王都に着いた即謁見!
ハルピュイア達との話し合いは順調に進み、結果的にラー達3姉妹はヒンメルの町に移住する事が正式に決まった。
住居に関してはハルピュイア独自の巣作りがあるらしく、大きな木があればそこか、もしくは木材を結構貰えれば自分達でどうにかすると言っていたので、ひとまずそちらは放置する事になった。
さすがにハルピュイアの生態に詳しい者がいないので、勝手に家づくりをすれば勝手が違ったりして逆に迷惑になる可能性もあったのでしょうがない。
そして、飛行船のお披露目に関してなのだが、ラー達にも付いて来てもらう事になった。
当たり前だが、ハルピュイア達の為に国王陛下との約束である飛行船のお披露目会をすっぽかす訳にはいかないし、既に王都では飛行船の話題が市民達の間で話され、かなり大事になっているので「はい、行けませんでした」とは出来ないのである。
ラー達は『私達の事は気にせず、そのお披露目とやらに向かってくれて構わない…寧ろ大勢の人が居るという王都とやらは一度見学しておきたいのでな』と言ってくれているので、絶賛王都に向け飛行船を飛ばしている最中である。
「……あれが王都の近くの平原ですね……という事は……あった!」
飛行船の操縦室には、ライアと飛行船の飛んでいる所を観察したいと言ったラー達3姉妹、それと何故かハルピュイア達に付いて来ていたアイリスとルルの6人がおり、ライアの街が見えてきたという声に、ラー達3姉妹が窓の外を見ようと窓際に寄って行く。
「もう王都に着いてしまわれたのですね……飛行船とはとても素晴らしい物ですわね」
「空路は一定のスピードで目的地までまっすぐ進めますからね……って、ずっと疑問だったんですけど、アイリス様は何故ラー達と一緒に?」
窓際でラー達がキャッキャと騒いでいる中、ライアの隣で話しかけてきたアイリスへ疑問に思っていた事を聞いてみる。
「それはズバリ……あの子達の服装が中々に際どいのでライア様のお洋服の参考にしようかと思った次第ですわ」
「いやいやいやいや」
ラー達の装いは実はかなり肌面積の多い物で、上半身は胸を覆う白い布とそれを彩るひらひらの薄いレースの様な物があしらわれたシンプルな物。
下半身は下着とまでは言わないが、前世で言うショートパンツ一枚着ているだけで、かなりの薄着である。
これはハルピュイアが空を飛ぶときに風を肌で感じ取りやすくする為の文化らしいのだが、何故かアイリスはその肌面積の多い服装に目を付けたらしい。
「ライア様のお肌を不特定多数に見せつける罪悪感はありますが、それを押してでもライア様のへそ出し生足ファッションを見たいのですわッ!!」
「………」
あまりの衝撃にライアは絶句という体験を経験し、口が半開きのままアイリスと後ろで「うんうん」と頷いているルルに目を向ける。
(……アイゼル様…どうやら貴方の娘さんは変態になってしまったのかも知れません……)
未だライアのへそと生足について熱く語っているアイリスとルルに対し、もう手遅れだと心の涙を流したライアは、2人を放っておき王都への到着を乗員全員に伝えるべく、分身体を操作するのだった。
―――――――――
―――――――
―――――
「ライア・ソン・インクリース男爵。其方が作り上げた飛行船とやら……まことに見事な物だ」
「恐縮です」
場所は王都アンファングの王城、謁見の間。
ライア達は王都に到着し、飛行船のお披露目として飛行船を王都の空を飛んでみせた後、事前に決めていた通り、王城のすぐそばに飛行船を停止させる。
と言っても飛行船を着陸させれるような広場などは無いので、空中に留めておき、国王との謁見が終わるまではライアとアイゼル以外は飛行船の中でお留守番をしてもらっている。
地上スレスレとは言え、空に浮かぶ飛行船からどうやってアイゼルも降りたかと言えば、不格好ではあるが、ライアがアイゼルを抱え【重力】の魔道具を使って降りた。
アイゼルが高所恐怖症も相まって、飛行船から降りる時は他所様に見せにくい有様だったが、幸いな事に出迎えの人以外は皆飛行船の方に注目が向いていたので助かった。
「インクリース男爵には飛行船の開発、それに我が息子と友好を結び、我が国に多大な貢献をしてくれておる……これは褒美を考えなければと思っておったのだが……」
「が…?」
飛行船の開発自体はリネットとモンドとの合作なので褒美と言われてもアレだが、事前にリネットとモンドにも別に褒美を取らせるという話は聞いていた。
であれば、今回の謁見もリネットとモンドを一緒に連れてくれば一度で済むのでは?とも思ったのだが、リネットは女性でしかもライアの婚約者である点から、ライアと同列に扱えないだとか何とかで、モンドに関しては『私はインクリース男爵の元で働くただの一般錬金術師なので』と何故かライアの下に就いているとアピールした事により、モンドも謁見には除外扱いにしてもらっていた。
そして、我が息子との友好…恐らくこれは帝国へのスパイ行為の隠語か何かだと予想する。
さすがに息子と仲良くしているから褒美をあげると言われたら周囲から『は?』と言われかねないと思うのだが、謁見の間に集まっている他の上位貴族達から一切の疑問の目線すら感じない事から、多分間違ってはいないと思う。
「其方、先日またもダンジョンを見つけたそうではないか?」
「えっと……はい、確かに未発見のダンジョンをたまたま見つける事は出来ましたが……ダンジョンのある場所はケドル山脈の向こう側……未到達地域です。資源を回収できないのであれば功績として数えられる物では無いのでは?」
恐らくこの情報自体は殆どの貴族に回っていなかったのか、国王のダンジョンを見つけたというセリフを聞いてから周りで待機していた貴族達がざわめき始める。
「確かに、ダンジョンを有効活用できなければ国にとっての利益など存在しない……だが、そのダンジョンを有効に出来そうな物があるのではないか?」
「え……?」
国王はライアに対し、からかうような笑みを見せながらそう質問を投げかけて来る。
「其方の飛行船事業の中に、そのダンジョンへ冒険者を運ぶ仕事を作れば、其方にとっても国にとっても利益になるのではないか?」
(…ッ!!運輸業か!)
国王の言葉に、ライアは飛行船のこれからを脳裏に思い浮かべ、無意識に両の手を力いっぱい握りしめるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます