~閑話、王都出立の朝での小話~
――――翌朝、ライア達一行は騎士達とコルドー、そしてバンボ達大工組とカルデル含む商人組と合流する為、王都の玄関口である南門前の広場に馬車で向かう。
南門は王都の一番栄えている中央広場へと道が続く大通りの玄関口でもあり、ライア達が乗って来た飛行船の停めてある郊外の平原に一番近い出入り口でもあるので、集合場所としてはピッタリだ。
「いいなぁ!ライアねぇちゃん達と一緒にお買い物行ってみたかった」
「あはは、ごめんね?プエリちゃんはパテルと一緒に訓練しに行くって聞いてたから……今度、また王都に買い物に出掛ける時は、声をかけるね」
「………その時は、きちんと俺も連れて行ってくれよ…?……騎士学校とやらにはついて行けなかったからな…」
馬車の中では、最近ずっと≪武王≫を使いこなす為に日夜訓練を続けていて、余り一緒に遊んであげれていないプエリに、昨日のお買い物(ベビー用品店)の事をどこかで聞いたらしく、少しばかり拗ねるように話題を振って来た。
プエリも訓練ばかりして『ライアねぇちゃんの為に強くなる!』と言ってくれてはいるものの、きちんと女の子らしい感性はあるようで『お買い物』という行為が好きらしい。
ライアがプエリの拗ねた顔を見て、『プエリちゃんも女の子として成長して来たんだね…うんうん』としみじみしている横で、パテルが最近護衛として着いて行けていない現状に不満たらたらな顔をしていたが、騎士学校の件はあまり部外者などを呼べるものではないし、王城への謁見の場に関しては、もっと人の出入りには厳しいので、どうする事も出来なかったのでしょうがない。
「……そう言えば、少し気になったんだけど聞いていい?」
「??」
ふと、プエリ達と話している途中で思い出したかのように、ライアと同乗しているパテル一家とメイド達に質問を投げかける。
ちなみに、今ライアが乗っている馬車にはパテル一家3人のエルフ達とメイド達4人、そしてモンドの9人が乗っている。(リネットは暫く会えなくなるアイゼル達の馬車に乗っている)
「ギルドにお邪魔した時とかはパテル達と一緒に行ったりしたけど……他の皆は王都の街を楽しめた?アルやエル達は基本、屋敷から出掛けた所は見てないし、実質一週間も滞在出来てなかったから皆は楽しめたのかなって」
ライアは今回、王都に来た目的は主に飛行船のお披露目ではあるが、パテル達エルフ一家やアルとエル、それにスロン達は観光と休暇、旅行の意味合いもあって連れて来ている。
セラに関しては主に、休暇として呼んではいるが、本人は寧ろ仕事としての気持ちが強かったのか、屋敷で待っている間も屋敷の仕事のお手伝いを分身体を使ってこなしていた。
そんな観光の“か”の字も見当たらない皆に、少しだけ心配になって質問したという訳だ。
「え、えっと……一応、屋敷のお仕事なんかをお手伝いさせてもらおうとしたんですけど……」
「セラさんがめちゃくちゃ仕事を片付けちゃって、私達……スロンさんも含めて、滞在中は殆ど暇してましたよー!」
「あたしはちょっと行きたい所あったから助かったね!セラには感謝だよー!」
スロンはかなり、今回の休暇を楽しんでいたようだが、アルとエルはあまり王都で行きたい所などが無かったのか、出かける事などあまりしないで過ごしていたらしい。
考えてみれば、アルとエルは王都の孤児院出身。あまり王都に良い思いではないだろうし、行きたい所も殆ど無かったのだろう。
「……セラ?」
「はい!何かコツか何かを掴んだのか、分身体を動かしやすく感じるようになれました!!」
仕事をし過ぎという評価のセラに対し、問いかける様に目を向けると、何やら興奮した様子でセラが報告してくるので、観光などは出来なかったにしても、有意義な生活が出来たのは確かのようだ。
目をキラキラさせるセラに対し、しょうがないなと微笑ましい子供を見る目で見つつ、その内きちんと休暇を与えて、休む時は休むのだと教える必要があるなとライアは心の中で誓うのだった。
「……モンドさんはどうでした?」
「そうだね。ヒンメルの町では手に入りにくい薬草なんかのストックを補充出来たから、私としては大満足だよ」
「あ、そうですよね…」
この人が何もせずにいるなんて事はありえるはずが無いかと、モンドの返事に納得の表情を浮かべるのであった。
――――――――――
――――――――
――――――
「主君ーッ!!お待ちしておりましたぞぉ!!」
「シグレ、それに皆ももう来てたんだね」
馬車で雑談に興じていたライア達は、ほんの10分そこらで南門まで到着し、広場で待機していた騎士達の元へ歩みを進める。
騎士達の他には商人達や大工組の皆もすでに到着しているようだったので、ほぼライア達が最後に到着したのだと理解する。
「これで全員集まったのかな?」
「事前に主君に聞いていた方々はすでに集まっておりますッ!ですが、少々些細な問題が起きておりまして……」
「問題?」
「――ほほぉ?では君はツインテ―ル女子よりもポニーテール女子が良いと言うのかい?」
(ん?今の声って…)
シグレが歯切れの悪い言葉に、何があったのかと目で訴えかけると、シグレの後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来る。
「……別にポニーテールの女性がいいとかの話じゃない。人それぞれ個性があり、好みの髪形は別だと言っている」
「では君はどんな髪型の女性が好きなんだい?」
「………ポニーテールではあるが……」
「やはり君はポニーテール女子が好きなのではないか」
「いや、だから…」
シグレの後ろでは、いつぞやの王城騎士であり、モーゼスの弟のコルドーが、なぜだかポニーテール好きとして認識されているアインと口論を繰り広げていた。
「どうかしたんですか?アイン、コルドーさん」
「むっ!君はライア君!!……この度は、私のわがままを受け入れてくれて、本当にありがとう……つきましては、ツェーンちゃんの誕生秘話などを三日三晩話し合いたいものだが…」
「それはご遠慮させてください……アイン?何があったのか教えてくれる?
「はッ……実は――」
コルドーでは話が進まないと判断したライアは、比較的冷静で、話も淡々と進めてくれそうなアインに事情を話してもらう。
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