他属性合成魔石の共通点










結局、トランプ大会はその日仕事で忙しく参加が出来なかった他のメイド達やライアの両親、パテル親子などを巻き込み、かなりの規模になりながら夜遅くまで開催をされていたらしく、翌日は皆寝不足気味だったみたいだ。



多分、これから仕事が休みの者がある程度いる日はトランプ大会が開催されるのだろう。











「“粘着液”と“風”……結局、この二種類しか、他属性合成魔石は出来なかったのですね。まぁ【フライマー】と【ジェットビー(水をすごい勢いでと増してくる蜂)】の合成魔石は風を発生させるという風属性そのままだとは思うのですが……」




「火属性のフライマーと水属性のジェットビーの魔石を組み合わせて風属性……微妙にしっくりとはしない組み合わせだけどね」




「まぁでも、他属性合成魔石自体が有益に使える事がわかったのは良かったじゃないですか?相変わらずスライムとエクロイールの魔石を合成してできるこの【粘着液】の使用方法とかはわかりませんが」




トランプ大会の熱がある程度引けて来て、実験室でリグとクストが数日を掛けて生み出してくれた他属性合成魔石の確認をすべく、朝から実験室に集まった錬金術師組の3人。



結局、この町で取り扱っている魔石の中で、リグが合成出来たのはこの2種類だけで、それ以外の魔石はこの町にある魔石以外の魔石としか合成出来ないか、単純に合成自体出来ない魔石かに分かれた。



そして、2種類目の合成魔石が出来たという事は、元々言っていた可能性の『他属性合成魔石という技術はそもそも不可能で、失敗作として“粘着液を生み出す魔石”が量産されるだけ』という仮説は否定された。



元々、リネットの『クストの発見である“等級”の説明がつかない』という意見で、ほぼほぼその説は否定はされていたが、確証が持てる結果が出るのならきちんと結果で判断した方が良い。





ただ、結果が出たは出たで、新たな問題も出て来る訳で…。




「ではこの粘着液を生み出す魔石はきちんとした特殊属性という訳ですが……やっぱり【粘液属性】と名付ければいいのです?」



「乾燥させても一切蒸発しませんし、可燃性の粘液では無いみたいなので、火も付きません……挙句に油や他の液体と混ぜようにも、一切混ざり合う事はしないで、どの液体と合わせても綺麗に分離してしまいますし……」



「私も試したが、この粘着液は自然に内包魔力が消失するまで消えない『摩擦を打ち消す液体』という事以外の効果が発見できなかった……言ってしまえば、ただヌルヌルするだけの時間経過で綺麗さっぱり消え去る粘液という事だね」




(……やっぱりこれ……ただのローションか?)



ここ最近とある事情により、頭の思考がソッチ寄りになっている所為か、目の前の粘液に対し、邪な考えを思い浮かべてしまう。



(いや、別にローションって言っても別に変な意味合いで使わない事だって多いし、寧ろ医療関係で使う事の方が多いイメージだってあるし?……いや、一番使われてるイメージがあるのはバラエティ番組かなやっぱり……)




リネットとモンドに見られない角度にて、何とも言えない百面相を浮かべるライア。





「それに、さっきも言ったけど火属性の【フライマー】と水属性【ジェットビー】の魔石を合成して“風属性”の魔石が出来上がるのも不自然だ」



「確かに、水と火を合成して風というのはよくわからないですし、粘液属性のスライムとエクロイールの関連性とも共通点が見いだせないのです」




(水と火を合わせる事で風……これはもしかしたら水を火で蒸発をさせる事で、水蒸気による上昇気流を生み出すから風属性。みたいな事だったら単純かもしれないけど、だとしたら粘液属性の方の説明が付かない、あっちは電気属性と吸収属性だ)



恐らく、リネット達も一番最初に風属性の他属性合成魔石が出来上がれば、単純な思考で決めつける事も出来たが、やはりネックになるのはこの【粘液属性】の魔石なのだろう。




「電気が吸収されて粘液を生み出す?そんな話聞いた事無いし、スライムの魔石に直接エクロイールの電気を吸収させようとしたけど、そもそもきちんと吸収出来てるのかもわからないし……困った!」



流石にこればかりは前世の記憶を当てはめようとしても、何が何やら訳が分からない。



そんな感じで3人で頭を悩ませていると、ふとモンドが気になる発言を口から漏らす。



「……吸収属性と電気属性で考えるのではなく、魔物本体の方で考えるべきなのかな?」



「どういうことなのです?」



「これは単純な考え方だけど、スライムとエクロイールの見た目“だけ”で見れば、粘液という属性もあり得そうだと思ったんだよ」



「……確かに、エクロイールの体表には外敵から捕まらないように、ヌルヌルの粘液が付着しているのです…スライムも言わずもがな、粘液の塊と言っても変わりはないのです……でも、それはただの見た目だけなのでは無いです?」




流石に見た目がヌルヌルの粘液まみれの魔物だから粘液属性が生まれた。なんてこじつけが過ぎるとリネットは否定的。



「……いや、もしかすると、それって結構関係があるかもしれないんじゃないですか?」



しかし、ライアはとある可能性が頭によぎり、モンドの思い付きを拾い上げる。




「ライア君、何かわかったのかい?」



「あ、いえ……仮にモンドさんの言う魔物の見た目が関係をしている説を考えれば、フライマーとジェットビーの方の説明も一応付くんですよ」



「……言われてみれば、確かに風を…というか、空を飛ぶ魔物なので、辻褄は合うのですが……流石に強引なのではないです?」



スライムとエクロイールは粘液質の身体をしており、フライマーとジェットビーは単純にトンボと蜂だ。空を飛ぶ虫という所で、風属性というイメージも一応合致する。



「……もしかして、魔物それぞれに、特殊属性になり損なった特性…の様な物があるんじゃないか?スライムなどは【吸収属性】を持っていなかった場合は寧ろ【粘液属性】という属性があったとしても不思議はないと思うんだ」



「それはつまり、魔物の中には特殊属性の他に、身体的特徴の中に別の属性になり得た特性を持っていて、その特性が合致する魔物同士の魔石を組み合わせる事で、その特殊属性が新たに生まれるという事です…?」



「可能性としては、今の所かなりありそうではあるんじゃないか?」




仮にそうだとすれば、今後の他属性合成魔石の組み合わせをある程度予測する事も可能だし、魔石を仕入れる際の目安として考慮する事も出来る。



「なら今度、クスト達を連れて、王都まで魔石の買い出しに行ってみましょうか。そこで魔物の特徴と合成魔石の属性が揃えば、この仮説が正しいとわかりますし……まぁ飛行船はまだ帰ってこないので、暫くは先の話になりますが」



「むぅ!口惜しいのです……いっその事、働きアリハウスマンの所で少しずつ造船している飛行船の船体を一船完成させてしまうというのも手なのです?」



「それは私達の負担が大きすぎるかな?それに、折角ライア君が国王陛下から正式に休暇を貰ったのに、隠れて新しい飛行船を作ったりなどしたら、国王陛下からの印象が悪くなるんじゃないかな?」



「……それもそうなのです」



(正確には、俺が、じゃなくて、アイゼル様が、だけどね……)





他属性合成魔石の共通点の解明は次回へ繰り越しという事になったので、ライア達はこの他属性合成魔石の使い道を考える為に、新たな話し合い(もとい実験、研究)を再開させるのであった。










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