天災の亜竜戦 肆












折角、身体を癒す為に動けないでいる相手をみすみす見逃す意味は無いので、すぐさまライアは行動に起こす。




「「「“ドロイド”」」」




敵の攻撃で厄介なのは、遠距離攻撃でありながら広範囲に影響を及ぼすブレス攻撃。



自爆技も厄介は厄介だが、相手もおいそれと連発は出来ないだろうし、一度あの爆発を経験したから言えるが、スキルと魔法を使えば対処自体は出来るはずなので、一旦そっちは除外しておく。




なので、ブレス攻撃の対処として一番有効なのは的を増やし、狙いを定めさせない事。



分身体10人はそれぞれ、実態を持った土人形のライアのドロイドで5人ずつ生み出し、ざっと50人ほどのライアがそこら中に溢れかえる。



「それともういっちょッ!“ファントム”ッッ」



改造人間ホムンクルス化していない残りの分身体5人が、ドロイドではなくあえて実態の持たない幻のライアを倍の100人も作りだす。



「……ッ……流石に、幻を自在に動かす程思考は追いつかないけど……的を絞らせないだけならカカシ状態でも問題は無い!」




ライアは≪分割思考≫で割いた思考一つで、分身体を4人動かすことが出来、動きに支障が起きてもいいのなら5人くらいは動かせるようになっていて、思考力のキャパシティは少し成長している。




これはドロイドの魔法を編み出した時にも説明したが、ドロイドの魔法で生み出した土人形の制御は分身体に劣らず、操作がしにくい。



ドロイドを編み出した当初は、思考一つで1,2体を動かすのが限度だった。




だが、色々と訓練を重ね、この間の分身体を多量に投入した超効率訓練のおかげもあってか、思考一つで【ドロイド5人+操作する分身体1人】の動きを制御できるようになっている。



(10人の分身体に思考を1人1つ割いてる分、ファントムの方の虚像はほったらかしにするしかないけど、それはしょうがない)




火竜討伐戦の時に見せたファントムの囮は思考1つで10人の幻を操ることが出来たが、今回はそれを操る為の≪分割思考≫のレベルが足りない。



なので、ブレスの的を分散させる意味合いで巨人の周囲100メートル圏内に何もせず、ただ立っているだけの幻を作るだけに留まる。





「―――攻撃開始ッ!!」




――――ダダダダダダッッ!!!




ドロイドと分身体達を巨人の周囲に向かわせ、近接戦組、魔法戦組、そして医療班である改造人間ホムンクルスとその護衛部隊に分かれる。




「「「ゼリャァァァァッッ!!」」」



≪格闘技≫≪剣術≫≪槍術≫……使える物はすべて使うと言った勢いで、その場に立ち尽くしている巨人の足を奪おうと数十人のライアが飛び掛かる。




「……■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!」




まるで、邪魔をするなッ!とライア達の事を煩わしく思っているのか、身体の傷を庇いながら、ごつい両腕を振り回す。




「大振りが過ぎるよッ!!はッ!!」



「ぐ■■!?」



大きく振り上げ、腕が薙ぎ払われた瞬間に、隙が出来た巨人の喉元へ分身体の一人が突っ込んでいき、喉に渾身の蹴りを放つ。




意表を突いた攻撃に、巨人も一瞬怯むようなしぐさを見せるが、攻撃自体は通ってはいないようで、すぐさま体勢を持ち直し、こちらを睨みつけて来る。




「■■■■■■■■■■ッッ!!」



いちいち1人1人を相手に攻撃を仕掛けていても埒が明かないと思ったのか、巨人は自分の身体を回転させる事によって、ご自慢の尻尾で辺りを薙ぎ払う。



「「「“マッドプール”ッ!」」」



――――ずぶぅ!



「ッ!?」




が、尻尾が分身体達を薙ぎ払うより先に、後方に待機していた魔法戦組が巨人の足元を泥の沼に変え、巨人の身動きを奪う。



身体の重みにより、一気に腰らへんまで沼にハマりこんだ巨人は、両手を地面に押し付けながら沼を抜け出そうと暴れる。




「ふっ!!」



だが、この攻め時にライアが巨人を放っておくわけもなく、分身体とドロイド共に、巨人に攻撃を仕掛け、巨人の身体に小さくとも確実な傷を作って行く。




「が■■あ”■■■あ”■■■■■ッ!!」



折角傷が癒えて来た所に追加で傷を付けられ、巨人は怒り心頭と言った様子で咆哮をあげる。



「■■■■■ッ―――」



「ブレスッッ!」




――――カッ!!




流石に至近距離で使えば、自分にも影響が出るはずだから、近距離でのブレス攻撃は無いと思っていたが、巨人は自分の真下らへんに集まるライア達目掛けて、熱線とも言えるブレスを放ってくる。




分身体はすぐに離脱し何とか躱す事が出来たが、ドロイドが数体破壊されてしまった。




「ッッ――――――」



「連続ッ!?」




土煙晴れる間もなく、巨人の居る場所から僅かに聞こえて来る吸気音。



それと土煙から覗く、ブレス特有の光をすぐに察知したライアは、連続でブレスが放たれると瞬時に判断し、他の分身体の視覚情報を嚙み合わせ、どの方向に撃ってくるのか瞬時に計算する。





――――カッッ!!





「っっっぶない!……なんて無茶苦茶な……視覚系のスキルでも持ってるの?」




恐らく、ブレスを真下に放った理由はライア達を一掃する為だけではなく、自分のハマった沼をどうにか抜け出そうとして、沼その物にブレスを放ったのだと思う。




しかし、2度目のブレスは視覚的には土煙で見えないはずの分身体達が逃げ出した方向にまっすぐ狙いを付けたようなブレスだった。




「……まだそっちの手札も全部見れてないって事ね」




ライアは久し振りの激闘の予感に思わず笑みを溢し、次の動きを脳裏に巡らせるのであった。












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