他属性合成魔石










「……で、これって何属性の魔石になったんでしょう…?」



「魔石から出てきた粘液にこれと言った毒性なんかも見られないのですよ」



「魔力の込める量で分泌量が変わる見たいだけれど……粘液の粘度に関しては、手で触れても水で洗えばすぐに落ちるぐらいから変わらないね」



リグとクストの他属性合成魔石の研究が開始され、リグの仕事部屋に2人を残してきたライアは、研究室にてリグが先程完成させた唯一の新魔石をあーだこーだと調べているリネット達と合流し、この魔石がどのような属性を持っているのかを調べる事にした。



見た目は普通の魔石とそれ程違いは無いが、エクロイールの電気属性魔石ともスライムの吸収属性魔石の色とも違う色をしており、魔石の種類自体が変わったのだと見た目だけでわかる。



だが今の所、魔石に魔力を込めても毒性のない粘液が分泌されるだけで、それ以外の特徴は見当たらない。



「……見たままで名前を付けるのなら【粘液属性】?しかし、仮に粘液を生み出す属性なのだとしたら、元となった【電気属性】と【吸収属性】の面影が無さすぎる気がするが…」



「…一応、他属性の魔石同士を合成させると、全てこのようになる……みたいな事もあり得るかもですが」



「それはあまり考えなくていいと思うのです」



「そうなんですか?」




リグには残念だが、もしかすれば他属性の魔石を合成させ、きちんと運用できる仕様じゃなかった可能性を考えるが、どうやらリネットにはその可能性を否定する考えを持っているらしく、すぐにそう言ってきた。




「はいなのです……単純な話、仮に合成しても失敗扱いになる場合、他の合成自体が出来ない魔石の意味がわからないのです」



「……それは……クストの言う【等級】が関係するからでは?」



「……いや、ライア君。彼女の言う通りだ……確かに、魔石を合成するにはそのクスト君が見つけた【等級】とやらが大事になるのかも知れない……だが、その等級の違いが合成術の可否を決めるのだとすれば『他属性の魔石同士の合成』をする事が前提として考えれないかい?」



「あッ!」



もしも他属性の魔石同士が合成不可能なのだとしたら、クストの≪素材鑑定≫で出てきた【等級】という項目の意味が分からなくなる。



ある意味逆説的にではあるが、それを考慮すれば他属性合成魔石に失敗作の存在はあるかも知れないが、少なくとも全てが失敗作になるのは考えにくい。



「まぁその【等級】というのが、本来別の意味を持っている可能性もあるのですが、合成をするうえでその等級が肝になっている以上、恐らく大丈夫なのです」



「なるほどですね……という事は、この粘液を生み出す魔石の属性は【粘液属性】もしくは【合成失敗による不完全品】の2択と考えていいんですかね?」



「その粘液がただの粘液なのであれば、そう言う事だろうね……。一応ライア君がワイバーンの魔石を【軽量属性】ではなく【重力属性】だと気が付いたように、何か見落としている可能性もあるけどね」



「ですね……暫く、分身体を使って何か他の特性が無いか探してみます」



どの道、リグ達の方で新たな他属性合成魔石を見なければ、この魔石が失敗しているのか成功しているのかの成否は不明なので、一旦この話は終わりにする事にした。



(……電気系か吸収に関連した何かが効果で現れれば、こんなに悩まなくて良かったんだけどね……まぁわからない事を調べるのも錬金術師として大事な事だから楽しいけどもッ!!)



粘液まみれの魔石を持った分身体を実験室の端に移動させながら、ライアはそんな事を考える。









―――――――――――

―――――――――

―――――――








「よっ!はぁッ!!」



「セイッ!!」



「くッ……まだまだぁ!!」



騎士達の遠征期間は2か月とかなりの長期間であったが、それなりの成果が出たとはっきり言う事が出来る。



全員の詳しいステータスやらを聞き出した訳では無いが、アインやシグレ経由で騎士団員達の殆どがチラホラとレベルがかなり上がったと報告されたらしい。



シグレ曰く『騎士団員の殆どが15,6レベルを超えた程度だったにも関わらず、遠征が終わってみれば皆20レベルを超えておりますッ!!剣術、盾術、槍術のスキルレベルも飛躍的に伸びてますぞッ!!主君の導きあっての事ですなッ!!』とご機嫌に報告して来た。



ちなみに、アインやシグレは騎士学校以外で魔物との戦闘経験が結構あったらしく、最初から20レベル以上だったらしいが、それでもかなりレベルが上がったらしい。



参考程度に言っておくと、ヒンメルの町の新しいダンジョンに来てくれたテルナート(ベテラン冒険者)のレベルは大体35レベル以上40未満らしく、騎士達のレベルが低いように思えるが、騎士学校の出の騎士は貴族の家の出であることが殆どなので、比較的にレベルは低い傾向にある。



だが、それをカバーするかのように、騎士学校や実家の教育により、様々なスキルや知識を習得をする事によって、冒険者には無い強みがあるのだ。



もちろん、騎士として修練を積んで行けば、自ずとレベルも上がって行くので、最終的には騎士の方が強いという風潮にはなっている。





「どうしたどうしたぁ!!ワイバーンとの戦闘を経験したら、この程度の訓練は余裕だろう!!ご主人様の愛であるダンジョン遠征の責め苦を思い出して魂を震わせんかぁッッ!!」



「「「が、頑張りますッ!!!」」」







少し話しが逸れたが、そんな訳で騎士達は15,6レベルだった所を一気に20以上に出来たので、今回の遠征は大成功と言える。




では、今騎士団員達が何をしているのかと言えば……もちろん訓練だ。




「キャッ!!」



「何をやってる!そんな事では主君……ひいてはプエリ殿の100分の1も強くはなれんぞッ!!それでよいのかッ!?」



「「「ぜ、絶対に強くなりますッッ!!」」」




騎士団の男女比は丁度半々で、訓練は大体同じ力量の者と模擬戦などを行う訓練を始めたはずだったのだが、何故か途中から男女別々で模擬戦以外に走り込みや、素振り、的当て、筋トレなどを超ハードスケジュールでこなし始め、仕舞にはベルベットとシグレが教官の真似事をし始め、訓練場が一種のブートキャンプ場に成り果てる。



自分の考えた訓練内容がハード過ぎたか?と隣に待機しているアインへ目を向ける。




「な、なんで皆こんなにやる気に溢れてるの…?もっと休暇を与えた方が良かったかな?」



「……いえ、詳しい事はあまり聞いてませんが、疲れが取れずにこうなっている訳では無いので、放っておいて構いません……寧ろ、休暇が増えると悪化すると思います」



「え。悪化するの!?」




ライアは騎士団の皆がなぜこうなった!?と驚愕の表情を浮かべる。




「訓練の意欲があるのは確かですので、無いよりは問題無いかと」



「それは……確かにそうだけど……はぁ……今日の模擬戦で、自分の力量を把握したら警備任務や騎士団としての動きについて話そうかと思ってたけど…」



訓練は続けていくが、本来騎士団にはヒンメルの町を守る仕事も始めなければいけない所を、2か月の遠征という名のレベリングを行っていたので、通常任務の話をするつもりだったのだが、騎士達の様子を見ていると、とてもライアの話を落ち着いて聞ける精神状態には見えなかった。



「……私が責任を持って、全員に伝えておきます……」



「お願いね……」




結局、一番落ち着いていて責任感のあるアインに仕事関係の話を伝え、騎士団の皆にはアインから伝えてもらう事に落ち着いた。







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