有翼人種ーハルピュイアー










「―――では改めて、私はハルピュイアのラー。こっちの子達は私の妹達で…」



「次女のリーだヨ」



「三女のルー…です」




ミノタウロスを倒し、ハルピュイアの女の子達と詳しい事情を聞く為に、一度ダンジョンの外に向かう事になり、ライアの≪索敵≫を駆使しながら安全にダンジョンを抜け出した所で、改めて自己紹介から始める事にした。



(ラー、リー、ルー……言っちゃ失礼なのかもしれないけど、名付け方法もっとどうにかならなかったのかな…?その名付け方がハルピュイアの常識だとしたら、精々50人くらいしか名前付けれないと思うけど…)



「あ、あのぉ…?」



3人の名前を聞いて、若干失礼な事を考え込んでいると、黙りこくってしまったライアにルーが心配そうに声をかけて来る。



「あ、ごめんごめん……俺はアンファング王国のライア…ライア・ソン・インクリースです……それで、まず最初に聞いておきたいんだけど、どうしてこの大陸には居ないはずのハルピュイアがここに?」



「あぁそれは…」



ハルピュイア3姉妹の代表で長女のラーが簡単に説明してくれた内容をまとめると、主な理由は3つ。



1つ、ハルピュイアは種族柄あまり集団で生活する習性が無く、基本家族1グループで巣をつくって生活するので、別段大陸を跨いで別大陸に来てはいけないなどという決まりは無いらしく、好奇心ついでにこっちに巣をつくりに来たらしい。(別大陸から飛んで来れるだけの体力を持った個体自体あまりいないらしいが)



2つ、実は今、ラー達が居た別大陸は人間達が森の開拓や魔物達の狩り過ぎの所為で食料不足が深刻らしい。



ハルピュイアは基本雑食ではあるのだが、主な食糧元はオークや向こうの大陸に居たという鹿の魔物(ラフォールディア)など魔物の肉で賄っていたらしいが、その肉を人間達が取り過ぎて、野生の魔物の数が激減してしまったらしい。




そして3つ目が…。



「人間と交流を持ってみたかった?」



「はい」



どうやら別大陸の人間は未だ亜人との交流がなされていないらしく、ハルピュイアが人間を襲う事も無いので基本無干渉なのだが、いざハルピュイアと直接目を合わせれば魔物として見られたり、下手をすれば討伐される可能性もあるので、よっぽどの事が無ければ人間もハルピュイアも近づいたりしないのだとか。



ではなぜ、ラー達3姉妹はお互いに不干渉を貫いている人間と交流を持とうと思ったのかと質問しようとすれば、それよりも先に次女のリーが口を開く。



「正確に言うと、私やラーねぇじゃなくて、ルーが魔法や不思議な物体を使って変な事を出来る人間と会いたいってのが正解だヨ」



「不思議な物体…?」



「リーねぇ。あれは魔道具って言う物……魔物の魔石とかを使って魔法を起こす物だよ!」



リーは末っ子のルーの指摘に「そうだったヨ?」とぽかんとした顔を浮かべる。



「ルーは魔道具が好きなの?」



「好き!前に空を飛んでる時に地上で商人達がそれを使っていとも簡単に火や水を出したのを見てから魔法自体がめちゃくちゃ好きなの!!」



いきなり自分の好きな物の話題になったからか、先程まで引っ込み思案にも見えた大人しめのルーが、水を得た魚かと幻視するほど饒舌に語り始める。



「おぉぉ……魔道具好きは個人的にも嬉しいね……あれ?でも魔法が好きなら、ハルピュイアも魔法を使うのは得意じゃないの?」



基本亜人と呼ばれる人種は体内に魔石を保持している為、魔石の持つ属性魔法は使えるはず。



「……ハルピュイアは基本的に風を操る魔法を使うけど、基本はそれを自分の飛行を助ける補助的な役目を担っていて、見た目的にも効果的にも全く魔法っぽくないの……一応昔は風を自在に操れるように家族のだれよりも練習したけど…」



そのおかげで末っ子ながら別大陸まで飛んで来るだけの魔力と体力を兼ね備えることが出来たのだと、隣にいたラーから小声で教えられる。



「なるほどね……なら聞きたいんだけど、皆は此処に住むの?」



「いや、ここに居たのはただ羽休めと食事を摂る為に仮拠点を立てたに過ぎない……まさかこの大穴がダンジョンで、あれほど凶悪な魔物が出るとはつゆほども思ってなかったからな」



どうやらダンジョンの入り口に建てた小屋モドキも雨をしのぐ程度に作った物らしく、ここに家(巣?)を作る訳ではないようなので、ライアは一つ提案をしてみる。




「なら、俺達に付いてこない?ウチにはラー達と同じ亜人種とされるエルフも住んでるし、町の住民も基本的にそう言った差別意識はない」



「……それはありがたい提案だが…」



「どうして貴方が私達の移住を許可してるのヨ?そう言うのって確か人間の中でも偉い人が決めるって聞いてたヨ?」



ラーとリーは若干疑問の気持ちがあるらしく、気になった事を口に出して聞いてくる。



ルーに至っては、人の住んでいる町自体に入れるという話にワクワクを隠し切れないのか、目をキラキラさせている。




「偉い……っていう意味合いでは一応俺がその町を治める領主になるからそこでは一番偉いのかな?それにこうやって町に誘うのはどちらかと言えばルーの為だったりするし」



「ルー?」




いきなり自分に話を振られたルーは、自分の方に人差し指を向け、首を傾げながら疑問の表情を浮かべる。




「ルーは自分で魔道具の勉強をして、自分が一から作った魔道具とかって欲しくはない?」



「欲しい!!……え?作る?」



ルーの返事と困惑した表情を見たライアは不敵な笑みを作り、カッコつけるように両の足を『ザザッ』と肩幅ほどに開き、ハルピュイア3人を見る。





「ルーは知っているかもしれないけれど、魔道具というのは“錬金術”という技術を使って出来上がる物で、その錬金術を使いこなす人を総じて【錬金術師】といいます」



ライアは言葉を紡ぐとともに、3人へと向けていた視線を僅かに上へと向ける。




「俺はその【錬金術師】……まだ新米もいい所だけれど、少なくてもの物を俺は作れる!」



「「「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」



ライアの言葉でライアの目線の先に何が?と3姉妹はふと上を見上げれば、遥か上空から地上に降下してきていた飛行船がまるで巨大な化け物のようにライア達の頭上で佇んでいた。









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