騎士達のスキル









今更だが、騎士団員の全員は武器を扱う場合に必須な各武術スキルを騎士学校にいる間に取得している。



シグレやベルベットも剣を使う≪剣術≫スキルを主に使っているが、その他の≪弓術≫や≪盾術≫のスキルもきちんと取得している。



アインなどは≪剣術≫と≪盾術≫のどちらも必要な片手剣と盾を両手に持ったスタイルだし、他の騎士団員達も弓や大剣、投擲武器などを得意としている者達も多くいる。



だが、この武術系のスキルは、5歳の時に与えられたスキルの者もいるが、それとは別のスキルを与えられている者も結構いる。



ライアと決闘を行ったベルベットも≪視力強化≫という身体能力を補助するスキル持ちだったらしい。(決闘の際に、ライアの剣に反応して見せたのはそれがあったからかも知れない)



そして、この1ヵ月と少しの騎士団との遠征で分かった事なのだが、シグレ、アイン、コルドーの3人もかなり強力な戦闘用スキルを所持していた。




「―――セェェェェイッ!!」



―――ズバンッ!!




ワイバーンと接敵した際、必ずと言っていいほどワイバーンへの初撃はシグレが行っている。



……これは別に、シグレが頼られて戦闘の第一陣を任されているという訳では無く、単純にシグレのが他の騎士達とは段違いに違う為である。



ワイバーンの存在に気がついた瞬間に、騎士達は皆戦闘準備を済ませ、ワイバーンとの間合いを詰めよろうと動き出すが、シグレはその間合いをたったので詰め切ってしまう。



シグレに与えられたスキルは≪脚力強化≫、ステータスの数値と、スキルレベルの高さで己の脚力を強化し、数百メートルの距離をたったの数歩で走り抜ける程の身体強化系のスキル。



思い出せば、シグレとの初体面を果たしたあの講堂での出来事。



あの時、シグレは壇上のステージから何とも芝居がかった飛び降り方をしていたが、ステージに戻る際に、までアクロバティックな動きを入れながら飛び上がったのだ。



今思えば、シグレの濃いキャラ性に思考が追いやられていて気が付かなかったが、余程ステータスが高くなければできない芸当だったとシグレから≪脚力強化≫の詳細を聞いた時に納得した。






「ギャァァァッ!!」



「――シグレッ!!」



―――ダァァンッッ!!



シグレの電光石火の初撃にて、翼に裂け目が出来た事に怒り狂ったワイバーンが、目の前のシグレ目掛けて牙を突き立てようとしてくるが、シグレの早い動き出しに反応していたアインが、ワイバーンの攻撃を己の盾でせき止める。




「流石はアイン殿ッ!かたじけないッ!!」



「……構わない……怪我はないか?傷があれば、インクリース様の所で傷薬を――」



「心配ご無用!!ワッチはこの通りピンピンしておりますぞ?」



「……そうか、それは良かった」



「グッ……ギャァ??」


―――ぐぐぐ……




ワイバーンの攻撃を自慢の盾で受け止めたアインは、一切その場から押される事無く、まるで何も感じていないかのようにシグレの心配をしだす。



シグレも、ワイバーンという脅威が目の前にいるというのに、まるでアインがワイバーンに押し切られるとは露ほども思っていないように返事を返す。




……これは別に、アインが馬鹿力だとかではなく、アインのスキル≪不動≫の力による物だ。




≪不動≫……スキルを発動させ、自身が解除しない限り、その場から一切動かないようにできる。



つまり、今アインが行っているのは、ワイバーンの攻撃を盾で受け止めると同時に≪不動≫を発動させ、自身の何倍もの力と体重を持つワイバーンに一切押し込められる事なく、その場に留まり続けているのだ。



本来であれば、体重が100にも満たない人間種が1トンは超えるであろうワイバーンの攻撃(プラス重力の魔力での相乗効果)を食らえば、仮に生きていたとしてもその場に留まる事など出来ずに吹き飛ばされるのが普通なのだが、アインはそれを受け止める力を持っている。




もちろん≪不動≫の使うタイミングがズレれてしまえばダメだし、スキルのレベルが低ければ、そもそも受け止めきれない可能性もあるので、それはアインの今までの積み重ね故の力なのは間違いない。




「ギャァァ……ギャァァ!!!」




「ん……さすがに下がるか」



「下がった所で、ワッチの足から逃げられると――「待てシグレ」…っとと…ん?」




後ろに下がったワイバーンに、再びツッコんで行こうとしたシグレをアインが呼び止める。



シグレは出鼻を挫かれつつも、言う通りに動きを止めると、ワイバーンの後ろの方に人影が見える。





「―――≪拘束≫」




―――ガギンッ!!



「グギャァァ!?」




ワイバーンの後ろに回っていたコルドーは、背後から気が付かれないように近づきスキルを発動させ、ワイバーンの両足を強引に一纏めに縛り上げる。




コルドーの持つ≪拘束≫のスキル。


これは読んで字のごとく、近くまで近寄ったスキル発動対象を一瞬で拘束する事の出来るスキル。



拘束の強度などは、基本レベルの高さに由来するが、コルドーは王城勤務の騎士として、盗みを働く小悪党や騎士の訓練でこのスキルはほぼ毎日ずっと訓練を行っていたので、スキルレベルはなんと29もあるらしい。



ライアが5歳から効率的、かつ積極的に訓練を続けていた≪分体≫や≪経験回収≫に迫る高レベルで、ライアの≪格闘技≫よりも1レベル高いのを考えると、どれだけ沢山訓練して来たのかがわかる。



デメリットとしては≪拘束≫のスキルを発動中に相手が強く暴れている間は、集中しなければ拘束具を外されてしまう可能性があるので、身動きが取れないくらいだろう。



しかし、そこは周りにいる騎士達が攻撃してくれるので、それほどのデメリットではないだろうし、翼を裂かれ飛行能力を奪われたとはいえ、ワイバーン一体の動きを止めれる程の高レベルスキルなのは間違いないだろう。




……まぁ、ライアがコルドーにその辺の事情を聞いた際に『このスキルを磨けば、素晴らしいツインテ―ルを世の女性達に施してあげる事も出来るようになる……俺はその為なら、血反吐を吐こうともこのスキルを極めるのを止めはしないッッ!!』と言っていたので、素直にすごいと思えなくなったのだが、それは一旦おいて置こう。






「――今だ!騎士団総員で、ワイバーンを叩けッッ!!ワイバーンの首から上は自由に動く事も考慮して動くのだッ!!」




「「「「はい!!」」」」







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