天災の亜竜戦 伍
――――カッ!!
「■■■■■■■■■■ッッ!!」
巨人のブレスが岩陰から覗くように巨人の事を見ていたライアの幻目掛けて放たれる。
その隙に、身を隠しながら素早く巨人の背後に回っていた分身体達が奇襲をかけるというやり取りを数回繰り返していた。
(攻撃を加えた後に、幻のある方に逃げ隠れれば、ある程度は騙す事は出来る……問題は決定打が足りない所か)
分身体とドロイド単体では巨人に浅い傷跡を残す程度の攻撃しかできず、現状巨人の怪我が完全に癒えないようにちょっかいを掛ける事しか出来ていない。
「がぁ■■■■■!!」
「くっ!?」
加えて、巨人がこちらの動きに慣れて来たのか奇襲のタイミングで分身体の動きが読まれ、尻尾や腕で反撃をくらい、寧ろこちらに被害が出始めている。
(……まぁ分身体もドロイドも、治そうと思えばすぐに治せるけど…)
ドロイドの身体はただの土人形なので、地面から新しい土の身体を生み出せば問題は無いし、分身体は今の巨人の反撃で腕がちぎれ飛びそうになるが、≪念力≫で腕の切断面をくっつけ≪変装≫の肉体組織を無理矢理繋ぎ戻す事でこちらも問題は無い。(血液はもちろん≪体液操作≫で操作済み)
なんだかんだ、巨人のタフさや理不尽さに呆れていた部分もあったのだが、冷静に考えてみれば自分もかなり理不尽な事をしているなと少し冷静に考えてしまう。
「うぅぅん……ちょっと手詰まり感が……これで大魔法も通用しなかったら、どうにか巨人に自爆技を連発させて自滅してもらう位しか方法が思いつかないんだけどなぁ」
≪格闘技≫やその他近接戦のスキルを使用した攻撃はほぼ通用せず。
魔法で沼に沈め、水の刃で足を切断しようとしたが出来ず。
数の暴力で攻めようと、その一つ一つの攻撃が殆ど効かないのなら意味がない。
「……よく小説で言われるセリフみたいに“効かないなら、効くようにしてみる”?……」
ライアは思案顔をしつつ、巨人がまた幻のライアにブレスを撃ち込んでいる隙に、物は試しにと分身体3人を後方にいったん下げさせる。
「が■■あ”■■■あ”あ”■■■■■ッッ!」
「―――イメージは魔力の通りをスムーズに……いや、違うか……魔法に関してはイメージその物が魔法の規模と威力に繋がる……魔力はその規模とイメージにそえるだけの量さえあれば問題は無い……なら変えるべきは想像力…?そんなのどうやって変えれと……あ、そうか……」
ライアはまず、1人の分身体の背中に手を当て、いつもとは勝手の違うイメージで≪錬金術≫を発動させる。
「変えるのは
ライアの魔力の総量は、レベルの高さがあって十分と言えるほど多い。
ならば、その質を圧縮し高濃度の魔力を作り変えたら威力が上がるのでは?と単純な思い付きで考えてみた。
それにライアの魔法属性は水と土と幻、それに僅かにだが火も適正がある所を無理矢理土属性のみが残るように特化させてみた。
どちらも単なる思い付きだし、下手をすれば分身体が消滅する可能性も大いにあったが、久しぶりの激闘に若干ライアの頭にアドレナリンが出ていたのか『とりあえずやってみよう』の精神で実行された。
「うあぁ……うっぷっ……」
分身体1人の身体に二つのイメージ……魔法特化のイメージで
「でも……消えはしな…い!」
気分が悪くなりかけるが、なんとか根性で施術を続行させると分身体の身体がどんどん褐色肌に切り替わって行く。
……が、本来の
「金色……魔力属性の影響か…?知覚能力の強化で脳や目の周りに刺青が出るのはわかるけど……」
ひとまず、
「こっちは完全に物理攻撃特化……魔力は全て筋力や体力に変換して脳筋仕様の
こちらは元々、何時かは試しに実験しようかなと考えていたイメージなので、特に悩むことなく≪錬金術≫を発動する。
(……魔法力のすべてを材料に分身体の身体能力を向上させる……≪格闘技≫のスキルと相性を良くする為に、間接部分は柔軟に……でも根幹となる骨は堅牢に)
身体のバネを異常なほどに発達させて行けば、心なしか身体のラインが筋肉質に変わって行くように感じる。
「……よし」
こちらは殆どフィードバックは起こらず、精々普段の
肌は多分に漏れず褐色の色で、身体全体に広がる刺青。
腕や足は元のスラっとした綺麗な曲線美から、僅かに硬さの感じる筋肉が浮かび上がった健康的な身体に変化する。
「よッ―――」
つい試しにと、軽い気持ちでジャンプをさせてみれば、垂直50メートルは飛び上がり、まだまだ余力が残っている状態に呆れかえる。
――――ダンッ!!
「うおっと!」
魔法が使えないデメリットはあるかも知れないが、その分これだけの身体能力が得られるのであれば、特に問題は無さそうだ。
寧ろ、魔法を中途半端に使えるよりも物理で大打撃を与えられる方が今の状況的に必要なのである。
「■■■■■■■■■■ッッ!」
「―――シッッ!!」
――――ダゴッッッ!!
巨人の叫び声で意識を巨人に集中させ、物理特化の
「がぁ■ぁ■■ッッ!?■■あ”あ”■■■■■ッッ!」
いきなりの強烈な攻撃に驚いた巨人は、すぐさま攻撃を仕掛けたであろう鬼人に目を向け、敵意の篭った咆哮をあげる。
「――――“グランドスピア”」
―――ガッ!!
「ぐ■■る■■!?!?」
巨人が鬼人へとブレスを放とうと口を開いた瞬間に、もう一人の魔法特化……仮称【魔女】とでもしておこうか……の声が巨人の耳に入ると同時に、足元から鋼鉄の強度まで固められた鋭い土のトゲが巨人の足を貫く。
「……幻魔法が40人くらい減ったけど……これなら問題ない……一気に決める!」
鬼人と魔女の攻撃が有効だと理解したライアは、足に突き刺さるトゲをどうにかしようと暴れる巨人を睨みつける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます