ハルピュイアとの話し合い











「…という訳で、ダンジョンの中で保護したハルピュイア3姉妹の方々です」





「わぁぁぁぁぁぁぁ………すごい!!魔道具ってこんな事も出来るの!?」



「私達の使う風の魔法でもこれほど大きな物を浮かせれる風力は起こせない……これが人間の魔道具とやらの力……」



「ふへぇ……私、こんな立派な建物の中に入った事なんて無いのヨ…」




現在、ライア含めハルピュイア3姉妹は飛行船の中に移動し、保護を名目としてまずはアイゼル達に紹介をしておこうと思ったライアは、飛行船の中にある少し大きめの部屋にアイゼル、リネット、パテル、プエリ、セラ、アイリス、ルルを集め、顔合わせを行っていた。



ちなみにアイゼルはこの飛行船の中で一番位が高い伯爵で、リネットはライアの婚約者で言ってしまえばハルピュイア達が将来住むかも知れないヒンメルの町の領主婦人としてここに呼んだ。



モンドは言ってしまえばヒンメルの町の経営に携わる貴族という訳では無いので、今回は呼ばなかった。



ただ、別にそこまで格式張って硬い感じにするつもりはないので、モンドや他の人達が来たいと言えば拒否するつもりは無い、まぁモンド自身がそれほど顔を合わせたいという意思もなかったようなので、今回は欠席だ。



パテルとプエリに関してはハルピュイア以外にも亜人がライア達と行動を共にしているというアピールと亜人で大体同い年くらいのプエリがいれば、それほど緊張しないだろうという考えもあっての人選である。



アイリスとルルに関しては別に呼んではいないので、ただの野次馬で来ただけである。




「……空を飛び、風を操るハルピュイアもこの飛行船は大層驚かれるようだね」



「…あ、すまない。少々驚きのあまり我を失っていた……私達は…」






アイゼルの言葉で我を取り戻したラーが代表して返事をし、相互に自己紹介を終わらせると、アイゼルは本題に入るべく話を切り出す。




「…さて、今回君達はライア君の誘いを受け、ヒンメルの町に移住をする。もしくは移住を検討する為に一時滞在するという話で相違はないかな?」



「はい…この飛行船?というのには驚かされたが、ライア殿の『ルーの為』という言葉に嘘はないようだし、私達も出来れば安全な場所に住みたい」



「魔道具!魔道具!」




飛行船を見てから若干ルーの様子が可笑しいが、これだけテンションが上がる物を近くで見れるだけでも“ルーの為”にはなっているのだろうとラーは呆れたように優しい笑みをルーへと向ける。



それに言葉にはしないが、最初にこの部屋に入った時にパテルとプエリの方にも目線を送っていたので、亜人種を差別しないという言葉にも確信が持てた様子だったので、やはりパテル達をこの部屋に呼んだのは正解であっただろう。




「結構……先程国王陛下にも移住の件は伝えて『問題はない』と返事が来ているので、君達は自由にこの国で生活してくれて構わない」



「……国王陛下……この国の一番偉い人…ですよね?どうして、それほど偉い方が私達亜人種に寛容なので…?」




別大陸から来たラー達にとって、人間は亜人種を差別…そこまで行かなくとも親切にする事などないただの他種族として見られる存在。


それなのに、ライア含めこの大陸に来てから出会う人間すべてが亜人種である自分達に優しくしてくれる。



恐らく同じ目の前にいる亜人種達も同様に受け入れられているのがわかった故に、なぜここまで寛容なのかと疑問が生まれたようだ。




「寛容とは違うかもしれないが、この国では大昔、亜人種であるドワーフととある人間が友好を結び、その一件から『亜人種も人間と同じ、交流を持てる種族だ』と国全体で意識改革が行われたのだ。それからまだ100年程しか経っていないが、今は亜人種を守る法も存在するし、この国では亜人狩りは立派な犯罪として扱われるのだよ」



「……なるほど」



「この国の人はみんな亜人に寛容って事なのヨ?」




話を聞いていたリーが「この国の人全員が優しくしてくれるなら、この大陸に来て良かったヨー」とニコニコと笑顔で安心したように微笑む。



一応、今の説明も人間であるアイゼルの説明だし、ライア達が騙しているという可能性もあるのだが、些かリーは楽観的に考える節があるようだ。




「……そう思ってくれている所で申し訳ないが、さすがにどれだけ法で罰そうと、悪事を働く人間は少なからず存在するので、国民全員が亜人を好いている訳では無いとだけ留意してもらいたい」



「それは…そうですね。人にのみならず、ハルピュイア達の中にも考え方の違う個体もいますので、理解できます」



3姉妹の中でも、色々としっかり者であるラーは、ハルピュイアの中にも犯罪思考とまでは行かないだろうが、人間に対し強い敵対心を持った個体でもいたのか、しみじみと理解を示す。



「そう言ってくれて助かるよ……さて、ここまでの説明で何か質問はあるかい?」



「魔道具!!魔道具の作りk「はぁーいルーはこっちでこの飛行船の見学を続けるのヨー」…見る!」



テンションが上がり過ぎたルーが暴走を始めそうになるが、さすがに場の空気を呼んだのか、次女のリーが部屋に備え付けられている水の魔道具やキッチンの魔道コンロを見学しに連れ出してくれる。



「……すまない……説明に関しては大丈夫だ、これ以上の事は実際に住んでみなければわからない事もあるだろうしな」



「あはは…構わないよ、私にもあんな風に魔道具や錬金術にばかりかまける娘がいるからね。可愛いものだよ」




ライアがチラっとリネットの方へ(言われてるよ?)と目線を送れば、目線の意図が上手く伝わらなかったのか、グッとサムズアップしながらにこやかに笑みを返された。









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