ミノタウロスDeバーベキュー









「「「うっまぁぁい!!」」」



「これはいくらでも食せますぞ主君ッ!!」



「あはは、大量に余ってるから遠慮なんかはしないで、いくらでも食べてね」




ダンジョンの前に建てられた防壁内の広場にて、仮眠から起きて来たバンボ達大工組や護衛騎士達全員を招集してのバーベキュー夕食会を開いていた。



大工達はミノタウロスの肉の美味さに特に会話を挟むことなく淡々と肉を己の口に運んでいっているし、護衛騎士の皆もライアが討伐してきてくれた事を感謝しながら“美味しい美味しい”と食べてくれる。






ダンジョンでの戦闘後、さすがに分身体1人では運搬どころか解体すら間に合わないと分身体の応援を呼んだおかげで、大体千体ほどのミノタウロスの肉(その他使えそうな素材)をダンジョンの外まで運ぶことが出来た。



バンボ達が起きてきた時は『な、な!?なんちゅう量ですか!?』と皆に大変驚かれたものだが、ライア自身想定外の結果故の事だったので、どうしようもない。




はっきり言って、これだけの量をシグレ達と消費仕切るのは不可能だとわかりきっていたライアは、バーベキュー用と数日間の食料分を分けて、残りの約900体分の肉を分身体達で手分けをし、干し肉などに加工していく事にした。



折角の高級肉なので、ヒンメルの町やリールトンの街に卸したい所だが、暫くはこの場所から動く事は無いし、腐らせるよりはいい。



(それに、別にこれからいつでも手に入る物だし、保存食にしておいた方がいざという時に役立つしね)




そんな訳で、バーベキューをしているシグレ達とは離れた場所で、ライアの分身体達による、大量の肉の塩もみ大会が開催されているという訳だ。




(さすがに、干し肉だけってのもアレだし、いくらか肉をダメにしてもいいから【燻製肉】とか作って見たいなぁ……豚ではないけど、ミノタウロスの肉でもベーコンって言うのかな?)



基本的に前世の記憶は曖昧……というか、そこら辺の細かい知識はそれ程記憶をしていなかった為、色々曖昧な部分が多いが、燻製に必要な材料なんかはネットやテレビで見た事がある。



この世界にスモークチップや燻製機は存在しない為、手探りでやって行かないといけない部分もあるが、≪家事≫スキルを併用しながらやれば、前世程の品質じゃなくても完成はするはずだ。



燻製肉が出来れば、保存食文化ももう少し発展するだろうし、試す価値はある。



「って、なんかこっちに来てから保存食の文化ばっかり発展させてる気がするな……【缶詰】の件だって、本来は魔道具の発明をする事がメインだったはずなんだけどなぁ…」



今や、リールトンの街から様々な場所にまで広まった【缶詰】ではあるが、あの魔道具は発明する事が目的だった物なので、保存食文化を熱心に改善しようと考えて発明した物ではない。



もちろん、リールトンの街のダンジョンでゼル達(リールトンの街の冒険者)が話していた愚痴を思い出しての発明ではあったのだが、それはきっかけにしか過ぎない。



(これでベーコンも作ったら、保存食関係の人って思われたりするのかな?……いや、【缶詰】はリネットさんと一緒に作った物だからセーフ?)



別に他人からの噂を気にするような事でもないし、仮に保存食文化を盛り立てた人物として市民から認識されたとしても、それ以上に【火竜討伐】や【ダンジョンを2か所も発見】などの功績の方が断然上なので、間違っても『保存食の人~』とは呼ばれないのだが、ライアは変にそこを気にしだす。




「どうかされましたか主君??」



「あ、いや…何でもないよシグレ……そう言えば、シグレは騎士学校の時って遠征の訓練とかしてたんだよね?その時は何を食べてた?干し肉?」



バーベキューを食している横で百面相を披露していたライアにシグレが気が付いたのか、声を掛けて来る。




「遠征訓練ですか?ワッチは現地調達、現地調理一択でございますぞ!」



「……あぁ…そうだね、さすがシグレだね」



「勿体なきお言葉ッ!!」



恐らくシグレに聞いたのは間違いであったのだろうと思ったライアは早々に話を諦め、シグレにバーベキューの続きを勧める。




(まぁ、まだ出来てもいない事に頭を悩ませるのもアレだし、完成したらしたで良い事なんだから別にいいか……)




そんなライアの考えと共に、バーベキューで焼かれるミノタウロスの肉が皆のお腹の中に消え去って行くのであった。







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―――――――――

―――――――







翌日、ダンジョン前の拠点が完成し、ダンジョン入り口と拠点を囲む防壁と、飛行船の着陸する為の空港(ただの平坦な広い土地)を囲む防壁を作る作業に入ったライア達。



一応、この2か所の防壁さえ作ってしまえば、冒険者達を最低限の安全を確保した状態で迎える事ができるので、その部分が完成すれば、ひとまずこのダンジョンの開拓は一旦終了できる。



「よし、後は比較的作業ばかりだ!だからと言って、手抜きが出来るほど簡単なものじゃねぇ!気張って行くぞ!!」



「「「おぉぉぉ」」」




大工達はバンボがリーダーシップを取り、すぐさま作業に入る為に、護衛騎士を引き連れ拠点の外へと出発していく。



「行ってらっしゃーい……さて、それじゃ俺も始めようかな」



大工達と騎士達に見送りを済ませ(見守り用の分身体はもちろんついて行ってるが)、ライアは拠点の中でやるべきことをさっさと済ませる事にする。



「燻製肉の試作……はまぁおいおい進めるとして。さすがにを調べないって発想は出来ないよね」



そう言って、昨日からずっと気になっていた物をライアはスカートのポケットから取り出して、手のひらに乗せる。




「あの花の魔物……どう考えてもミノタウロス…いや、別種の魔物を呼び出す能力を持ってた。つまり、強弱や方向性はあれど、魔物を操作する事が出来る何かを持ってるって事になる」



コロン…っとライアの手のひらの上には、花の魔物の花の部分と同じ色をしたピンク色の小さい魔石が転がっている。



「ふふふ……あの力があって、さすがに無属性とは思えないし……何かしらの特殊属性持ちなのはほぼ間違いない」



ライアは、この魔石に眠る力を思い浮かべながら、どのような属性が眠っているのかを確かめるべく、早速魔石にほんの少しの魔力を送り込み“属性診断”を行ってみる事にするのだった。








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