天災の亜竜戦 捌










―――――???side






私は恵まれている。




奴隷に生まれ、街の人達に虐げられながら同じ奴隷仲間の子供達と片身を寄せ合い生きて来た。



両親は戦争で肉壁にされて死んだらしいけど、殆ど面識はないから別に悲しくも無いし、辛くもない。



到底幸せとは言えないような人生だけど、それでも私は心底思う。







―――私は恵まれている。









――――――――

――――――

――――





「リク……こっち」



「リンねぇ……お腹空いたー…」



私は帝都の街で血の繋がりはない4歳年下の弟のリクと普段は通れない人通りの多い道を手を繋いで歩いてる。



リクは私が汚物処理の仕事をやらされていた時に、畑の傍に捨てられていた3歳くらいの孤児だった。



まだ当時は私も7歳で自分の事だけで精一杯だったけど、何故か『ここでこの子を見捨てたら、この子は死んじゃう』って幼い頭で理解しちゃって、どうしても見捨てられなかった。



それからは、私の分と弟のリクの分のご飯を手に入れるのに必死の生活を6年程続けていって、なんだかんだ、今でもリクとはずっと一緒の仲良し姉弟で通ってる。



リクからも“リンねぇ”って親しみを込めて呼ばれてるし、私の独りよがりの勘違いではないと思う。



「今日はもしかしたら、沢山のご飯が食べれるかもだよ?……なんでも、私とリクの力が、この国の偉い人の為に役立つかもって話だからね」



「力……リンねぇの石同士を合体させて大きい石にするアレ?」



「うん!それにリクの火とかを“ボア!”って出すのもね!」



切っ掛けはただの暇つぶしだったけど、たまたま裏通りで私がリクの為に、綺麗な石同士を合体させている所を仕事を持ってきたお偉いさんに見られたのが始まり。



そのお偉いさんが言うには、この力は【】っていう力らしくて、才能のある人間に発現する力なんだって。



奴隷と街の人間じゃ生き物としての格?が違うらしくて、奴隷の子は力が発現しにくいらしい。



だから、私がこの力を使っているのに驚いて、その力がどんな力なのか調べさせるって話になったのが今回のお話。



リクに関しては、私がお偉いさんに『魔法を使える者は奴隷とは別の扱いをしてやる』と言われて、すぐに『弟もその力が使えます!』って言ったことで、私達2人ともお偉いさんの家に招待されてる訳なの。



「……魔法ってなんだろうね?僕の魔法?だって、リンねぇの石をくっつけるのを見て何か出来るかなーって確かめたら出来た物だし……」



「うーん……私も道端のゴミ拾いをしてる時に『ゴミ同士が一か所に固まってくれないかなぁー』って考えたら出来たから、不思議な事もあるもんだなぁーって深く考えて来なかったし」



精々、綺麗な石を作ってリクに見せびらかすくらいしか使い道が無いと思ってたから、今回の件も運が良かったのかも?程度に考えてる。




「……まぁ僕はご飯がきちんと食べられるなら何でもいいけど…」



「そうだね……ただもし、本当に奴隷の身分から救ってくれるなら……私は何をしてでもすがり付きたいな……」



「………」




この街の奴隷身分の者がたどり着く道は主に2つ。



病気や怪我で死ぬか、ある程度生きた後に戦争で死ぬかの2択しかない。



そんな未来の無い生活に降って湧いた希望の光に期待をしないというのは、土台無理な話だから……。

















「ほぉ?≪合成術≫……累計データには載っていないとなれば、新種の魔法…!これは何という発見だ!」



お偉いさんの家に着いた後、すぐに綺麗な部屋に通された私たちは、見た事のない変な薄い紙?か板?みたいな物を脇に挟められ、出て来た文字を読めと命令される。



ただ、私もリクも字は読めないので、見た情報をそのまま紙に書き写せば、そのお偉いさんは私達が驚くぐらいに大喜びするので、私の力は“当たり”の部類なのだと理解する。



その後、時間は掛かったがリクの力も希少な魔法だという事が判明したみたいで、その日はお偉いさんの家で泊めてもらう事になった。




「……すっごい……お腹が破裂しそうなくらい……ご飯食べた」



「私も……それに、お風呂?ってすごいね……水浴びなんかと大違いなくらい身体が綺麗になったよ」




食事もお風呂も堪能した私達は、与えられた一室に2人で集まり、今日の出来事が夢じゃないんだねとお互いの頬をつねり合いながら、此処が現実だと確かめ合う。



「……さっきの人……私達を引き取ってくれるって……いいのかな?こんな幸せな事があって…」



「僕は毎日お腹いっぱい食べれればそれで満足だよー」



「もうリクったら……もう少し、ちゃんと考えよ?」



リクは、この幸せを享受する事をすぐに受け入れているようで、私の心配なんか何も気にしていないみたい。







……もしかしたら、この差が……私達姉弟の行く末を左右したのかも知れない……今更考えた所で、意味はないのかも知れないけど…。












それからは、リクは魔法の訓練の為に騎士団に所属し、私は未発見の≪合成術≫という力を調べる為に研究所に行く事になった。



「石と石……木と木……それ以外の物は合成出来ない…?なんだそれは…ただのゴミ魔法ではないか!!」



……そして、私の力がお偉いさん達にとって、不必要の魔法ゴミだという事がすぐに判明した。



「あぐッ!?」



「貴様!よくもあのようなゴミ魔法で私を騙してくれたな!!おかげで私は笑いものだ!!」



「すみ…ぐッ…ずいあせん……アギッ!?」



私達を引き取ってくれたお偉いさんは、私に苛立ちをぶつける様に殴られ蹴られ。



私は自分のスキルが役立たずだった事を謝り続けた……捨てられない為に。



「貴様の弟は珍しい当たりだったから良いモノの……さっさと姉だけ奴隷に落とすか?」



「…ッッ!!?ず、ずいあせん!ずいあせん!!!なんれもしあすから……ろうか…ろうか奴隷落ちだけは……」



「くっ……意地汚いゴミ屑め……ゴミ同士をくっつけれる事しかできないお前にピッタリだな……ん?待てよ…」




私のすがりを聞き入れた訳では無いだろうが、お偉いさんは何か考えが浮かんだのか、顎に手を当て、何かを思案する。






「……貴様にチャンスをやろう」





私に残されている道など、一つしかない。



否定をすれば、奴隷落ち……下手をすれば弟のリクの立場も悪くなる。



故に答えは…。




「……どのような事でも……何でもやります」




地獄奴隷を回避する為に、地獄道具に落ちる……それしか私に残された道は無かった。










私は恵まれている。




弟のリクの立場を守り、ただ死ぬ人生を歩む事無く、人の役に立って死ねるのだから。







私は恵まれている。




色んな生き物や魔物と交わる事で、思考力は減ったけどその分痛みも感じなくなった。






私は恵まれている。




私を助けようと…私の醜い身体数多の魔物が混ざったを直そうと無茶をしてくれている人が居る……。





私は幸せだ。





――――だから、私が不幸せ貴方を殺してになるくらいなら……















私を見捨て殺していいよ…?













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