天災の亜竜戦 漆










「■■あ”■■……■あ”■■■■■ッ」



「プエリちゃん、ここは俺に任せて、町にはもd「わたしもやる!」……だよね…」




簡易防空壕の中から、自爆を起こした巨人の方を伺えば、どう見てもすぐには全快出来ない程の大やけどを負った姿で、地面に倒れている。



一見、既に死んでしまっているようにも見えるが、身体のあちこちで細胞が活性化しているのが見て取れるのでただ自分の怪我を癒す為に殆ど動けないだけらしい。



その様子をみて、今ならヒンメルの町に避難できるとプエリを諭そうとするが、意地でもヒンメルの町には帰らないと固い決意をしているかのようにライアへ宣言してくる。



「……絶対に俺の言う事は聞いて、下がる時はきちんと下がる事……それと、必ずどれかの分身体の傍には絶対いる事。その2つを守れるなら、ここに居てもいいよ」



「…ッ!うん!!」




プエリの顔には歓喜の感情と、ライアの為に戦えるのだという闘争心で、満面の笑みが浮かぶ。



「まずは巨人の手足を奪って、もう一度巨人に改造人間ホムンクルスを取りつかせる……ただ、改造人間ホムンクルスはさっきの爆発で全滅したからまた新しく作らないとだから、プエリちゃんにはその時間を稼ぐ為に、巨人を殺さずに足止めをお願いしていい?」




「わかった!!」




全身丸焦げの巨人が、早々すぐに動き出すとは思わないが、念の為に配置しておくのは大事だし、プエリにもあまり危険な事をさせずにいられる。



プエリは早速巨人の方に意識を向けたらしく、防空壕を出て巨人の元まで走り出して行く。



(さて……こっちも急がなくちゃ……)



巨人の腹の上で作業していた改造人間5人は全滅。しかし【魔女】と【鬼人】、その他の分身体は距離が遠かったり、簡易の防空壕を作成した事により脱落はなし。



つまり、この場には15人の分身体と数の減ったドロイドと幻の分身体しかいない。



(新しく2人……いや、少なくとも3人は改造人間ホムンクルスにしなくちゃ、あの巨人を直す事は出来ない……となれば、通常の分身体が10人しかいない状況か……ギリギリだね)



プエリのおかげで、巨人を殺さずに救う道が見えたとはいえ、成功する可能性は限りなく低い。


もしもの時に備えて、巨人を殺す為の力として大魔法を使える膂力りょりょくは残しておきたいので、これ以上分身体が消滅となれば、巨人を倒せないと言った事になるかも知れない。



なので、どの道この試みが成功しなければ、あの巨人はライアの手できちんと殺さなければいけないのだ。



「ふぅ……元は諦めた道なんだ、いちいち怖がっていられないッ!」




自分に気合を入れたライアは、すぐさま近くの分身体3人を集合させ、1体1体に改造人間ホムンクルス化の施術を施して行く。




「■■■■■■■■■■ッッ!!」




巨人の方には【鬼人】と【魔女】他分身体達とドロイド達、それにプエリが向かったが、まだ身体の殆どが丸焦げ状態であるにもかかわらず、地団駄を踏むかのように手足を振り回し暴れまわる。



「フッ!!」



「■■■あ”■■あ”■■■■!!」



自身に近づいて欲しくないと言わんばかりに振り回す規則性のない攻撃に、プエリは慌てる事無く身を躱しながら巨人の身体に傷を増やしていく。




【鬼人】達分身体もプエリのフォローをしながら巨人を抑えているので、問題なく時間は稼げそうである。




「―――よし……プエリちゃん!巨人の足を切り落としてッ!腕はこっちでやるから!」





ライアの合図と共に、ドロイド達を巨人の目を誘導する為に巨人の顔面付近に特攻させ、プエリには両足を、他の分身体達には両手と尻尾を切り落とす様に動いてもらう。




「わかったッ!!ふぅぅぅ……はぁぁぁぁッッ!!!」



――――ズィィィィィンッッ!!!




プエリに迫る尻尾の薙ぎ払いを剣でいなしながら、巨人の水魔法でも僅かにしか傷が付かなかった両足をプエリは一人で一刀両断して見せる。




流石は≪武王≫と言うべきか、未だライアよりレベルが低く、ステータスもライアより低い状態でありながら、剣の技術の高さで丸太並みの足を切り伏せる姿は正しく武王なのだろう。





「■■■■■■■■■■ッッ!?」




いくら身体を修復できるとはいえ、一気に両手足全て切り落とされれば、大きく暴れる事は出来ないだろうし、身動きも殆ど取れない。



「―――■■■■■ッッ!!!」



「させない……よッッ!!」



「ぐあ”■■ッッ!?」



すかさず、顔を横に向けブレスを放とうとしてくるが、それは予想していたと言わんばかりに【鬼人】が巨人の顎に蹴りを叩きこむ。



「プエリちゃんは分身体と一緒に後方に後退!巨人は魔法で縛るから!」



「はーい!」




プエリは事前に話していた通り、すぐに指示を聞いてくれて、すぐに後方に下がってくれる。



その間に【魔女】の強固な土の枷を巨人に施させ、それ以外の分身体達も巨人の身体から一定の距離を取らせた上で改造人間ホムンクルスを巨人に向かわせる。






(……自爆技を使われるとしても、ある程度自身の身体が治ってからじゃないと使えないはず……ならそれまでの間に、決着を付ける!)




ライアは最後のチャンスだと心に喝を入れ、自分を落ち着かせるように深呼吸をした後、3人の褐色肌のライアが静かに両手を巨人の心臓部分に押し当てる。







「「「≪錬金術≫」」」







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