辞令も含んでの言葉であるのは一目瞭然なので、少しだけ困ったような笑みをライアも浮かべ「わかりました」と返す。
「……そういえば、エマリアさんはここにいないので?」
「ん?あぁすまないな…ボールト副団長は会議中でな」
「会議ですか?」
ついこの間、へベルベールとの戦いでお世話になったエマリアに挨拶をしようとライアは辺りを見渡すが、どうやら訓練場の中にはエマリアはいないらしく、ドルトンが言うには王城の中にある会議室で会議中らしい。
「ボールト副団長は私と違い、王都に残って現場指揮を任されたのでな。騎士団の動きや配置関係を決める会議を開いているのだよ」
「……それって、ドルトン騎士団長は出なくてもいいものなんですか?」
ライアのイメージ的に、そのような重要な会議があるのであれば、ドルトンが現場に居ない事が前提であったとしても、騎士団長という上役は会議に参加するものだと思っていた。
「出なくても良いわけではないが……そこはボールト副団長を信用しているからな……故に私は、他の騎士達の訓練に付き合っているという訳さ」
「なるほど!」
やはり、団長と副団長という関係もあって、そこら辺の信頼関係は厚いらしく、特にエマリアの事は心配していないと自信満々に答えるドルトン。
「―――騙されないでくださいインクリース殿……団長は基本的に小難しい会議や事務仕事がお嫌いなだけですので」
「あ、エマリアさん!……って、え?」
ドルトンのセリフに少なからず感動を覚えていたライアの後ろから声をかけてきたのは、まさしく話題のエマリア本人であり、今ドルトンの話していた内容を否定する言葉を投げかけられる。
「はっはっは!すまないなボールト副団長。だが、信用をしているのは本当だし、大事な会議を任せられるのはボールト副団長しかいないと本当に思っているのだぞ?」
「ふふふ……まぁそういう事にしておきましょう。インクリース殿、お久しぶりです」
数か月ぶりにあったエマリアは特に変わりはないようで、ドルトンへ愚痴もそこそこにライアに挨拶を交わしてくる。
「お久しぶりですエマリアさん……会議は終わったんですか?」
「えぇ……と言っても、まだ他にもする事があるので、すぐに失礼させていただきますが」
流石に戦争の準備というのは色々と仕事が多いらしく、この後も備品の確認や書類仕事、その他様々な仕事が残っているらしい。
今も、会議の内容をドルトンに報告に来ただけだったようで、ドルトンに会議の内容が書かれているであろう議事録を渡している。
(……やっぱり、ドルトンさんも会議に出た方がいいんじゃ…?)
会議終わりにエマリアが議事録を渡しに行くより、ドルトンが会議に参加すれば話はそこで完結するし、楽なのでは?とライアはうっすらとそんなことを考える。
もちろん、騎士達の訓練も同時に進行出来る事を考えれば一概に否定できるものではないが…。
「…あ、そうでした。もう一つ連絡がありまして……インクリース殿もよろしいですか?」
「私、ですか?」
ドルトンへの連絡事項らしいが、どうやらライアにも関係のあることらしく、エマリアに声を掛けられる。
「実は、インクリース殿が所有する飛行船について、色々と確認しておきたかったんです」
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