魔石の新要素?











ダンジョンでの遠征を終えた騎士団達には、身体を休める名目として2日程の休暇を与える事にした。



ワイバーンとの連戦に次ぐ連戦で、目に見えない疲労は残っていただろうし、2か月ぶりの地上という事もあり、ストレス発散の為にもそうするように通達した。



…その際に、何故か『休暇はいいので、もっと強くなりたいです!』と結構な人数の騎士が申し出ていたらしいが、恐らく極限状態に近い精神でずっといた為にテンションがハイになっているのだと思いたい。



休暇に入らせた騎士達には、まだ大きい商店や娯楽なども少ないヒンメルの町ではあるが、食事処や日用品などの買い物ができる市場的な所もあるので、ワイバーンの討伐報酬も合わせた特別給与を与えたので、十分に身体を休めてくれると助かる。






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「恐らく、これと……これかな?」



「やってみるよ……うん、問題無さそう!」




ライアの目の前では、色んな種類の魔石や魔物の素材がひしめき合う部屋で、ダンジョン遠征などには付いてこなかったエルフ兄妹の片割れであるクストと最近は合成魔石以外にも素材の合成を色々と実験しているリグが肩を寄せ合いながら、あーだこーだと話合いをしている。



「どうかな?出来そう?」



「あ、はい!ライアさんの言う通り、クストの選んだ魔石だと合成のし易さが大分変わりますね!」



「…僕はただ、見た事をそのままリグに言ってるだけだから」




リグの興奮した様子を横目に見ながら、クストはほんのり照れた様子で謙遜の言葉を口にする。



現在ライア達のいる場所はリグの実験室兼作業場、そして今行われていたのは大分昔に試して、その時には出来ないと思われていた【他属性の魔石の合成実験】を試していたのだ。



実は、数か月前にリグが≪合成術≫のレベルが10に上がり、≪合成術≫の使いやすさが大分変わって来たらしく、今であれば同属性の魔石以外の合成魔石も試せるのではないか?と話題に上がったのだ。



試すのはタダだし、出来なくても今の状況から悪化する訳でもないので、ライア達はリグに出来たらでいいから試してみてとお願いしたのだ。



しかし、さすがにそううまく事が進む訳もなく、【他属性の合成魔石】が完成する事無く、数か月の時が過ぎた。(ちなみに、王都への飛行船のお披露目の際にリグが付いてこなかったのはこの実験があったからというのも付け加えておく)



流石に無理なのか?と若干ライア達が諦めかけたその時、リグの大きな声で『出来ましたぁぁぁ!!』とライア達の元へやって来た。



『見てください!!スライムの魔石と【吸収属性】とエクロイールの【電気属性】の合成魔石です!!』



『『『お、おぉぉぉぉ!!ついに!?』』』




聞けば、その合成魔石の特徴は【吸収属性】とも【電気属性】とも違う粘着性の液体を生み出す効果を持っているようで、何の属性かはわからないが、少なくとも新しい属性の魔石を生み出す事が出来たのには変わりなく、ライア達は皆で大いに盛り上がり、リグを称えまくる。



『さすがだよリグ!でもなんでいきなり出来るようになったの?スライムの魔石もエクロイールの魔石も何度か試してダメだったのは見てたし、レベルが上がった訳でもないよね?』



『はい…実は――』




そこでリグが語ったのは、他属性の魔石同士のの問題だった。




『別の属性同士でも相性が存在する?』



『はい……俺がこの数か月間、色々試して行くうちに、合成出来そうな魔石と合成自体が無理そうな魔石……そして、合成出来そうな魔石の同士の中に、合成の抵抗感が少ない物や寧ろ抵抗感の強い物があるのが感覚的にわかったんです』



『……なるほど……それでそもそも合成出来なさそうな魔石を省いて、相性の良さそうな魔石を片っ端から試して行ったと?』



『そうです』




言わば人海戦術……まぁ意味としてはリグ1人なので当てはまらないかもしれないが、総当たり作戦なのは間違いがなく、相性問題だと気が付いてからの数週間は試してはダメの繰り返しだったらしい。



『でも相性問題となると、その法則性を見つけたい所なのですが……』



『すいません……多分ですが、目に見える所での差別化は不可能だと思います』



『やっぱりそうですね……』




リネットも、この数か月間のリグの頑張りは知っているので、リグの言葉に嘘は無い事もわかっているし、事実魔石同士の選別など、大きさや魔力の通し易さなどで質を調べる事ぐらいしか不可能だ。



寧ろ、リグが合成のしやすさなどという選別方法自体存在するだけでも大分進歩しているのは間違いない。



『魔石の詳細な事がわかる人が居たら、この問題も解決するんですかね……』




『詳細……あ』










……とまぁそんな話の流れで、ライアはクストの≪素材鑑定≫のスキルの存在を思い出し、今も地道にスキルレベルを上げていたクストに白羽の矢が立ったという訳だ。




クストもこのスキルがライアの助けになるのならとすぐに手伝いを申し出てくれて、早速試した訳なのだが……。



「魔石の詳細は、ある程度調べたいと思った情報に偏って調べられるから【相性のいい属性】と【魔石の質と容量】、そして合成する魔石の相性とも言えるこの【等級】が全て近い物ほど合成がしやすいってわかったね」



「相性のいい属性は俺でも感覚で調べることが出来たけど、その【等級】っていう部分がどうしても俺にはわからなかったからね」



見事、クストの≪素材鑑定≫は大当たり。



ライア達やリグの判断の付かない【等級】という分類が存在するらしく、それをクストは調べることが出来た。



なので、クストの調べた魔石同士を合成させてみれば、いとも簡単……と言えるほど楽に合成できるわけでは無いが、今までの数か月の試みに比べれば簡易に合成魔石が完成する。




「……クスト、もし嫌じゃなければ…」



「僕、ここでお手伝いしてもいい?」



「……いいの?」



ライア的には、その等級を分ける作業を偶にお願いしようかと思ったのだが、クストは自分がライアの為に働けるのだと理解したのか、満面の笑みでライアに聞いてくる。



「うん……プエリもお父さんも立派にライアさんの為に動いてるし、僕も出来る事をしたいからね」



「そっか……ありがとう。お願いしてもいい?」



「うん!任せて!」




クストは幼さの残る満面の笑みで、仕事を任された事に最大限の喜びを表すのだった。











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