ライアへのアイ










ライアの手に乗るピンク色の魔石に“属性診断”を行うべく、微量の魔力を魔石に込め、魔石の属性を調べる。



―――ぽわぁぁ……



「……煙?……特に分身体の身体には害はない……この煙が魔物を呼び寄せる何かなのかな?」



込める魔力は微量ではあるが、もしも周辺から魔物達が一斉に襲ってくれば、バンボ達やシグレ達に迷惑が掛かる可能性もある。



微量だからと気が急いてしまったか?と魔石の属性診断を取りやめようかと思った時、外に行っていたはずのバンボとシグレが、拠点の中に戻ってくる。




「―――すまないな、少しばかり気を抜いて必要な材料を置きっぱなしで来ちまった」



「なんの、ワッチらの仕事は主ら大工鍛冶の護衛ぞ?主らの行動に文句などござらんッッ!!……ムッ?主君?そこで何を……」




2人は忘れ物を取りに来たらしく、お互いに話をしながらこっちに歩いてくると、ライアに目を向け、何かに気が付いたのか足を止める。



「2人ともどうかした?……あ、もしかして、この魔石を見て何か感じる?今ちょっと実験をしてて……」



―――ザザッ……



「主君……貴方様を絶対に幸せにいたします……どうか、ワッチと添い遂げてくれやぁしませぬか?」



「……へ?」




いきなり、シグレがライアの手を取り、まるで手の甲にキスでもしそうなほどの勢いで、愛の告白まがいの言葉を言い放ってくる。



「え?あ、いや……な、なに言ってるのシグレ?君には別の…ってダメッ!!違う違う!そうじゃなくって……バンボさんッ!」



余りの出来事に混乱しまくったライアが、アインの恋心を暴露しそうになるが、寸でのタイミングで停止し、そこら辺の事情を知らないはずのバンボへとSoSを出す。




「インクリースさん…」



「バンボさん!ちょっと意味が解らないかもしれないですが、シグレを引きはが「俺の子を産んでくれないか?」………え」




ライアの救援を聞いて、助けに近寄ってくれたのかと思えば、シグレとは別の手を握って、こちらを熱い目で見つめながら、ド直球な表現をしつつ、ライアにまさかの求婚を求めて来る。




「いやいやいやいや!?バンボさんまで何言ってんですか!?というか私は男なんですけど!?子供も産めないんですが!?」



「ならワッチとなら……」



「いや、別に性別だけの問題じゃないからね!?違うよ!?っていうか私にはリネットさんが居るから子供はリネットさんとだけ…ってそうじゃないッッ!!」



色々と現在の状況に頭が追い付かないライアは、自分で言っていて恥ずかしいセリフを発言してしまっている事実に気が付き、慌てて口を閉ざす。



(は!?は!?なんでいきなりこんなことに!?……って、もしかしてこの魔石の力…?まさか…!)



ふと考えついた可能性に、昨日のミノタウロスを呼び寄せた能力と現在のカオスな現状を作り上げた力の正体に当りを付ける。



「……まさか、魅了属性!?」



昨日の魔物を呼び寄せる力は、ミノタウロスに魅了の力を掛けて、自分を守らせようとしたと考えれば矛盾は無いし、バンボとシグレの様子を見ても、魔石から放たれる僅かな煙と魔力に当てられ、魔石を使用したライアに絶大な好意を持たせている事にも説明が付く。




「……なんちゅうヤバいもんを……」



この属性魔石の危険性に一早く考え付いたライアは、深刻そうにそう呟き、これはリネット達に言わなければならないなと思考を早める。





「主君……折角完成したこの拠点をワッチらの愛の巣に……」



「インクリースさん……子供は3人は欲しい……いや、貴方の魅力の前じゃ3人は足りない……俺が死ぬまでにどれだけ子供が出来るかを競おう……」




「……と、とにかく、2人を正気に戻さないとやばいし、なんか手を引っ張る力が強くなってるような……って、やばいやばい!ちょ、引っ張って建物の中に連れ込もうとしないで!?さすがに2人に襲われるっていうのは許容できないし、色んな人に迷惑が掛かるから!!」



ライアは、力強く手を引っ張る2人に何とか抵抗しながら、魅了属性の魔石の効果が切れるのを待つのだった。





―――――――――

―――――――

―――――





「「す、すみません(ぬ)」」



「あ、あはは……いや、元はと言えば、俺が無警戒に魔石の実験をしたのが原因だし、2人は寧ろ被害者だから……寧ろ迷惑をかけてごめんね?」



結局、ライア(分身体)の貞操を奪われる事なく、拠点の仮眠をとる為の大部屋に連れ込まれる前にバンボとシグレは正気に戻り、記憶がきちんと残っているのか、すぐにライアに謝罪をして来た。



しかし、これに関しては100ライアの不注意で起こった事故なので、寧ろ謝るべきはライア自身である。



2人はそれでも申し訳なさがにじみ出ていたみたいだが、ライアの『あまりこれ以上謝られても俺自身が申し訳ないから、何もなかった事にして、普段通りに過ごそう?』という一言に、渋々納得してくれたのか、外で待っているはずの皆の元へ、忘れ物を持って向かってもらった。




「……ふぅ……さすがに魅了属性は予想外だったけど、これの取り扱いには注意が必要だね……ひとまず、リネットさん達には俺本体からすでに説明したし、この魔石を使っての魔道具製作をしようにも、どう考えても出来上がる魔道具は取扱注意の物だろうし、中身が中身だから他人に渡るのはダメだね」



リネットに伝えた際に『そんな面白そうな特殊属性があったのです!?魔道具研究に役立ちそうなのですよ!!』と興奮した様子ではあったのだが、さすがに今回は自重してもらう事にした。



リネットに伝える際にモンドにも一緒に伝えているので、モンドもこの魔石の危険性がわかるのか、一緒にリネットを説得してくれた。



まぁリネットも魅了の力をそのまま人間に使うのではなく、魔物相手に使う為の魔道具研究だとは思うのだが……。




モンドには『さすがに物が物だし、暫くはライア君が保管していていいんじゃないかい?魔道具にするのはアレだけど、魅了属性の特性の研究はしておいた方が良いとは思うし、魔物相手の効果も調べれると思うしね』と言われたので、ひとまずこの魔石はライアが保管する事は決定のようだ。



「……人の居る所ではこの魔石の研究は出来ないね……」



凄い発見ではあるのには間違いないが、少々厄介な物であるので、この魔石の研究をする際は、ダンジョンの中でライアだけがいる状況下でのみ研究をしようと、固く心に誓うライアなのであった。











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